第1話 これから君が教えてくれる「こと」
最後に笑ったのはいつだろうか。
いつもの下校道を歩きながらふと思う。
思えばこの人生16年、様々なことがあった。楽しかったこともあるが、今ではひどく汚れたものがそれらを覆い尽くしている。
例えばそうだ、過去にいじめられていたことをいまだに引きずっているせいで、いまだに友達が誰ひとりいないことか。成績が落ちたせいで両親からも見捨てられていることか。
思えば思うほど自傷ともいえる感情があふれかえり、その思考を空白へと導いてゆく。
……なんて事を考えていた昔の自分とも、今日以降顔を合わせずに済むと思うと少し気が楽になる。
いつもなら下校後家に直行するのだが、今日は少し違う道を歩いてみる。傾いた夕日の恵みを浴びつつ山中沿いの道路を登ってゆく。
足を進める度に、少しずつ空へ近づけている気がしてふと安心する。
そうしているうちに少し開けた山中の廃公園のような場所に着く。
ちょうど奥の方に一本の大木があり、その方向へ足を進める。
かばんの中から携帯用の足場を取り出し木に縄をくくりつつ、自分もこの廃公園のように朽ちてゆくことを思いながら人生への苦笑ともいえる笑みを浮かべる。
さて、あとはこの足場から飛び降りれば、数秒で意識が飛んで後は体が勝手に死へと歩んでくれる。わずかな期待を胸に足場から一歩踏み出そうとした。その時だった。
「待って…!!!」
横を向くと、同じ年くらいの少女が息を切らして立っている。自分と同じ「嶺北高校」の制服だ。彼女は僕の方に近づくと、学生証をこちらに向けてくる。そこに書かれたある文字が目に留まる。
「スーパー特進」
この文字を見た時、僕は母親から言われたある言葉を思い出す。
『あんた。志望校まで落ちたくせに、併願で受かった高校の最上位クラスにすら入れないの?』
それらの記憶は僕の気分を喜びから嫌悪へと変えた。
「何ですか?今さら止めようったって無駄ですよ。てかあなた誰ですか?」
「…鈴花凛。とにかく1回降りてきてくれない…?」
…少しめんどくさいことになったな。
「いやなんでですか。そもそも僕はあなたと面識は一切ないはずです。止めるギリなんてないと思いますが…」
「それでもっ…!死ぬのだけはまってくれな」
「うるっさいなぁ!何もわかってないくせに…早くどっか行ってくれよ!!」
仕方ない。ここで死ぬのはあきらめて、また違う場所で死ぬか…。
そう思った時だった。
「…よ…。」
「は?」
「私があなたに死んで欲しくないから言ってるのよ!!!……」
そう叫び、彼女は大粒の涙を溢れかえさせ泣き始めた。
「えっ!?いや、ちょっとま…」
「うわーーーー!!!(´;ω;`)」
「いっいいったん落ち着いて!?」
気づいた時には首から縄を外し、彼女を慰めていた。
しばらくすると、彼女は少しずつ落ち着きを取り戻してきた。
にしても本当にこの人は誰なんだ。正直記憶のどこを探しても、同じ学校とは言え記憶がない。(1年だけで特進クラスは5組あるのでそのせいか。)
「ねぇ…。なんであんなことしようとしたのよ?…グスッ」
少し鼻声になりながら彼女は聞いてくる。
「……。どうせ聞いても、体験したこともないんですし、理解できませんよ。」
余計な同情を誘われるとかえって虚しくなる。この人には落ち着いたら帰ってもらったほうが…。
「納得できない。」
…。
「このまま何もあなたのこと知らずに終わるとか嫌!!そうしないと私の気がすまない!夜しか眠れない!!」
「いや夜眠れたらそれでいいでしょ!?」
「…フフッ。やっと笑ってくれた!」
そういいながら彼女は満面の笑みを浮かべる。
改めて自分の顔に意識を移すと、わずかに微笑を浮かべている。
僕、笑ってる…?
「笑うことなんて久々だ…。」
「エヘヘ…よかった。」
彼女のおかげで、かなり気が楽になってきた。だが、その中にはここ最近はなかった懐かしい感情が潜んでいるように思えた。
「さっ、久々に笑わせてあげたんだから、君もなんであんなことしてたのか話してくれない?」
「なっ!?それこれとは話が別じゃ…」
「別じゃないも〜ん!!等価交換だも〜ん!!」
そういいながら無邪気の笑みを浮かべる彼女。
なぜだろう。さっきまでは思わなかったのに、今では彼女になら話してもいいのかと思ってしまう。
「……。わかった。ただ同情はしないでくれ…。」
こうして今まで自分が抱えていたものを、初めて人に話すこととなった。
昔から僕はイジメられていた。
先述の通り、本当にそれがイジメだったのかは今でも分からない。
なぜならその原因を覚えていない…正確に言えば脳がその原因を思い出させたくなかったのか。
中学の時に1人だけ「将」という友達がいたが、そいつは福井県内最高の進学校である「高島高校」へ進んでいってしまった。
友達がいないくらいなら、まだ死にたいなんてことを思うことはなかった。それと並列して起きていたのは、親との関係だ。
僕の親は昔から勉強に対して異常なほどの執着があった。小学校の頃は、テストで100点以外はありえないという考え方で、中学の時も、総合400は無いと怒られていた。
入試はもちろん先ほど話した「高島」へ行きたかったが不合格。併願で受かった私立の「嶺北」でも特進クラスに入れなかった僕に、親はさらに課題の多い塾に入れさせられ、毎日ひたすら勉強(どちらかというと、学校と塾の課題)を何とか頑張ってきた。
その分自分のしたい勉強ができなくなってしまったからか、6月の模試での結果は、総合300中165だった。
親はその結果が気に入らなかったのだろう、僕に向かって「もういい。」と吐き捨て、塾も全部やめさせられ、それ以降家にいても口すら聞いてくれなくなった。このとき始めて僕は、親から見放されたつらさを知った。
今回の動機はこれが原因である。
「そんな感じで、今じゃ家にも学校にもどこに行っても楽しくない。なら死んだほうが…なんて思ってさ…。」
「なるほど…。じゃあ、今日から私が君の高校初の友達になってあげる!!」
「はぁ!?」
「それで、放課後毎日私が勉強教えてあげる!!私特進だしぃ?そんな課題しかない塾よりもっと効率的に教えてあげる!!そうすれば友達と勉強一石二鳥じやん!!」
「まぁ、確かにそうだけども…」
少し誇らしげに胸を張る彼女。しかし本当にいいんだろうか…。
「僕周りからの目線とかもあるし、あんまり近づかないほうが…」
「そんなの気にしないよ!!それに、学校だと授業とかで忙しいし、放課後なら別にいいじゃん?よし決定!」
「拒否権はないのか?」
「そんなわけでこれからよろしくね!そういえば、名前聞いてなかった。名前は?」
「十和…。中島十和です…。」
人に自分の名前を伝えたのなんて、中学時代以来だ…。
「十和。いい名前じゃん!なんかforeverって感じ!」
「あ、そっちの永久じゃなくて、違う漢字の十和です。」
「あっ、そっち!?いやぁ日本語って難しいね!」
彼女と居ると、自然に笑みがこぼれる。
思い出した。この懐かしい感覚。初めて友達が出来たあの時と同じ感覚だ…。
「改めて、私は鈴木凛!凛って呼んで!じゃあ、友情の握手ってことで!」
そう言って凛さんは僕に手を差し出す。
僕はその手を熱く握りしめた。
この時の僕は、ついさっき死のうとしてた時なんかより、もっと強い幸福感に満ちていた。
皆さんどうもはじめまして。nemi a.k.a タピオカです。
今回久々に小説を書くということで、学業で忙しい中下校中とかにちまちま打ち込んで書いていきました。
この後書きでは、作品の裏話などを話していきますので、ぜひ読んでいってください。
察した方は多分いないと思われますが、この作品は私の地元の福井県福井市を舞台に進行していきます。
彼らが通っている嶺北・高島もしっかり元の高校があります。
自分が学校生活で体験したこと、感じたことなども踏まえて、出来るだけ創作話臭くならないフィクションが書けるよう、これからも投稿していきます!
面白ければ、ブックマークや評価、ご感想お待ちしております。
次回作の更新までお待ちください。




