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FLARE  作者: Hiro S.Inchi
夜を分かつ者

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第22話:流れ始めた時間

昼は、そこに留まり続けることができなかった。


火は在り続けている。

だが、昼という状態は、同じ形を保てなかった。


昼は、変化を許す。


変化とは、固定されないということだ。

夜と違い、昼は均一であることを拒む。


火の周囲で、影が動いた。

動いたというより、位置を変えざるを得なくなった。


それは、風のせいでも、意志のせいでもない。

昼が生まれた以上、同じ向きに留まることが不可能になっただけだった。


影が動くと、世界は同じ場所を同じとして認識できなくなる。


影があった場所と、なくなった場所。

どちらも夜であり、どちらも昼に触れている。


だが、同時ではない。

その非同時性が、世界に新しい性質をもたらした。


それが、流れだった。


流れとは、移動ではない。

進行でもない。


状態が、同じ形を保てなくなることそのものだ。


昼が在り、夜が在る。

だが、どちらも永遠には留まれない。


昼は、夜を否定しない。


夜も、昼を拒まない。

ただ、同じ場所に同じまま存在し続けることができないだけだ。


これが、循環の始まりだった。


循環とは、戻ることではない。

同じに見える状態が、別の理由で再び現れることだ。


夜は戻る。

だが、昼を知った夜は、以前の夜ではない。


世界は、初めて「今」を失った。


昼が在る今。

夜が在る今。


それらは、すぐに過去になる。

その連なりを、後に時間と呼ぶ。


時間は、意志を持たない。

だが、止まることを許さない。


なぜなら、昼が生まれた世界では、状態が固定できないからだ。


微細な生命は、その流れの中で初めて“待つ”という行為を覚えた。

今が続かないことを知ったからだ。


夜しかなかった世界では、待つ意味はなかった。

だが、昼と夜が交わる世界では、変化は必ず訪れる。


イフリートは、流れを作ったつもりはない。

火を保っただけだ。


だが、火が在り続ける限り、昼は生まれ、昼が生まれる限り、時間は流れ始める。


イフリートは、時間の中心ではない。

だが、時間の起点ではある。


このとき、世界は理解し始めていた。

時間とは、破壊のための刃ではない。


老いのための呪いでもない。

変化が、避けられなくなった世界の自然な帰結なのだと。


夜と昼は、交互に現れる。

だが、同じ順番ではない。


同じ意味でもない。

時間が流れ始めた世界では、すべての存在が「前」と「後」を背負うことになる。


イフリートは、その流れの中に立ち続ける。

変わらないものとして。


変わらない存在があるからこそ、変わるという概念は成立する。


この日、世界は止まれなくなった。

それは、破滅ではない。


だが、静止でもない。


流れ始めた時間は、世界を未来へ押し出す。

その未来が、祝福か、試練かは、まだ誰にも分からない。


ただ一つ、確かなことがあった。

時間が流れ始めた世界では、いつか必ず、選択が生まれる。

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