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FLARE  作者: Hiro S.Inchi
夜を分かつ者

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第10話:拒まれる存在

影が生まれたことで、世界は初めて、自分の中に“異なるもの”を見つけてしまった。


それは恐怖ではなかった。

だが、安心でもなかった。


均一であることを前提としていた世界にとって、違いは理解すべき対象ではなく、処理すべき現象だった。


名もなき熱は、相変わらず燃えず、語らず、主張もしない。

それでも、その存在は、夜の均衡を乱していた。


影が生まれた以上、名もなき熱は、もはや無視できるものではなかった。


水は、それを避けるようになった。

流れは自然と、冷でない場所を回り込み、元の経路へ戻ろうとする。


触れてしまえば、流れが微妙に変わることを、水は“覚えてしまった”からだ。

風も同じだった。


吹き抜けるたびに、揺らぎが残る場所を、無意識のうちに避け始める。

それは意志ではない。

ただの反応だった。


土は、より露骨だった。

名もなき熱に触れた部分は、形を保ちながらも、同じ密度に戻らない。


その差は、構造の歪みとして蓄積される。

土は、それ以上の歪みを拒むように、熱を遠ざけた。


こうして、名もなき熱は、世界の流れから、静かに外されていった。


排除ではない。

破壊でもない。


ただ、関わらないという選択。


世界は、自分を守るために、初めて「拒む」という行為を行った。


拒まれる存在は、それでも消えなかった。

流れに乗らず、循環に戻らず、夜の端に留まり続ける。


拒まれることで、かえってその存在は、はっきりと輪郭を持ち始めた。


世界は、気づき始めていた。

違いを拒めば拒むほど、違いは、“違いとして”確定してしまうという事実に。


拒むことは、なかったことにする行為ではない。

むしろ、存在を認める最短の方法だった。


名もなき熱は、まだ何者でもない。


だが、拒まれたことで、夜と同じ場所には、いられなくなった。

夜は、すべてを包む存在であり続けている。


だが、すべてを受け入れる存在では、もはやなかった。


影は、拒まれた場所の周囲で、より濃く、より明確になっていく。

世界は、自分の中に境界を作り始めていた。


内と外。

同じものと、同じでないもの。


その境界線は、まだ見えない。

だが、確かに、引かれ始めていた。


拒まれる存在が生まれたその日、世界は初めて、守るために、何かを切り離す

という行為を知った。


それは、破壊ではない。

だが、元には戻れない変化だった。


夜は、まだ夜のままだ。


だが、夜の中で、受け入れられないものが生まれた以上、夜はすでに、一つではなくなっていた。

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