プロローグ(夜を分かつ者)
本作「FLARE Light Nobels版 ~ 夜を分かつ者 ~」は、連鎖短編小説のREFLECTORシリーズ(エピソード0〜9)を原作とした作品となります。
この物語は、英雄の物語ではありません。
また、世界を救うために戦った者の記録でもありません。
ここに描かれるのは、まだ物語と呼べるものすら存在しなかった時代――
夜しかなかった世界で、「変わる」という選択が、初めて引き受けられた瞬間です。
FLAREシリーズでは、炎は力として描かれません。
奇跡や祝福としても、描かれません。
炎とは、夜と昼を分け、安全と危険を分け、選択と責任を分けるものです。
それは常に、何かを与えると同時に、何かを失わせます。
『夜を分かつ者』は、そのすべての始まりを語る起源譚です。
火が生まれた理由。
炎の精霊が、なぜ“支配者”ではなかったのか。
なぜこの世界では、「焔を持たぬ者」が重要な意味を持つのか。
それらの答えは、説明としてではなく、選択の連なりとして描かれます。
本書は、FLAREシリーズを初めて読む方にも、すでにリオやミナ、グレン、リサ、
そしてイフリートの物語を知っている方にも、それぞれ異なる読み方ができるよう構成されています。
はじめての方にとっては、これは“神話”としての物語でしょう。
既読の方にとっては、これまでの物語がなぜその結末へ向かわざるを得なかったのかを
静かに照らす、もう一つの答えになるはずです。
この物語に登場する「夜を分かつ者」とは、特定の名前を持つ存在ではありません。
それは、火を生んだ者の称号でも、炎を操った者の名でもありません。
世界に差を生み、その差を引き受けることを選んだ存在すべてを指す言葉です。
そしてそれは、過去の神話で終わる役割ではありません。
火は、渡され続けます。
焔は、失われながら、残り続けます。
夜が分かたれたその瞬間から、世界はもう、「選ばずにいる」ことができなくなったのです。
この一冊が、あなたにとっての最初の夜明けではなく、問いの始まりとなることを願って。
どうか、夜が分かたれる瞬間を、最後まで見届けてください。
―― FLARE 起源譚
『夜を分かつ者』へ、ようこそ。
その世界には、夜しかなかった。
闇はすべてを包み、風は動きを与え、土は形を保ち、水は流れをつくった。
世界は完成していた。
だが、続かなかった。
変わらぬ夜の底で、
世界は初めて、自らに問いを投げかけた。
――このままで、よいのか。
その問いに、言葉はなかった。
ただ、わずかな偏りが生まれた。
冷でも闇でもない、名のない違い。
それが、最初の熱だった。
熱は燃えず、光らず、壊さなかった。
だが触れたものを、元には戻さなかった。
闇は割れ、影が生まれ、
世界は初めて「差」を知った。
夜と昼は、そこで分かたれた。
火は、救いとして与えられたのではない。
力として授けられたのでもない。
それは、変わるという選択を
引き受けた者にのみ渡されたものだった。
かくして、夜を分かつ者が生まれた。
それは名ではなく、役割であり、
存在ではなく、問いそのものだった。
この焔は、終わらない。
分かたれ、渡され、失われながら、
なお、世界に残り続ける。
なぜなら――
夜を分けた瞬間から、 世界は、選び続けることをやめられなくなったのだから。




