第30話:仲間の誓いの力
燃え尽きぬ影の黒い触手がうねり、仲間たちへと襲いかかった。
闇は形を変え、囁きながら心の隙間へ入り込もうとする。
『風は災いを運ぶ……お前に未来はない』
影がミナへ囁く。
「……違う!」
ミナの足元に黒い靄が絡みつくが、彼女は深く息を吸い込んだ。
「風は災いじゃない。人をつなげる道になるんだ! 私は……その風を信じる!」
その声と共に、風が強く吹き抜けた。
囁きを裂き、黒い靄を切り裂く。
ミナの髪が翻り、彼女の瞳に迷いはなかった。
『記録は無意味だ……灰は忘れられ、誰も思い出しはしない』
影はリサの耳元で嘲笑する。
リサは箱を抱きしめ、涙を流しながら叫んだ。
「無意味なんかじゃない! 灰は“誰かが生きた証”。忘れられるかどうかは関係ない。わたしが忘れないって決めたの!」
箱の欠片が光を帯び、影の囁きを押し返す。
リサの灰は、決して虚無にはならなかった。
『お前には焔がない。勇気など幻だ……』
影はカイを嘲り、彼の小さな体を縛ろうとした。
カイは膝を震わせながら、それでも立ち上がった。
「僕には火はない。でも……勇気は本物だ!リオ兄ちゃんが教えてくれたんだ! 僕も人を守れるんだ!」
枝を振りかざし、闇へと突き出す。
小さな動きだった。
だが、その一撃は確かに影を裂いた。
三人の声が荒野に響き渡る。
それは闇の囁きよりも強く、確かな光を持っていた。
リオの胸が熱くなる。
仲間たちの誓いが炎へと流れ込み、掌の焔は一層輝きを増した。
『……愚か者どもが。ならば全てまとめて呑み込んでやる!』
影の巨体が膨れ上がり、荒野を覆うほどの闇を放つ。
リオは一歩前に出て、叫んだ。
「僕たちはもう負けない! 仲間の誓いがある限り、この炎は消えない!」
炎と闇、最後の衝突が始まろうとしていた。




