第29話:影に試される炎
闇の中に立つ“燃え尽きぬ影”は、まるでリオの姿を歪めたようだった。
同じ焔を宿しながら、そのすべてを奪うためだけに燃やし尽くした存在。
『……炎が希望だと? ならば示せ。お前の炎が、どれほど脆い夢を照らせるのかを――!』
影の腕が振り下ろされる。
黒い炎の奔流が広がり、荒野そのものを呑み込むかのように迫ってきた。
「来る……!」
リオは掌を突き出し、黄金の焔を広げる。
炎と炎が激突し、轟音が夜空を震わせた。
砂と石が吹き飛び、熱と冷気が入り混じる。
だが――リオの炎は次第に押し込まれていく。
黒い焔は重く、まるで絶望そのもの。
「照らすための炎」が、影に呑まれようとしていた。
「ぐ……っ……!」
リオの膝が沈む。
その瞬間、影の声が心を抉った。
『思い出せ。炎が何を奪ったかを。お前の手で失った夜を。守れなかった者たちを!』
胸の奥で、忘れられない光景が蘇る。
燃え上がる村。
崩れる家。
恐怖に怯える人々の瞳。
「やめろ……!」
リオの炎が揺らぎ、今にも掻き消えそうになる。
『結局、お前もわたしと同じだ。燃やし、奪い、影しか残せない……!』
黒い焔がリオを包み込もうと迫る。
その瞬間――
「リオ兄ちゃん!」
カイの叫びが響いた。
振り返ると、焔を持たぬ少年が小さな体で影に立ち向かっていた。
震えながらも枝を構え、必死に声を張り上げる。
「リオ兄ちゃんの炎は違う! 僕は見たんだ!あの火は、僕を守ってくれた! 勇気をくれた!だから……負けるな!」
リサも涙を流しながら叫ぶ。
「リオ、あなたの炎があったから……わたしは灰を抱えて歩けるようになった!」
ミナも風を巻き起こし、影の炎を押し返す。
「希望を照らす力だって、もう証明してきたじゃない!」
仲間たちの声が、リオの胸を熱くした。
影に掻き消されかけた炎が、再び灯る。
「……そうだ。僕は、同じじゃない!僕の炎は――仲間と未来を照らすんだ!」
掌の焔が一気に膨れ上がり、黄金の光が黒い炎を押し返した。
影の巨体が一歩退く。
『……ほう……まだ抗うか……。ならば――仲間の誓いすら、呑み込んでやろう』
闇が再び蠢き、仲間たちへと触手のように伸びていく。




