第28話:迫りくる闇
星降る夜の約束を交わしてから数日後――。
リオたちは山を越え、荒野へと足を踏み入れた。
だがその道中、空は急速に曇り、太陽の光が遮られていった。
「……妙だな。風の流れが止まってる」
ミナが警戒の目で空を仰ぐ。
リサは箱を抱きしめ、肌を刺すような寒気に震えた。
「これは……灰じゃない。もっと重い……“闇”だ」
次の瞬間、地平の向こうから黒い靄が押し寄せてきた。
それは大地を這い、空を覆い、すべてを呑み込もうと広がっていく。
「う、動けない……!」
カイが膝をつき、影に足を取られる。
リオが掌に炎を灯すと、その光が靄を押し返した。
だが、炎はすぐに黒に染まりそうになり、まるで“逆流”するかのように揺らいだ。
『リオ……! 気をつけろ! この影はただの囁きではない。“意思”を持った闇――お前と同じ“炎”を狙っている!』
アウラの声が胸で警告する。
「意思を持った……闇……」
靄の奥で、ひとつの影が形を取った。
それは人のようでありながら、人ではなかった。
燃え尽きた焔の残骸のように黒く、瞳だけが赤々と燃えている。
『……炎を照らす? 笑わせる……炎はただ燃やし、奪い、影を残すだけだ……』
低い声が、リオの誓いを嘲るように響いた。
「お前は……誰だ!」
リオが叫ぶ。
影は口元を歪め、答えた。
『我は“燃え尽きぬ影”。お前が進む限り、どこまでも追いすがる闇。――炎よ。証明してみろ。お前が希望だと、どうやって?』
影が腕を伸ばすと、地平線まで広がる黒が一斉に蠢き出した。
その圧は、大地を揺るがすほどに重く、濃く――。
仲間の誓いを、試すには十分すぎるほどの脅威だった。




