第23話:大地の誓い
影の巨人が広場に立ちふさがった。
その一歩ごとに地面が沈み、石畳がひび割れていく。
黒い靄が村全体を覆い、空すら曇らせた。
『……ここで眠れ……忘れよ……』
重苦しい声が大地を揺らす。
リサが木箱を抱きしめ、ミナが風を震わせ、カイが小枝を握り直した。
リオは仲間の前に立ち、拳を握りしめる。
「……僕らは眠らない! 忘れない! 影に呑まれるくらいなら、光を選ぶ!」
掌に炎が灯り、アウラの声が響いた。
『リオ、君の誓いを大地に示せ。炎は影を焼き尽くすためでなく――照らすためにあると』
巨人が腕を振り下ろす。
大地が裂け、影の波が押し寄せる。
「ミナ!」
「わかった!」
ミナが風を起こし、影の波を逸らす。
リサが灰を掬い、箱の中の欠片を掲げる。
「忘れない! この灰は、誰かが生きた証!」
カイが小枝を構え、必死に叫んだ。
「僕は火を持たないけど……勇気で、みんなを守る!」
三人の声が重なり、リオの炎が膨れ上がった。
紅蓮ではない、黄金の光を帯びた炎。
「これが僕たちの――大地への誓いだ!!」
リオは炎を地面へ叩きつけた。
轟音とともに炎は大地を駆け巡り、影を照らし出す。
ひび割れた地面から光が溢れ、村全体を包み込んだ。
巨人は呻き声を上げ、影を撒き散らしながら崩れていく。
黒い靄が霧散し、空に青が戻っていった。
やがて、広場の中央にひとつの石が残った。
そこには古代の文字でこう刻まれていた。
――「大地は眠らず。影をも抱きしめ、明日へ繋ぐ」
リオはその石に手を置き、静かに目を閉じた。
胸の奥に温かな感覚が広がる。
それは「大地の加護」。
影を退ける力を、ほんのわずかに授けられた証だった。
村人たちの瞳にも光が戻り、沈黙していた街に再び声が生まれる。
子どもの泣き声、老人の笑い声――どれも確かに“生きている”音だった。
リオは仲間を振り返り、力強く言った。
「僕たちは進もう。影に呑まれないように。大地に誓った、この光を胸に」
三人も頷き、笑みを浮かべる。
彼らの足音は、もう影に沈むことはなかった。




