第22話:揺らぐ仲間の心
村の中心へ近づくにつれ、影の囁きは濃くなっていった。
声は耳からではなく、心の奥に直接届く。
『……楽になれ……忘れてしまえ……眠れば、もう苦しまない……』
リサが頭を抱え、崩れ落ちた。
「いや……忘れたくないのに……でも……灰の街の声が……」
木箱を抱く手が震え、指先から力が抜けていく。
リオは彼女の肩を支えた。
「リサ! 君は“忘れない”って誓ったはずだ!」
「わかってる……でも、楽になりたい気持ちも……確かにあるの……」
涙が灰のように落ちる。
その横で、カイも呻き声を上げた。
「母さんが……呼んでる……“もう休んでいい”って……」
小さな手から枝が滑り落ちる。
「カイ!」
リオは必死に呼びかける。
「母さんは君に“生きてほしい”って願ってる! その勇気を僕に見せてくれたろ!」
だが影は容赦なく心を抉る。
ミナでさえ、風を操る指が震えていた。
「わたし……本当に風で人を救えるのかな……結局、災いしか呼ばないんじゃ……」
『お前たちに未来はない……影に溶けろ……』
囁きが渦を巻き、仲間たちの瞳から光が失われていく。
リオの胸もまた締めつけられた。
炎がすべてを奪った夜の記憶が蘇る。
――自分もまた、影に沈むのではないか。
『……リオ。』
アウラの声が微かに響いた。
『君が選んだ“誓い”を思い出して。炎は――希望を照らす光』
リオは歯を食いしばり、立ち上がった。
掌に炎を灯し、影の囁きを押し返すように声を張り上げる。
「聞け、みんな! 僕たちは影に負けない!灰を抱えても、風に怯えても、火を持たなくても――それでも進んできた!忘れたら駄目だ、僕らの旅は希望を探すためのものなんだ!」
炎の光が村の中心を照らし、影がわずかに後退する。
リサは涙の中で木箱を抱き締め直し、カイは震える手で枝を拾い上げた。
ミナの髪が、ほんの少しだけ風に揺れた。
仲間の瞳に、再び小さな光が戻る。
だが影は唸り、地面を揺らした。
『……ならば試せ。お前たちの誓いが、大地を越えられるかどうかを……!』
影の巨人が再び姿を現し、地鳴りとともに村の広場を覆った。




