第20話:ひび割れた大地
湖を後にして数日。
リオたちは乾いた谷を越え、赤茶けた大地に足を踏み入れた。
風は重く、空気は熱い。
地平線まで岩山が続き、緑はほとんど見当たらない。
「……なんだか、不気味」
ミナが眉をひそめる。
「空気が淀んでる。風が流れていない」
リサも箱を抱きしめ、不安そうに周囲を見回した。
「灰の街と似てる……何かが“止まってる”みたい」
その時、大地が低く唸った。
ごごご、と岩が震え、砂が舞い上がる。
「地震……?」
リオが身構える。
だが、揺れは不自然に一点へ集中していた。
谷の奥から、影がせり上がってくる。
それは岩と同じ色をした巨人のような存在。
無数のひび割れが体を走り、その隙間から黒い靄が漏れ出していた。
「……なに、あれ……」
カイが息を呑む。
巨人は目を持たなかった。
だが、その影の奥から、不気味な声が響いた。
『――歩むな』
ただ一言。
しかし、その低い声は大地そのものが告げているかのように重く響いた。
リオは拳を握りしめ、仲間の前に立った。
「……影の大地の精霊……?」
アウラが胸の奥で小さく呟く。
『いいえ。これは精霊ではない。――精霊を蝕む“影”だ』
巨人の影が広がり、大地全体が黒に覆われていく。
仲間たちは飲み込まれそうな圧に息を呑んだ。
リオは掌に焔を宿し、決意を込めて叫んだ。
「だったら――僕たちが止める!」




