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FLARE  作者: Hiro S.Inchi
炎を渡す者たち

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第17話:水底の守り人

水面を裂いて現れた赤黒い炎の影――イフリート。

その咆哮が湖全体を震わせ、空気までも焦がす。


「……っ!」


リオは掌に焔を宿し、仲間を庇うように前に立った。

だが次の瞬間、別の光が水底から立ち上がった。


――蒼。


冷たいはずの水を透き通るように、澄んだ青白い輝き。

それは炎の影を押し返すように湖面を覆い、やがて人の形を取った。


『……止まれ、イフリート』


響いた声は、湖そのものが語っているかのように深く広がった。

水の幕の中に立っていたのは、蒼い衣をまとう女性の姿。


長い髪が水流のように揺れ、瞳は泉の底の光を宿している。


「だ、誰……?」


ミナが声を震わせる。


『わたしはリュシア。水底を守るもの。この都が沈んだ日から、イフリートの封印を見届けてきた』


リサが息を呑む。


「じゃあ、この水に沈んだ街は……」


『炎に焼かれたのだ。イフリートが暴れ、都を灰に変えた。人々は命を賭して水の精霊と契約し、この街ごと湖に沈めた――それが、この“沈む都”の真実』


リオは拳を握った。

イフリート。


炎の異形。

自分と同じ「炎」を持ちながら、暴走の果てに街を滅ぼした存在。


「じゃあ……僕は、どうすればいい?」


リオの問いに、リュシアは真っ直ぐに彼を見つめる。

その瞳は湖面のように揺らがず、ただ冷たく静かだった。


『――封印を強めよ。お前の炎で。そうすれば再びイフリートは眠り、この都は守られる』


だが、イフリートの咆哮がそれを否定するかのように響いた。

赤黒い炎が水面を焦がし、歌声が再び仲間たちの心を蝕んでいく。


「……う、うう……」


ミナが頭を押さえ、リサも膝をついた。

歌声は恐怖と絶望を増幅させ、心を飲み込もうとしている。


ただ一人、リオの炎だけが抵抗していた。

胸の奥でアウラが囁く。


『リオ、選ばなければならない。炎を封じるのか、それとも――向き合うのか』


リオは仲間を振り返った。


震えるミナ、涙をこぼすリサ、必死に立ち上がろうとするカイ。

彼らの姿が、リオの胸を焼く。


「……僕は――」


炎と水の狭間で、リオの選択が迫られていた。

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