第16話:沈む都
川沿いの道を抜けた先に広がっていたのは、奇妙な光景だった。
湖のように広がる水面――だが、その下には確かに“街”が沈んでいる。
塔、屋根、石畳。
すべてが水底に眠り、揺れる波に歪んで見えた。
「……水に呑まれた街?」
ミナが呆然と呟く。
「どうしてこんな……」
リサも言葉を失う。
湖のほとりに立つ古びた祠には、古代文字が刻まれていた。
リオが指でなぞると、アウラが胸の奥で囁く。
『これは“封印の歌”。……ここに、炎の異形が眠っている』
「炎の異形……?」
リオの掌に小さな焔が揺れる。
その光は、水面に映る街の影を照らし――不気味に揺らした。
そのとき。
――響いた。
水底から、低く、長い歌声が。
まるで深海から浮かび上がるような旋律。
言葉にならない声が、水を震わせ、耳ではなく骨に響く。
「な、なに……これ……」
ミナが耳を塞ぐが、声は頭蓋の奥から抜けてこない。
リサも膝をつき、苦しげに胸を押さえた。
ただ一人、リオの炎だけがその歌に呼応するように揺れていた。
『……リオ。あれはイフリート――炎の精霊の“裏の姿”。力を失い、水底に封じられた存在。彼を解き放つかどうか……君が選ぶ時が来た』
湖の底から、赤黒い光が蠢き始める。
封じられた炎が、水を焦がすように滲み出してきた。
リオは拳を握りしめた。
「イフリート……」
その名を呼んだ瞬間、轟音と共に水面が裂けた。
巨大な炎の影が、歌声とともに姿を現す。




