第14話:師としての試練
翌朝、村はずれの草原。
朝露に濡れた草の上に、リオとカイが向かい合っていた。
ミナとリサは少し離れたところで見守っている。
「よし、まずは基本からやってみよう」
リオは掌に小さな火を灯した。
ぽっと生まれた炎が、朝日と混じり合って揺れる。
「僕たち“火を持つ者”は、こうやって呼吸と心を重ねることで炎を出すんだ」
カイは真剣に見つめ、ぎゅっと目を閉じて真似をした。
しかし――
「……っ、やっぱり、出ない」
カイは悔しそうに拳を握った。
「焦らなくていい」
リオは膝を折り、同じ目線にしゃがむ。
「カイ、君には炎がない。でも……それは弱さじゃない」
「弱さじゃない……?」
「炎は“力”のひとつの形にすぎない。大事なのは――何を守りたいか、だ」
リオの言葉に、カイの瞳がわずかに揺れた。
『リオ。教えるのは力の使い方だけじゃない。心の在り方を伝えることも、師の務めだよ』
アウラの声が胸の奥で響く。
「だから、まずは体を動かしてみよう。炎がなくてもできることはある」
リオは小枝を拾って構えた。
「ほら、これを剣だと思って振ってみて」
カイは戸惑いながらも小枝を握り、真似をする。
最初はぎこちなく、力も入らない。
だが、何度も振るううちに、その瞳に集中の光が宿っていった。
リサが感心したように呟く。
「……ただの訓練なのに、すごく必死」
ミナも頷く。
「“守りたい”って想いがあるからだよ」
リオは笑みを浮かべた。
「いいぞ、カイ! その調子だ!」
枝を振るたびに、朝日が反射してきらりと光る。
炎がなくても、その姿はまるで小さな戦士のようだった。
「……僕、本当に強くなれるかな」
息を切らしながらカイが尋ねる。
リオは力強く頷いた。
「なれるさ。炎を持たなくても、君には君の“火”がある」
その言葉に、カイは小さく笑った。
その笑顔は、不安に覆われていた少年の心に初めて差した光だった。




