第12話:火を持たぬ少年
旅路の途中、小さな村に立ち寄った。
そこは山のふもとにあり、畑と家がいくつか点在するだけの静かな場所だった。
だが、村人たちの目はどこか暗い。
「よう、旅人さん。宿なら……ああ、悪い、今は貸せないんだ」
入口で声をかけた農夫は、困ったように頭をかいた。
「何かあったの?」
リオが問い返す。
「村の子がな……“火”を持たずに生まれてきちまったんだ」
その言葉に、リオは思わず眉を寄せた。
この地方では、成長すると誰もが小さな“焔”を宿すという。
料理に使う程度のささやかな力。
それは祝福であり、共同体の証だった。
だが、もし火を持たなければ――「外れ者」として扱われてしまう。
「その子のせいで、畑に病が出たとか、雨が降らないとか……まあ、ただの言いがかりなんだがな。大人たちが恐れててよ」
農夫は肩をすくめた。
リオは仲間たちと顔を見合わせた。
ミナが首を振り、リサが不安げに唇を噛む。
「……会わせてくれないかな。その子に」
リオはそう頼んだ。
案内された小屋の中で、リオたちは一人の少年と出会った。
まだ十歳ほど。
膝を抱えて座り込み、怯えた瞳でこちらを見上げている。
「……きみが、“火を持たない子”?」
リオが優しく声をかけると、少年は小さく頷いた。
「僕は……カイ。どれだけ試しても、火が出ないんだ」
その声は震えていた。
村人たちに責められ続け、居場所を失った子どもの声だった。




