1.8話 屋上での夜、そして終わらないシャッター
1.8話 屋上での夜、そして終わらないシャッター
夏祭りの夜が過ぎ、学校の屋上でふたりきりになった。
潮風が優しく吹き抜け、遠くの漁火がゆらめいていた。
「天音、来てくれてありがとう」
「ううん。来たかったから」
蒼は、いつもより少しだけ弱々しい声で話した。
「ねえ、写真を撮ってもいい?」
「もちろん。好きなだけ撮って」
私はカメラを構え、彼の表情を切り取ろうとした。
でも、どれだけシャッターを押しても、何かが足りない気がした。
「どうした?」
「ううん……なんでもない」
蒼が静かに言った。
「俺、最近思うんだ。写真って、ただの記録じゃなくて、心の叫びみたいなものかもしれないって」
「心の叫び……?」
「うん。撮った瞬間、その人の想いも一緒に閉じ込めるから」
私は息を飲んだ。
「だから、たとえ俺がいなくなっても、君が撮った写真があれば、俺の想いはずっと生き続けると思う」
夜空に星が瞬いていた。
その光は、まるで私たちの未来を祝福しているかのように感じられた。
私は最後のシャッターを切った。
その瞬間、胸の中に強い決意が生まれた。
「蒼、これからも、ずっと一緒にいて」
彼は静かに頷いた。
シャッターの音は、いつまでも止まらない。
終わりのない物語のように。