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「僕」のとある文化人類学的事件簿  作者: 梅雨前線
燃える猫は何を思う(前編)
19/19

連続焼身自殺事件

 二件目の火事の現場は一件目と同じ鉄筋のマンションだった。ただ部屋が五階にあり消火に時間がかかったという。周りの部屋も火事の被害を受けたそうだ。まだ日が経っていないからか周りに警察もいた。あまり派手に動くと面倒くさいことになると、僕たちは簡単に現場の周りを見て回るだけにした。


「活気づいているわね」

 あかりが周りを見回しながら言う。確かに、近くに公園でもあるのだろう。小学生くらいの子ども達がサッカーボールを持って走っている。こんにちは!と挨拶までしてくれた。あかりもこんにちはと笑顔で返す。


 歩いてみると小学校や幼稚園が現場からかなり近い距離にあり、大きな公園もあった。さっきの小学生たちがグラウンドでサッカーをしている。砂場には幼稚園くらいの子ども達が砂遊びをしていて、そのまわりにはお母さんであろう女性たちが話し込んでいた。あかりはその女性たちの方へ向かった。僕は近くにあったベンチに座る。まあここは任せておいていいだろう。聞きたいことは明確だ。


 女性が集まると話が長くなる。というのは偏見だ。実際、鯖江先輩なんかは長話を好まないどころか伝えたいことを要約し過ぎて何を言いたいのか分からないことがある。ただ今回に限って言えば僕がベンチに座っている時間はかなり長くなってしまった。噂話がかなり盛り上がったのだろう、時折笑い声も聞こえる。大いに情報が得られていそうだ。


 あと少しで僕が不審者情報に乗るかもしれないというところで、あかりが戻ってきた。


「どうだった?」

「滋元くんのときと同じだったわ」


 同じ、ということは聞いた情報が無駄だったということではない。むしろ。


「これで二件の焼身自殺の共通項が増えたってわけか」

「ええ。あの人たちも猫の死体と子どもの歌を聞いたそうよ」

「しかしこの辺は子どもはたくさんいるだろう?歌が聞こえることはそんなに変なことじゃなさそうだけど」

「私もそう思ったわ。ただ、さっきの人たちの中にその子どもに話しかけた人がいたの」


 その女性は仕事帰りだったそうだ。保育園に通う子どもは旦那がお迎えに行ったそうで、その女性は残業を終え家に帰る途中に歌を歌いながら道を走る三人の子どもを見たのだという。


「日も暮れていたから心配になってその子どもたちにどこの子か聞きにいったみたい。でもその子たちは歌い続けながらそのままどこかへ走っていったそうよ」

「歌、ね」

「それが変な歌だったから気になったと言っていたわ」

「どんな歌か聞いたか?」

「一応ね。あんまり覚えていないみたいだったけど、『ねこがころんだ』とか『ひのよるに』って聞こえたそうよ」


 また猫、そして火の夜・・・。


「・・・火事の予告か?」

「そう聞こえるわね」


「練炭自殺、燃え移って火事になり焼死、数日前から猫の死体、火事の直前に無関係とは思えない歌詞の歌を歌いながら走る子ども・・・。これが二件続けて起きているということか」


「これでこの二件の自殺が無関係だというのには無理が出てくるわね」

「連続焼身自殺・・・事件?」

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