赤・赤・赤
足根先輩が聞き取りをされているとき、鯖江先輩は「行くなら今だな」となにやら物騒なことを言った。どこにですか?僕は恐る恐る尋ねた。
「もちろん、現場検証さ!」
ああ、神よ、あのときどうしましたかと聞いてしまった僕をお許しください・・・。
友人は体調が優れないから行かないと言ったので、鯖江先輩は無理やり僕だけを連れて裏山へ向かった。裏山の入口には交番の警官が立っていたが、かなりぼーっとしていたので気付かれずにすり抜けることは難しくなかった。
実際に裏山へ行ってみると、最初はそこまで危ない道とは感じなかった。恐らく奥へ進むと危ないのだろう。まだ崖も河も見えない。
「廃墟は・・・あっちか」
鯖江先輩は携帯のナビを頼りにずんずんと進んでいく。昨晩の雨で地面はかなりぬかるんでおり、時折足を取られながらも僕たちは進んだ。
「そんなに歩いていないが、やはり鬱蒼としているな」
鯖江先輩は顔にかかる葉っぱを手でよけながら言った。
廃墟までは十分ほどでついた。何に使われていたのかはよく分からないコンクリートの建物で、中はかなり朽ちてきていた。
廃墟を越えて向こう側には少し道が続いていて、そこから河の流れる音が聞こえる。恐らく警官はこの奥の道でカメラと鞄を見つけたのだろう。こんなところまで見回る必要があるなんて、大変な仕事だ。
「じゃあ入ってみようか」
そう言って鯖江先輩は入口を探し始めた。僕は僕で、なんだか不思議なことが起こる予感がして少し楽しくなってきていた。
「あったぞ!ここから入れそうだ」
鯖江先輩が朽ちて扉が外れた入口を見つけ、二人で入っていく。建物に入ってすぐ僕たちは異様な光景を目にした。
「なんだこれ・・・」
そこにはいたるところに『赤』があった。いや、正確には『赤いもの』があった。赤い玩具や布、折り紙や画用紙らしい赤い紙、赤い服を着た和洋様々な人形。不気味な光景がそこには広がっていた。
「これは・・・かなり異様だな」
先輩と僕はそれらを踏まないように慎重に奥へと進んだ。
「先輩、階段がありますよ」
しばらく探索していると、僕は二階で登る階段を見つけた。外から見た感じこの建物は二階建てだ。
「行ってみようか」
二人で階段を登っていく。二階は一階とは違い赤いものが一つもなかった。それはそれで不気味に感じる。いくつか部屋があったが特に何も見つからない。何もないかなと先輩と話しながら一番奥にある最後の部屋を覗いた。
そこには何かを祀っている神棚があった。
しかも建物にある他の物と違い、その神棚は誰かの手が定期的に入っているようだった。