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「僕」のとある文化人類学的事件簿  作者: 梅雨前線
『ぬのと たける』を殺してください
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人が死ぬ映画

 大学が夏休みに入り、僕は暇を持て余していた。喫茶店でアルバイトをしていたが別段お金に困っているわけではないので、シフトは週に二、三回しか入っていない。かと言ってこれといった趣味があるわけでもなく、日々を無為に過ごしていた。


 大学のとある先輩から興味深い話を聞いたのは、そんな夏休みをだらだらと過ごして四畳半のアパートの中で半分蛞蝓にでもになるかと思われた矢先の、八月は中頃のことだった。


 友人に誘われた大学の学科の飲み会で、僕はたまたまその先輩と対面で座った。その飲み会は交友関係の無駄に広い、大学は人脈をつくるところだと叫びまわっている現代が生み出した怪獣である友人が企画したもので、参加者もかなり多く僕自身も初対面の人が大勢いた。先輩もその大勢の中の一人だった。

 その先輩とは、対面に座っていたとはいえ初対面だということもあり、飲み会が始まって暫く会話は全く無かった。

 酒に呑まれた連中が腹踊りを始めたり、大鼾をかいて眠り始めたりと混沌と化してきた飲み会が終盤に近付いてきた頃。僕は正面でそのどんちゃん騒ぎに混ざらずに一人でちびちびと熱燗を嗜んでいたそのとある先輩のことがなぜだかふと気になり、話しかけた。


 先輩は演劇同好会に所属しているらしく、演劇の他にも知り合いの作る映画に出演したりすることがあると話をしてくれた。僕は演劇にはあまり興味は無かったが、映画は多少好きだったこともありその先輩とはやれこの映画のカメラ回しがどうだとか、やれ照明の演出がどうだとかなど、映画談議が盛り上がった。


 先輩が最近出演した自主映画の話をしていたとき、ふと思い出したかのようにその話を始めた。


「実は最近、変な噂話を聞いたんだ」


 その話は、とある自主映画を作成している監督の男の噂だった。なんでも、その男が監督をした映画に出演した役者が、三人連続で亡くなったのだとか。


 偶々じゃないですか?と僕は先輩に言った。その映画に出演していた役者たちの間で何かよくない病が流行ったとか、精神を病んだ人が多かったとか、確率は低いが三人亡くなることも無くは無いだろう。


 僕がそのことを伝えると、先輩は何故だか神妙な面持ちでこう言った。

「その役者達は同じ作品に出ていたんじゃないそうだ。一作品で一人ずつ。つまり、その監督の映画は三作品連続で死人が出ているということになる」


 更に先輩は興味深い話をしてくれた。その亡くなった三人は、違う映画にも関わらず全員『作品内で死ぬ役柄』を演じていたらしい。そして一番興味深いことが、『殺される人の役名が全て同じ』だったらしいということだ。


「噂話に尾ひれやら背びれがついたのかもしれないな」

 先輩はそう言って、温くなった熱燗をグイっと飲み干した。

「大体、違う作品で同じ名前の役を三人連続で出すなんてこと、ありえんだろう」


 僕はその話に興味を抱いた。話の流れで先輩から、その監督がよくいるらしい喫茶店の名前を聞いた。


 僕のアルバイト先だった。


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