第8話 始まる新学期、変わる環境
目が覚めた次の日、オレの病室には朝から警察人が来ていた。今回の事についての事情聴取の為だ
"能力協会"の汐留さんに言った事を同じように伝えた
士部崎の叔父さんが関与している可能性もあった様なので、しっかりと関係無い事を説明しむしろ助けて頂いて感謝していると伝えた。そして警察の人にはこっぴどく叱られた
その後、オレは看護師の女性からも叱られた
「とおるくん、、キミは自分が何をしたのか分かってるの?」
女性はかなり怖い顔をしていた
「いい?キミの行動は自分勝手で、周りを不幸にする所だったのよ?それに一歩間違えれば死んでいたかもしれない」
あまりの迫力に何も言い返せなかった
「前回はキミの意思を尊重して親戚の方には、特に連絡しなかったけど、今回はそういう訳にはいかないからね。近い内にこちらに来られるそうよ。そして病院としても、キミをこのまま退院させる訳にはいきません。親戚の方とよく話し合って今後を決めて下さい」
「・・わかりました」
女性はオレの手を握り、悲しそうな、安堵したような顔をした
「ホント、生きていてよかった」
その言葉に少しだけ申し訳なさを感じた
そうこうしていると昼を過ぎ、時間は15時ぐらいになった
「とおるくん、お客さんよ」
看護師の女性が声を掛けてきた。そしてその後ろからは士部崎が現れた
「お、お邪魔します」
「また来たのか。士部崎」
オレ達の様子を見て、ニヤニヤしながら女性は立ち去った
「ご、ごめんね、忙しいのにまた来ちゃって」
「いや、、むしろ助かったよ。今日はどうしたんだ?もう来ないと思ってたのに」
その言葉に士部崎は少し、悲しそうな顔をして言葉を詰まらせた
「そ、その、昨日能力協会の人が言っていた事なんですけど、、北大路くんは、どうして専用の学校に行く話を断ったの?」
「昨日も言ったけど、オレはそこに行けるような人間じゃないんだよ。この左眼もそこまで見えてないしな」
(士部崎には悪いが、政府の人間に知られる訳にはいかないんだ)
そう言ってオレは眼帯をつけている左眼を指差した
眼帯は病院から借りた
「そ、そうなんだね、、でも、その左眼はきっと何か凄い力があると思うよ。私が能力を使ったのに、その眼だけは元には戻ってないし、、それに意識が無かったのに消えて無いなんて、凄いと思うよ」
士部崎はオレを慰めようとしてか変に褒めてきた
「そんな事ないよ、それに凄いのは士部崎だろ?汐留さんもお前の能力が凄いって言ってただろ?」
「そ、そんな事無いよ。わ、私、まだ北大路くんに使ってから使えてないし・・それに」
士部崎は下を向いてしまった。何となく気まずい雰囲気になったので、話を変えた
「そう言えばさ、叔父さん大丈夫なのか?助けてくれたのに疑われていたんだろ?」
士部崎は我に返ったかの様に顔を上げた
「う、うん。叔父さん、全然気にしてないって言ってるよ。元々正義感がすごく強い人だから。北大路くんが目が覚めれば疑いも消えるって言ってたし」
「あぁ、警察の人にはオレも関係無いってしっかり伝えたよ。叔父さんにも、迷惑を掛けて申し訳なかったと伝えてくれないか?それと感謝している事も、、」
「うん、わかった。伝えておくね」
そう言うと士部崎は席を立った
「じゃあ、そろそろ帰るね。あんまり長くいたら悪いし」
「そうか、ありがとな。オレは元気だし、気にして来なくても良いから」
士部崎は少しだけ悲しそうな顔をした
「わかった。あと、北大路くん、その、学校は、これからどうするの?」
その言葉に少し考える
(親戚の人に会わないって事には出来そうに無いしな。正直、今後どうなるかはよく分からない)
それでも・・・
「行くよ、、もしかしたら、始まってすぐには行けないかもしれないけど、それでも必ず行くよ」
「そうなんだね。わかった、私も頑張るから、また学校でね」
そう言うと、士部崎は部屋から出て行った。
と、、思ったら戻って来た
「ご、ごめん、その良かったら、連絡先、交換してもらえませんか?」
照れながらそう言ってきた
オレはちょっとだけ顔が緩んだ
「あぁ、いいよ」
連絡先を交換して士部崎は少し顔を赤らめながら足早に帰っていった
2日後親戚の人が来た。正直会った事もほとんど無く、何を話して良いのかよく分からなかった。そしてそれは向こうも同じだった
ぎこちないながら話し合った結果、親戚の人に家を借りて貰い、1人暮らしをしながら今まで通り学校に行く事に決まった
親戚の人は少しホッとした顔をしていた。
(内心はオレの面倒をみるのが嫌だったのだろう。だから予想外に手が掛からないとわかり安堵したんだと思う)
代わりに看護師の女性は不安そうな顔をしていた。もう一度考えた方が良いと言われたが、オレの心は変わらなかった
家の手配等をする間、検査もあるという事なのでまだしばらく病院暮らしは続いた
そして10日後、いよいよ退院の日が来た。明日から学校もちょうど始まるタイミングだ
「とおるくん、正直、私はまだ心配なんだけど、これ以上は言わないわ。けど最後にこれだけは言わせて。絶対に変な事考えちゃダメだからね」
「わかりました」
そう言って頭を下げた
親戚の人が、車で迎えに来てくれた。両親に会いに一度自分達の家に来るかと聞かれたが、会う気は無いと答えた
気まずい時間を過ごし、借りてくれた家に着いた。ワンルームの部屋に家具など一式が置いてあった
(じゃあもう帰るからな。家具に、学校の教材、大体用意してあるから。何かあったら連絡しなさい。生活費は毎月振り込む様にするからな)
そう言って帰って行った
新しい部屋で1人、寝転んで天井を見た
「ちょっと前まで、山に行ったりしてたのに、、もう明日から学校か。オレ、休みの間ほとんど病院にいたな」
呆れ、不安、興奮、色んなモノが湧き上がった
スマホを取り出し、士部崎に連絡した。
退院したら改めて士部崎の叔父さんにお礼を言いに行きたいと伝えていたので、今日退院した事を伝え、明日会いに行く事は出来るか聞く為に
少しして士部崎から返事が来た。明日会う事は出来るという内容と、学校はいいのかという内容が帰ってきた
オレは問題無いと返事を送り寝た
次の日、士部崎の叔父さんに会いにあの山の近くまで来ていた。住所を聞いていたので、それを確認しながら来た
以前来た時には、電車やバスは子供が大勢乗っており混んでいたが、今日はもう学校が始まっている時期、しかも昼時となればそれほど混んではいなかった
教えてもらった住所に着くとそれらしい男の人が立っていた
「おー北大路君だな。元気になったみたいで良かったな」
体格の良い中年の男の人は、笑顔でオレに近づいてくると肩を叩きながらそう言った
(この人、士部崎とは全然似てないな)
「あの時は助けて頂いてありがとうございました。お礼を言いたくて来ました」
「気にせんでええよ。あんな所に出くわしたら誰だって助けるわ」
そう言って男はまた笑った
しかし、すぐ真面目な顔になった
「だが、君の行動は明らかに危険だったよ。今回は運良く助かったが、次はどうなるか分からないからな。まぁそれはワシら猟師も同じだがな」
オレは再度お礼を言った。お茶をご馳走になりその間、士部崎とは付き合っているのかなど冗談を言われた
「じゃあ気を付けてな。頑張るんだぞ〜」
男の家を後にした。その後、士部崎から学校の事で連絡が来た
学校に能力協会の人が来た事。協会の人がオレ達に話した、専用学校の説明を学校生徒にした事。"能力"を発現させた人を聞き、その力を確認した事
そして最も重要なのは、"鳳仙大我" "川坂琴莉" "小鳥遊桜騎"の3人が協会の人に認められ既に専用学校へ編入していた事
「何だよ、、それ」
家を飛び出し近くの公園まで走っていた。そして公園生えている大きな木の前に立ち頭突きした
何度も何度も頭突きした
しばらくして、、少し落ち着いた
(協会が能力を発現させた人を集めているのなら、学校の始まるこのタイミングで何かすると思ってたし、休み前から能力を発現させていた大我に専用学校の話が来るとは思っていたけどさ)
色んなモノが溢れて来て、気づいたら木の下に座っていた
「もういなくなってるなんて思わないよ。何だよ、、それ」
(こんな事で諦めてたまるか)
「"絶剣闇夜"」
闇が現れ刃になった。それは1つ2つと増えていき、10数本に増えた
「大我、、お前を追いかけて突き付けてやるよ。"刃"を」
暗闇の中でオレは誓った