第5話 再会した同級生
日が昇るとともに目が覚めた。昨日はあれから大変だった。焚き火を消してしまった為、辺り一面暗闇だった。何処に何があるかも分からないので、他の事をするのは諦めスマホのライトを頼りに、寝袋を探しそのまま寝た
それでも・・収穫はあった
「"絶剣闇夜"」
暗闇で使った際にはよく分からなかったが今なら分かる。身体から闇が出て次第に纏まっていき、刃のような形をとった
"黒火"の時の様な小さく不確かなモノでは無く、実寸大だ
触る事も出来そうに思えた。オレはそれを今日は近くの木に飛ばした。不思議と念じただけで操れる
それは、幹に刺さると木を闇が覆い、消し去った
「なるほど、こんな感じで昨日は焚き火が消えたのか」
新しい"能力"を分析した
「黒火に少し似てるけど、こっちの方が能力として強いな」
(黒火も試してみるか。火にこだわりがある訳じゃないけど、大我も2つ能力を使ってたし、ニュースでも複数の能力を扱える人はいるって言っていたんだし)
「出せた・・・しかも大きい」
昨日はピンポン球程度の多きさだったモノが、今日はバレーボール程の多きさだ
そして見た目も変わった。漆黒なのは変わらないが、形が火だ。これも飛ばせそうと感じて、昨日集めていた残りの枝へ飛ばした
普通に燃えた
「なんか火だな・・まぁ火を出そうとしたんだから当たり前なんだけど」
("感情"をメインの"要素"にして発現する"絶剣闇夜"。これが発現した事で、自分の中で能力の概念が変わって、それが黒火にも現れたって感じなのかな)
「まぁとりあえず使えそうだし、この能力にも名前を付けるか」
("絶剣闇夜"は昨日寝る前にテンションが上がって付けた名前だ。恥ずかしさ全開だけど気に入っている。それに今後能力が増えたら使う時に混乱しそうだし、名前を付けるのは良いアイデアだと思う)
「何にしようかな・・なるべく黒火に直結する名前がいいだろうし・・・よし、"不知火"にしよう」
(我ながら恥ずかしいネーミングだな)
1人森で苦笑いをした。名前も決まり、2日目にして2つも能力を発現させた
だが、ここから先が思いつかない。こんなに上手くいくとは思わず完全に計算外だった
「悩んでても仕方ないし、とりあえず奥に進んでみるか」
辺りの片付けをしてその場を後にした
「今日は水源でも探すか」
飲料水も多く無いが、それ以外でも水は欲しい。水源の付近を次の拠点にする為歩いた。そしてその間も能力について考えていた
「次は水を出す能力とか良いんじゃないか!?大我との相性を考えても悪くないだろうし。まぁ〜オレが発現出来ても墨汁みたいなのが出そうだけど。それとも今ある能力を鍛えるか」
最初はする事が無くなったかと思ったが、こうして考えてると溢れてくる。夢見た世界にいる事を実感出来、テンションが上がった
しばらく山を探索していると河を見つけた
「おっ!?あったあった」
見つけた河に気分も上がる
「キレイそうだし、これなら生活に使っても問題ないだろうな」
山に流れる河なだけあり、その水質はぱっと見でも分かるほど澄んでいた。河辺に荷物を置いて拠点を作った。といっても寝袋や荷物を並べてるだけだが、、それが終わるとオレは服を脱ぎ、水浴びをした
「あ゙ぁ〜キモチ〜〜」
山の中とはいえ、気温は高い。その為河の水はとても気持ちよく感じた。同時に着ていた服も洗った
服が乾く間、今後について思考した
「やっぱり、新しい能力を発現させる事にしよう。"不知火"の様に影響を受けて力が上がるかも知れないしな」
考えはまとまり、今後の方針も出来た。そうこうしている内に、服も乾いた
服を着て、食事をする事にした。買い置きしていた日持ちのする缶詰を取り出し、それを食べた
「水も食料もまた買いに行かないとな・・・」
今日、明日程度ならどうとでもなるがそれ以上となると今ある量では心許ない
食事を終え、いよいよ新しい能力の発現に取りかかった
「水を出そう。けど、どうするか、、火と違い、出すだけだとそこまで役にも立たないだろうし」
難問に当たった。火に比べて水は出すだけだと余り意味が無いという事。そして火は大我がオレに使った能力、印象に残っていて、感情を要素にしやすかった
けど水にはそれが無い。いくら考えても答えに辿り着けず、時間だけが過ぎていった
「ダメだ、一旦忘れよう」
考えるのを止めて、一度夜に備え焚き火の材料を集めに行く。今日は河の近くに持ってこなければいけなかった為、時間が掛かった
気づくと日が沈み始めていた
昨日と同じように焚き火をして、食事を取り寝袋で寝た
次の日朝から、買い出しへと向かった。寝袋なんかは昨日の拠点である河近くに置いてきた。またあそこに戻るので必要最低限の荷物だけを持って
今回は飲料水、食料、そして雨が降った場合などを考えての1人用のテントが目的だ。来た時の道を戻り山を降り、バスで町の方へ向かった。そして前回と同じホームセンターへ来た
ここは品揃えが良かったのでまた来た。店に入り、物色していると声を掛けられた
「き、北大路、くん!?」
(ん!?)
こんな所で自分の名前が呼ばれるとは思わず、急いで声の方を向くと目が合った
「ひ、久しぶりだね、、北大路くん」
(確かに、この人は・・)
目の前に小さな女の子がいた
(声の主は同級生の"士部崎みゆ"だった)
「久しぶり・・・」
「ご、ごめんネ、急に声掛けて、こんな所にいると思わなくて、びっくりしてつい・・・」
「いやまぁそれは良いけど、こっちこそこんな所に知り合いがいるとは思わなかった」
「え、!?あ、わ、私はお母さんの実家がこの辺りで、それで帰省してたんだよ」
「そっか、お盆の季節だもんな」
「う、うん。北大路くんは?もしかして北大路くんの家もこの辺りなの?」
士部崎の言葉胸が締めつけられ顔が歪んだ
「ご、ごめん。もしかして違った?いきなり話しかけちゃってごめんなさい」
よほど酷い顔になってたのか士部崎は謝ってきた
「いや、大丈夫、そんな所。じゃあもう行くから」
「あ、あの北大路、くん、その、あ、あの時はごめんなさい。それに今までも」
「え!?」
(あの時というのは恐らく、休み前の学校の事だろう。それに今までとも。確かに、士部崎は大我の言う事を聞いてオレの腕を押さえた。けど、それ自体は余り気にしてない。実際命令したのは大我なのも知っているし、それ以外の事も全部大我にされた事なのだから。それでも士部崎は謝ってきた。目に涙を浮かべながら、、それほどに本人は気にしていたのだろう)
「ありがとう」
オレはただそう返す事しか出来なかった
「北大路くん、なんか変わったね、、わ、私も、次は命令されたりしない、、強くなるから」
そう言うと彼女は足早に去っていった
(意外だ・・)
士部崎の見た目からは想像も出来ない言葉を言われた。それと同時に、力が湧いてくるような感覚がした
(きっと士部崎にも何か変化があったんだな。だから自信が生まれたんだろう。自分だけじゃないんだ、変わったのは・・・)