第4話 漆黒の刃・・名を
第一章スタート!!
駅に向かっているが、親戚の所へ行く気は無い。両親に会いに行きたいが今のオレに会う資格はない。それに今更話す事は出来ない、、会うのは全てが終わった後と決めている
駅に着き、オレは償いと言う事で貰ったお金を確認した。帯の付いた札束が1つある。高校生のオレには過ぎた金だ。でも、こんな物で償われたなんて思わない。それでも何も無いオレには、これを使うしか選択肢が無い
(万が一にも今、大我達に会えば自分を止める事が出来ない。その結果がどうなろうと・・・だから今、会うことは出来ない)
そう思い、離れた田舎の方に行くために電車に乗った。数時間電車に揺られそこに着いた
駅を出ると建物の数は明らかに減り、遠くに山が確認できた。駅員に目当ての場所を聞き、バスで移動した。目当ての場所はホームセンターだ。オレは簡単な寝袋と持ち運べるだけのキャンプ用品や食料を買い込んだ
(これから山でしばらく過ごす事を考えていたからだ。"能力"を使えるようなる為に、、病院にいる時、どうすれば能力を発現させられるのかを考えた。能力については才能が重要と知ったが正直半信半疑だ。オレは大我達4人全員が能力を発現したのを見ている。あの4人全員に才能があったなんて信じられない。だから仮説を立てた。10代後半全ての人間に、それぞれ自分に合った系統が存在し、系統によって合う、合わない、発現しやすいなどの法則があるのではないかと、、大我しか出せなかった"火"は大我の系統と噛み合っていただけで、"矢"を3人が出せたのは、3人の系統に合っていたから、、無論、まだまだわからない事だらけだ。自分の系統もわからないし、どんなセンシティブが発現出来るのかも見当がつかない。だから山に行く。普段の生活では味わえない"経験"を、極限状態での"想像力"を、制限のある生活で見えてくる自分の"感情"を得る為に)
ホームセンターから出たオレは、登れそうな山を求めて再びバスに乗った。バスは町外れに進んで行き、とうとう周りに建物が見えなくなった。後はいい場所を自分で歩きながら探そうとバスを降り歩き始めた。舗装された道路から外れて山道を進んだ。しばらくして少し開けた場所を見つけた
「もう夕方だし、この辺りにするか」
そうしてオレは買ってきた寝袋やキャンプ用品をその場所に置いた。寝袋やキャンプ用品を設置している間に辺りはかなり暗くなった。"夜"という時間では無いが、木々で光が遮断されているからだろう
急いで、周りに落ちている木の枝を集める事にした。暗くなるにしたがって、焦りの気持ちが生まれてくる。ただ、山の中だけあって木の枝は大量にあり、すぐに集まった
そして火を起こして焚き火を始めた。火が出来ると暗かった辺りは明るくなり、ホッと息をついた
落ち着いた事で病院を出て以降、食事をしてなかった事を思いお腹が空く。買って来た中で1番日持ちしなさそうなパンを取り出してそれを食べた。お腹が空いていた、病院食が長かった、外での食事、、理由は色々と浮かんできたが気にせず黙々と食べ続けた
それぐらい美味しく感じた・・・
お腹が膨れて一息ついたとき辺りはすっかり暗くなり、その中で焚き火だけが目立っていた
静寂の中、"パチパチ"と響く焚き火の音
そして、、"火"
腹部を押さえた。大我付けられた火傷、燃えた家、両親の顔が脳裏をよぎった
(過去のオレは絶望し、涙した。けど、、次に絶望するのは、、"大我"お前らだ)
「やってみるか・・」
そう言ってオレは右手の人差し指を立てる
「いい思い出は無いけど、それでも鮮明に思い出せるのはやっぱり大我の出した"火"の"能力"なんだよな」
(火に焼かれた"経験"、記憶している大我の火と目の前の火を元に"想像力"そして、あの炎の痛み、全てを失った"感情"思い当たる条件は満たしていると思う。仮説通りなら、自分の系統は分からないけど、火なら発現出来るような気がする)
絶対とは言い切れない
しかし自信があった
「大我の能力を使うのは気に入らないが、それでも、、あの絶望を味あわせることが出来るのなら」
"ホワッ"
人差し指の先から揺らめきながらか細い"火"が出た
胸が高鳴る
「よしっ!出た。使えるんだオレも、、能力を」
集めていた焚き火用の枝を手に取り、オレの"火"に近づけた
だが、、変わらなかった・・・
「は!?何で?どういう事なんだよ」
"火"に近づけたのにも関わらず、枝は全く燃えなかった。火力が弱いとかそんな次元ではない、、枝は"火"に近づけたのに熱くすらなっていない。動揺し、意味が分からなかったオレは自分の"火"に左手を近づけた
「・・・アツく、、ない!?」
(オカシイ、、間違いなくそこに"火"はある。だけど触ろうが何も感じない)
人差し指の"火"が、、揺らめき消えた
「ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな〜〜!!」
静寂に、、怒号が響き渡る
左手で右手を押さえながら再度、人差し指を立てた
「出ろ!出ろ!出ろ!出ろ!出ろ!出ろ!出ろ!!、、殺すんだ!味あわせるんだ!、、突き付けるんだ、、焼き尽せ、、与える、、、絶望を」
再度人差し指に灯る。けど、、今度は何もかもが、、違う
辺りの闇に同化するようにその"火"は、、ドス黒い
そして、、揺らめきながら形を変えた
まるで、、刃のよう
「え!?」
さっきまでの、怒り?憎しみ?絶望?声に出た思いが消えた。合わせた様に能力も消えた
(なんだよ、、あれ・・・)
「火を出そうとしたんだ、、よな?」
驚いたおかげで冷静になれた
「もう一回、、ちゃんとやってみよう」
冷静なったオレはまた火を出してみることにした。目の前の焚き火を見ながら、大我の事を思いながら
次はよく知る、火が出た
枝を近づけてもやはり変化はない
「さっきと一緒か」
一度経験した事で今度は落ち着いていられる
(黒いやつ、あれはなんだったんだ?それに火の様だったけど、よくよく思い出してみると形もおかしかったよな?刃物みたいな)
そんな事を思っていると、突如、火に変化が現れた
「え!?」
赤みがかったオレンジ色をした火が所々黒く変色しだした
「!?!?これって、、さっきの・・」
変化に驚いていると、また元の焔色に戻った
「何なんだよ・・」
(確か、、黒い火を思い出してたんだよな)
再度黒い火を思い出す。火はまた黒くなりだした
三度目ともなると流石に驚きも無くなり、冷静に見ることが出来た。全てが黒くなった訳では無いが、間違いなく色が変わった
「よし、今度は維持出来るな」
元の焔色に戻らない事を確認し枝を近づけた
黒火は枝に移ると広がり燃えていった
「変わった、、間違いなく火が見た目だけでなく変わった」
喜ぶ気持ちを押さえながら、この結果について考えた
(間違いなく最初の火はオレの経験、想像力、感情が要素になって発現したはず。燃え無かったけど。その後、何も出来ない火に腹が立って、、あの"黒火"が出た)
これまでの情報を分析する
(いきなり見た事も無い黒火が出たから驚いて、消えた。再度火を出して、今度はその状態で黒火を思い出したら、火が変色し、変化した火は枝を燃やす事が出来た)
分析しているとある事に気づいた
(もしかして普通の火を出した時、3つの要素が作用したと思ったけど、知らない内に自分の得意系統の要素を上手く活かす事が出来ていなかったのか?それで発現出来ても能力としては未熟で、枝を燃やす事が出来なかったんじゃないのか)
気づくとさらに分析出来た
「腹が立ってキレてたら黒火、、、感情が要素になったのか?」
分析すると本当にそうなのか確かめたくなる
「もう一回、出してみないとな」
あの時の黒火を思い出した。と言っても今度は、見た目は気にせず、ただ、、あの時の感情を思い出す
気を抜けば飲み込まれる。そんな感覚の中何とか冷静さを保った
「出せた、、間違いない。あの時の黒火」
刃物のような形をした黒い火、そこに枝を近づけた
黒火は枝に突き刺さり一瞬で燃やした
形状もおかしいが、燃え方も変わっていた。接触部から燃えず、まるで内側から燃えたように消えた
(やっぱり燃えるのはこの黒火が理由っぽいな。黒火になって、能力としての力が上がってる。となると、オレの得意な系統は"心緒系"って事なのかな、、よく分からないけど。思い、、つまり感情が高まり能力に強く表れた。その結果がこの黒火、、これが系統に合った能力という事なんだろう)
オレはセンシティブについて理解してきた
「ニュースで言ってた、能力が発現しない人は、最初のオレの様に自分の系統を活かせていなかったんだろうな」
持っていた情報から答えにたどり着いた気がした
「黒火はオレの系統を生かした能力だと思う。けど毎回使うには大変だな。さっきも出すのにかなりキツかったし」
(そういえば大我の奴は使うと能力が強くなるとか言ってたよな?)
よくわからなかったがダメ元で真似てみる事にした
一度黒火を消し、再度出してみる
拍子抜けするほどに簡単に出来た。枝に使うと同じ様に燃え消えた
「出来た、、!?なんでだ?オレは心緒系だと思ったけど違うのか?大我は何だ?"見聞系"か?それとも心緒系?」
予想外の結果に困惑した
(いや、、違う。確かに簡単に出来たけど、オレと大我は間違いなく違う。大我は火力が上がっていたけど、オレのは火力が上がった様には思えない。それに、そもそも能力の見た目も違うし)
分析する癖が出来始めたのか、困惑していた脳が自然も落ち着き動き出した
「やっぱり、、オレは心緒系だと思う。そして恐らく、大我は見聞系」
動き出した脳が黒火見て、全てを一直線に繋げた
「同じ火の能力だけどオレの火は感情が要素なのに対して、大我の火はタバコに火を点けるという経験が要素になってる。だから見た目も違うし燃え方も違うんだと思う」
(アイツは勘違いしている)
「アイツは経験が重要と言っていたが、それはたまたま、アイツの系統が見聞系だっただけで、重要なのは自分の系統を理解する事。そしてそれを元に他の要素を合わせる事、、」
震えが止まらない
「いける。能力なら、、能力なら出来る」
ほんの少し前まで、なに1つも勝てて無かった大我に勝った。直接勝った訳では無いが、それでも自分が前に進んでいる事を実感した。
上がる気持ち、冴えた脳
それらが新たな道を示してく
「もう、火にこだわる必要はない」
(より確実に、より直接的に、より感情的に・・・)
身体の周りから黒い火?、靄?、闇が出た。そしてそれは1箇所集まり形になった
(漆黒の、、刃・・・)
無意識に焚き火を見た
するとそれは焚き火へと飛んでいき、貫き飲み込み、暗闇がその場を包んだ
「"絶剣闇夜"」