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後に魔王と呼ばれる元イジメられっ子  作者: ちょむろう
序章 絶望と希望が混ざり合う
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第3話 刃を手に歩み出す



 起きていたのか眠っていたのか・・よくわからないが気がついた時、辺りは暗くなっていた


「父さんと母さんに話そう」


 プライドは消えていた。支えられないほどの現実に耐えれず、生まれた答えは、、頼る事だった・・・


(壊れる事を恐れていたボクが、いざ壊れかけるとたどり着いたのが、恐れていた両親に事実を伝える事なんて・・・)



 でも、、そう思えた事で不思議と身体が軽くなった。遅かったのかもしれない、、もっと早くにこう思えていれば良かったのかもしれない。でもそれはきっと出来なかった



 それがボクだから・・・



「・・よし、帰ろう」


 家に向かって歩き始めた。歩きながらどう伝えるかを考えていた。話す決意は決まったけど。それでも・・・



 思考を巡らせながら歩いてた時、不意に遠くに人集りが出来ているのを感じた。人集りはボクの家の辺りだ



 歩くスピードが自然と速くなる。さっきまでの考えが全て消え去りボクは上がる息で走った


 人集りは紛れもなくボクの家の周りで出来ていた


 赤いライトにサイレン音が響いている


 ボクは人集りを掻き分けて家の前に立った






 いや、、家があった場所の前に・・・




 そこには焼けた残骸があるだけだった。頭が追いつかず、力なくその場に崩れ落ちた


「透君!!透君!!大丈夫だった?」


 人集りからボクに話しかけてくる人がいた


 隣に住んでいるおばさんだ


「無事でよかった。家には居なかったの?とにかく無事でよかった」



「おばさん、、ここってウチじゃないよね?」



 力ない声でボクはおばさんに問いかけた


「・・おばさんも突然の事で、、とにかく凄い音がしたと思ったら、いきなり北大路さんの家がーーーー」



 おばさんが何か言ってるが、、何も聞こえない。上がった息も収まらず、どんどん呼吸しにくくなった


「透君?!透君!?」






 気がつくとボクは見知らぬ天井を見ていた。保健室に似ていると感じたけどなんか違う


「・・・病院!?」



 ボクの声に反応するようにベットの隣に座っていた男の人がこちらを見てきた


「やぁー目が覚めたかい?」


 ボクは男の方を見た。中年で体格の良く、短髪頭にスーツを着た人だ


「少しお話出来るかな?」


 その問いかけに声は出なかったが、なんとなく身体を起こそうとした


「いいよ、いいよ!無理に起き上がらなくて、とりあえず私の話を聞いてもらおうと思ってるだけだから。っと!その前に病院の先生を呼ぶから待ってて」


 そう言うと男は病室にあるナースコールを押し、ボクが目を覚ました事を伝えているようだった。身体を起こし待っていると白衣を着た男の人と看護師であろう女性の人が入って来た


「じゃあ、先生も来られたし話させてもらうよ。まず、倒れる前の出来事を覚えているかい?」



「・・・はぃ」


 男の問いかけにボクは掠れたような声で返事した


「そうか、、じゃあ改めて伝えさせてもらうけど、火事になったのは間違いなく君の家なんだ」



 ボクは倒れる前を思い出す


 おばさんの言っていた事を思い出しボクはただ、あっけにとられた


「そして、本当は今伝えるべきではないんだろうだけど、、君の、ご両親は、、火事に巻き込まれて、お亡くなりになった」




 






 






 








「え!?」


「君のご両親が亡くなったんだ」



(なんだこれ?なんだコレ?何だこれ?何だコレ?ナンダコレ?どういう事?どういうこと?ドウイウこと?どういうコト?わけがわからない、男の話も、今の状況も、全部ぜんぶゼンブ!!訳が分からない)



 呼吸が暴れ苦しくなった


「北大路君!しっかり!呼吸を整えるんだ!ゆっくり!ゆっくり!息を吸って」


「北大路さん大丈夫だからね、先生の言う通りに」


 苦しさから逃げるように、先生と看護師の言う事を聞いた


 




 ボクは暴れた呼吸を落ち着かせ、何とか保った


「ごめんよ、北大路くん。それでも君は理解しないといけないから、頑張って聞いて欲しい」


 男の声に小さく頷いた


「君の家は通常の火事とは全くの別物で、火が付くとすぐに跡形も無く燃えたんだ。それこそ一瞬で」



 何を言っているのかわからない。話してる内容よりボクはさっき聞いた話を思い出していた


「事件の詳細は既に分かっている。北大路くん、火事から何日経ったか分かるかい?・・・北大路くん!」


 ボクを呼ぶ声に戻された


「はい、え!なんですか?」


「いいかい?火事から何日経ったか分かるかい?」


「え?き、昨日じゃないんですか?」


「3日だよ。君は3日間眠っていたんだ」


「え?そうなんですか!?」


「あぁ、だから今回の件、既に犯人も分かってる」


「犯人?え!?火事は事故じゃなくて誰かが火を付けたって事ですか?」


「そうだ。北大路くん、鳳仙大我くんを知っているよね?」


 なぜ大我の名前が出たのかボクには分からなかった


「君の家に火を付けたのはその鳳仙大我くんなんだよ」



 男の言葉に大我が火を出していた記憶が蘇る


「大我は"火"を出せるようになってたんですが、何か関係があるんですか?」


「知ってたんだね。その"能力"で君の家を燃やしたそうなんだ。もっとも、ご両親を殺害する気は無くて、、ただ君にイタズラをしようとしただけらしいんだ」



 大我が燃やした、大我が火を付けた、大我が殺した、、


「なんでなんだよ!!アイツ、、くそ、、ふざけんなふざけんなフザケンナフザゲンナ゙ッ!!!!捕まえろつかまえろ捕まえろ!!!!死ねしね死ね死ねシネッ!!!!」


 抑えていた感情が溢れ出した。そして風船が割れたように爆発した


「落ち着いて!北大路くん!話を聞くんだ!!」


「なんで、なんで、、なんでなんだよっ」



 "パンッ"


 頬に痛みが走った、男の作った痛みで我に返った


「申し訳無い。だけど最後まで話を聞いて欲しい」



 痛みと言葉で制止され、破裂した物を強引に押さえ込まれた


「いいかい?君が眠っている間も日本、世界は変わったんだ。本来であればイタズラであろうと鳳仙大我くんは重罪人。放火、それも殺人まで付いてくるんだから。だけどね、、変わったんだよ、、君は"能力"についてのニュースを知っているかい?」


「え?あ、、はい。世界中で能力を使える人が出てきてて、日本も能力について色々研究とかするみたいな、、」


「そう、日本では今、能力の可能性を極めて重く考えているんだ。そしてそんな時に出た鳳仙くんの放火事件。政府は鳳仙くんの能力を知って申し訳無いけど喜んだんだ」



 ついていけない、喜ぶって放火して喜ぶって何を言ってるんだ?ボクの顔に疑問、困惑が見られたのか男は補足した


「家1軒を一瞬で灰にできるほどの"力"。もちろん火を出す以外にも同等かそれ以上の可能性が能力には秘められている。政府からすれば国力増加の為にも、さらに研究して他国の上をいきたいと思うのは自然だろ?」



 話の結末はわからないが、ともかく喜んだっていうのは理解した。理解したくもないが



「それはわかりました。それで、結局ボクに何を言いたいんですか?」


「鳳仙くんは無罪、今回の件は不幸な事故ということで片付けられたんだ」


「は!?、え?、、なんで?どうして?大我は犯罪者なんですよね?重罪人だって言ったじゃないですか!!」


「確かに言った。だが、こうも言った。世界は変わったんだと。ニュースを知ってるなら覚えてないかい?能力次第では政府から特別待遇があるって話を・・まさに今回がそうなんだよ」


「そんな、、人殺しを許すなんて、犯罪を認めるなんてどうかしてますよ!!」


「だから変わったんだよ。元々、偉い人は悪い事をしても捕まらないとかって話を聞いた事無いかい?それが能力者にも適応されるようになっただけなんだよ」


「そ、そ、そんな・・・」


「申し訳ないけど、君にはどうする事も出来ないよ。当然私達もこれ以上の事は出来ないしね。君の住んでいた家の土地や、ご両親の遺骨等については親戚の方に任せているから、君も元気になったら連絡してお世話になりなさい。これは親戚の方の連絡先ね」


 男は病室の机にメモを置いた


「あと、これは政府からせめてもの償いだそうだよ」


 男が指差した方向には服とお金が置いてあった


「病室についても君が元気になるまでは居て良いって事になってるからしっかり休んで、元気に生きていくんだよ」


 それだけ言い残して男は立ち上がり、病室を出て行った



「では北大路君、我々も失礼するから何かあれば何時でもナースコールを押するだよ」


 続けて白衣を着た先生と看護師の人も出て行った。静かになった部屋の中でボクは1人ベットに座っていた



 怒涛の展開に頭がついて来ていない



「父さんと母さんに話せなかった、な・・・」



 自然と涙が溢れる出て来た。そして河川敷での事を思い出した



「もっと早くに、、話してれば良かった、、そうすればあの日、河川敷に行かなかったかもしれないのに、、死ぬなら一緒に死にたかった、、ごめんなさい、、ごめんなさい、、、ごめんなさい、、、、ボクが大我にいじめられてたせいで・・・」



 後悔、懺悔、絶望、苦痛


 幾多の感情が、涙とともに再度溢れ出た


 幾多の記憶が、感情とともに溢れ出た




 そしてボクはその波にのまれた




 やがて、波が引くように、涙が枯れるのに合わせるように日が沈み、夜になり、溢れたモノは落ちていき


 消えていった・・・








「大我、、そしてそれを認める、、ふざけるな、ふざけるな、ふざけんな!!!!父さんと母さん、、"オレ"の、、、全てをぶつけて絶望させてやる!!!!」


 伸ばした手が月明かりに照らされた。その影はまるで・・・











 病室で身支度を済ませている時、声を掛けられた


「とおるくん!いよいよ、今日退院だね」


 声をかけてきたのはお世話になった看護師の女性だ


「えぇ、今日までお世話になりました」


 そう言って"オレ"は頭を下げた


「まだ居てもよかったのよ?」


「いえ、1ヶ月ぐらい居ましたから、それにいつまでもここにいる訳にはいかないですから」


「そぉ?元気でね」


「はい、ありがとうございます」



「とおるくん、あのね?元気になったみたいだし、今なら言ってもイイかなと思って言うけど、本当に、、変な事考えちゃダメよ!?薄々気づいていると思うけど、とおるくんがここに来た時、その、、左眼や、身体を診させてもらったのよ」


 看護師の女性は申し訳なさそうに言った


「ですよね、、そりゃ病院ですし、診てると思ってました」


「いい?学校から夏休みは例年通り8月までで、9月から新学期って知らせが届いたけど、ちゃんと親戚の方の所へ行って良く考えるのよ。とおるくんはまだまだこれからなんだから幾らでも始め直せるんだから」


「はい、わかってます」


「よろしい。じゃあ、本当にさようなら!何かあったらまたいつでも来ていいからね」


 そう言うと微笑みながら病室を出て行った



「・・・行くか」


 身支度を済ませると、オレは病室を出て病院を後にした



 (オレはあの日から変わってない。あの日生まれ変わったから)



 カバンを肩にかけながら、駅の方へと歩く、あの日から1ヶ月ぐらい経過し、今は8月初めだ


 外の暑さはピークに達しているが、暑いとは思わなかった。歩いている最中、オレはあの日から今日までの事を思い出していた。病室で目を覚まし、父と母、家、大我の事を聞いたあの日から・・・



(この1ヶ月の間に世界は大きく変わった。世界中で"能力者"が次々に現れ、"法"が、"価値観"が、"常識"が、全てが変わった。日本では連日、能力者についての話題や、能力研究の成果がニュースで流れていた。能力者の出現で治安は悪くなったが、それ以上に多くの利益が生まれていた。その為、政府は極めて悪質な能力使用以外は原則罪には問わない事を決め、さらに能力次第では、いかなる場合も罪には問わない。その代わり政府に協力する事を義務付けた。当然反対意見は凄まじく、一時デモなどにも発展したようだが、能力によるエネルギー問題や、国際問題の解決が見込めると分かるとすっかり反対意見は影を潜め、そればかりか能力者を神や使い、新人類などと崇める人まで出てくるようになった。能力を発現出来るのは大体、10人に1人程度とされ、発現出来たとしても9割以上の人間は、ライター程度の火を出すなどがせいぜいで、それ以上に能力を強くする事も出来なければ、最初に発現した能力以外、身に付けることも出来ないのだという。また政府は能力研究の中で、10代後半が発現する事、能力に感情などの"要素トリガー"が関係していることから能力を総称して "センシティブ"と名付けた。そして"能力センシティブ"には、3つの要素が関係していると発表した。



 ・1つ目 "経験ペリエンス"




 ・2つ目 "想像力イメージ"




 ・3つ目 "感情グリード"



この要素には才能等も強く関わっており、10人中9人は3つ合わせても能力は発現せず、逆に優れた者は1つでも発現させ、複数でそれをより大きな力にし、さらに多数の能力を使いこなせるのだという。能力者は能力を発現させる上で、人それぞれ1つ強く作用する要素があり、他2つは足りない部分を補う役割になっているという。作用する要素の違いからそれぞれ



 ・"見聞けんぶん系"能力者 経験が能力発現に強く作用



 ・"幻影げんえい系"能力者 想像力が能力発現に強く作用



 ・"心緒しんしょ系"能力者 感情が能力発現に強く作用



に分けられた。そして最後に、能力者に合わせて新規で様々な施設等が作られ始めた。能力者を育てる専門の学校など、、)



「今はこのくらいか」


 そう言いオレは歩を進めた・・・






 序章完結!!


 読んで頂きありがとうございます。是非次話も読んで頂けると幸いです。また、続きが気になる!面白かった!など思って頂けましたら"評価"、"ブックマーク"などして頂けると大変嬉しいので良かったらお願いします。


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