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第25話 戸惑い



 北大路と真田を連れて桜田先生は居なくなり、他のクラスメイト達は言われた通り教室で待機していた


 クラス内では、それぞれが2人の勝負を見て思った事を口にしていた


 士部崎は悲しく下を向き


 白里はそんな士部崎を心配そうに見ており、烏藤は何も言わず静かに座っていた




 ガラガラッ


 教室の扉が開き桜田先生が入って来た


 クラス内の視線が桜田先生に向いた


「えー待たせて申し訳なかった。先程、北大路君と真田君の処遇が決まった。2人は今日1日、寮にて監視付きで過ごしてもらう事になった。夕方以降2人の話を聞いて問題無いと判断出来れば明日からまた来てもらいます」


「先生〜いいですか?」


 壬生が手を上げた


「何だ?壬生」


「北大路と真田は何でそうなるんですか?2人が闘うのは先生も認めてたと思いますし問題無いんじゃないですかー?」



 壬生の質問にため息をつきながら桜田先生は答えた


「はぁ〜、確かに認めはしたがあの2人は明らかにやり過ぎだ。どちらかが大怪我をしてもおかしくなかった。これでも問題無かったと言えるか?」


 桜田先生の言葉は2人の勝負を見ていた者なら納得の内容に、壬生もこれ以上は何も言えなかった


「それと・・・士部崎さん」


 桜田先生の声に士部崎は少し驚きながら小さく答えた


「は、はい・・」

「貴方の行動は一歩間違えれば、どうなっていたか分からない程危険なものでした。2人を心配していたのは分かりますが、先ずは自分の安全を考えなさい」



 士部崎は下を向き震える声で小さく返事した


「わかり、、ました・・・」


 その様子を桜田先生は悲しそうに見ていたが、すぐに切り替え話を続けた


「それと烏藤君!君の咄嗟の判断は実に見事だったよ。お陰で士部崎さんが巻き込まれずに済んだ。ありがとう」


「別に、俺は出来る事をしただけですから・・」


 烏藤はそっぽを向きながら答えた


「白里さん、貴方も士部崎さんをよく止めてくれたわ。ありがとう」


「いえ、私はみゆちゃんが心配で抱きつくしか出来なかったですし」


 白里にいつもの元気は無かった


「それでも、貴方の行動で士部崎さんは救われたのよ」



「まなみ、ちゃん。その、、ありがとう、、烏藤くんも」 


 士部崎はどうにか笑顔を作り喋った


「・・・!?うん、どういたしまして!」


「・・・・・」



 白里も何とか笑顔で返した


 烏藤は無言のまま左手を上げて返した


 


「その、、僕もいいですか?」


「ん!?どうした弓ヶ浜君」


 クラスの視線が士部崎達から弓ヶ浜に移った


「桜田先生にお聞きしたいのですが、どうしてあの時紫苑さんに壁を創らせたんですか?」


 弓ヶ浜の言葉にクラスメイト達は疑問を持った


「暁斗〜それがどうしたんだよ。別におかしく無いだろ」


 壬生が弓ヶ浜に質問した


「確かにね、おかしな所は無いよ。ただ、、紫苑さんなら壁を作るよりもっと確実に真田くんの動きを止めれたんじゃないのかなって思ってさ」


「そりゃ出来るんじゃないか?でも真田の動きだけを止めてもしょうがないだろ!北大路だって居たんだし」



「「「「「・・・!?」」」」」


 壬生の言葉にクラスの何人かが反応した


「そうだね。北大路くんも居たから結果的には壁を創ったのは正解だった。けど、、あの時北大路くんも止めないとマズイなんて君は思ったかい?」


「!?」


 壬生も遅れて違和感に気づいた


「北大路くんも"能力センシティブ"を使っていたから止めた方が良さそうとは思ったかもしれない。けれど僕があの場で先ず止めなければいけないと思ったのは真田くんの方だった」


「確かに、、北大路の能力は真田には効いていなかったもんな」


「そう、、あの場でこれから北大路くんが真田くんを危険にさらすと思っていたのは・・・桜田先生、貴方と士部崎さんの2人だけだった」


 弓ヶ浜の言葉を聞いてクラスの視線が士部崎と桜田先生に集中した


「士部崎さんは北大路くんを止めようとしていましたし、先生は2人とも止めないとマズイと思ったから紫苑さんに壁を創らせたんですよね?」


 弓ヶ浜の質問にまたため息をつきながら桜田先生は答えた


「はぁ〜そうだ。真田くんだけで無く北大路くんも止めないとマズイと思い、2人を守る為に壁を創らせた」


「やっぱりそうなんですね。では何故、北大路くんが真田くんを危険にさらすと思ったか教えて下さい」


「悪いがそれは教えられない。他に聞きたい事が無いのならこれで話は終わりだ。授業を始めよう」


 桜田先生が無理やり授業を始めようとしたのでクラスから不満が湧いた


 その中で再度弓ヶ浜が喋り出した


「申し訳ありませんが、聞かない訳にはいきません。もし先生が話して下さらないなら士部崎さんに聞きます。彼女も理由を知っている筈ですので」


 そう言って弓ヶ浜は士部崎を見た


「!?」


 士部崎は怯えて下を向いた


「いい加減にしろ!弓ヶ浜、お前には関係の無い事だ」


「そんな事ありません!僕達は彼のクラスメイトです。このままでは正直仲良く出来ません」


 桜田先生が大きな声を出すとそれに合わせて弓ヶ浜の声も大きくなった


「暁斗の言う通り北大路があんな事出来るとは思わなかったしー、真田と同じぐらい仲良く出来ないかもな」


「真田さん程とは言いませんが、わたくしの"忠実な執事セバス"を貫いて傷付けるほどだと確かに怖くて余りお近づきにはなりたく無いですわね」


 壬生に続けて椎名も弓ヶ浜の意見に乗っかった


 それに続く様に何人か同様の意見を言った。その光景に士部崎は涙した



「や、止めてください」


「「「「「「「!!!?」」」」」」」


「み、みゆ、ちゃん!?」


 士部崎が突然大きな声を出した


 僅かな時間ではあるが、士部崎と一緒にいたクラスメイト達からするとその声は意外でしかなかった


「き、北大路くんは、、みんなが、、思うような、人じゃ、ありません」


 涙を流して訴える士部崎にしばしクラスは静まり返った


「では教えて下さい。士部崎さん、、何故あの時貴方は北大路くんを止めようとしたのかを・・・」


 涙を拭いて弓ヶ浜の方を真っ直ぐ見て士部崎は話し始めた


「私にもよくわからないです」


「「「「「「「!?」」」」」」」



「分からない訳無いじゃないか。現に貴方は北大路くんを止めようと部屋に向かった訳だし」


 弓ヶ浜は士部崎の言葉に反論した


「あの時は北大路くんを止めないと真田くんが危ないと思ったので・・・でも、北大路くんは本当は誰かを傷付けるような人じゃないんです!信じて下さい!」


 士部崎はそう言って頭を下げた


 士部崎の必死な訴えに大半のクラスメイトは何も言えなかった



 しかしそれでも弓ヶ浜は喋り出した


「士部崎さん、君が北大路くんを心配する気持ちは伝わったよ。でも、、それでも僕は教えて欲しいんだ。同じクラスの仲間だから」


 弓ヶ浜は士部崎を見た


 その眼に士部崎は若干動揺した


「えっと、その・・・」


 士部崎が口ごもっていると桜田先生が話し始めた


「弓ヶ浜、そのくらいにしてやれ。士部崎は本当に何となくそう感じて動いただけだよ」


 その言葉に弓ヶ浜は納得していない顔をした


「は〜、、士部崎さん、貴方と北大路くんがこの学園に編入してくる以前の話をしても良いかしら?」


「!?」


 士部崎は驚き気まずそうな顔をした


「話した結果、彼らがどう思うかは分からない。だけど、、話さなければこれ以上前には進めないと私は思うわ」


「・・・・・」


 士部崎はしばし下を向き黙っていた


「みゆ・・・」


 静かに時間が過ぎていった


 やがて士部崎は顔を上げ桜田先生の方を向いて答えた


「分かりました、お願いします」


 その顔は以前とは異なり、確かな覚悟が見て取れた


「そう、、分かったわ」



 桜田先生も士部崎の顔を見て安心した様に話し出した


「詳しくはプライバシーに関わるので話せないけど、それでも良い?」


 桜田先生は弓ヶ浜の方を向いて言った


「はい、お願いします」


「じゃあ話すわね。先ず北大路君の能力、あれは彼が元々発現した能力では無いわ」



「「「「「「「!!!?」」」」」」」



 その言葉にクラスはざわついた


「ちょ、ちょ、待ってよ先生、いきなり訳わかんねーよ」


「壬生、少し黙ってろ」


 話を遮った壬生に烏藤が言った 


 その声に再びクラスメイト達は桜田先生の方を向いた


「私も詳しくは知らないのだけれど、彼の能力は元々"雷"を出すモノでは無く、"黒い剣"などを出すモノだと聞いたわ。そうよね?士部崎さん」


「はい、編入してからは使ってなかったですが、北大路くんは黒い剣を使ってました」


「士部崎さんも知らないのね。北大路君、その能力使えなくなったのよ」


「え!?」


「「「「「「「!?」」」」」」」


「使えなくなった代わりに今の能力が使えるようになったの。詳しい事は彼のプライバシーに関わるから私からは話せないわ」


「ちょっと待って下さい。その事とこれまでの話がどう関係するんですか」


 今度は弓ヶ浜が話を遮った


「・・・"心緒系しんしょけい"」


「「「「「!!!」」」」」


 紫苑が口を開き、発した言葉にクラスの何人かは察した


 そしてそれは弓ヶ浜もだった


「そういう事か・・・」


「おいおいどういう事なんだよ。紫苑ちゃんもいきなり心緒系って何だよ」


 壬生は分からず声を出した


 声は出さなかったが壬生の様に分かっていない者も多くいた


「何人か分かった様だが北大路君は"心緒系しんしょけい能力者プレイヤー"だ。知っての通り心緒系は"感情グリード"を主な"要素トリガー"にしている為、爆発的な成長をする一方急に能力が使用出来無くなるのが特徴だ」


 桜田先生の言葉に更にクラスの多くが気づいた


「マジかよ!!知らなかった・・」


 壬生は初めて聞いたかの様にテンションを上げた


「壬生!先日授業した筈だぞ」


 桜田先生が壬生を睨んだ


「す、すいません!忘れてました・・・」


 壬生は気まずそうに答えた


「まぁいい。脱線したが続きを話そう。何故、心緒系が爆発的な成長をするのかについては、感情を要素にしている為、想いや気持ちの昂ぶり何かが能力に影響するからとされている。今回の件がまさにそれだ。そして士部崎さんは以前にも似たような場面に遭遇していたので、北大路君を止めようとしたんだ。そして私もその事を知っていたから止めようとした・・・これで納得できたか?」


 クラスの多くはなるほどと納得していたが、弓ヶ浜はまだ納得していなかった


「先生や士部崎さんが北大路くんを止めようとした理由は分かりましたが、まだどうして能力が急に成長するほど気持ちが昂ぶったりしたのかが分かりません。僕達の中にも心緒系はいますが、急に能力が成長するなんて経験をした人は殆どいない筈です」


 弓ヶ浜の意見に他何人かも同調した。そしてその様子に桜田先生は嫌な顔をしながら話を続けた


「これ以上は本当にプライバシーに関わるから私からは言えない。どうしても知りたいなら北大路本人から聞け」


 桜田先生の言葉に弓ヶ浜はこれ以上何も言えず、この話は終わった




 その後は普通の授業が行われて北大路と士部崎の編入1日目は終わった






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