表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後に魔王と呼ばれる元イジメられっ子  作者: ちょむろう
序章 絶望と希望が混ざり合う
2/29

第2話 雲散する剣と手にした刃



 翌朝、学校へと向かう足取りは重いが、不思議と前よりは軽く感じた晴れた。空が後押ししてるようにも思えた


 学校へ着き、クラスに入ると違和感を感じた


 "クラス全体"、もっと言うならクラスに入るまでの"学校全体"、登校してくるまでの街の"雰囲気"、全てがボクの知っている一昨日までの雰囲気とは別物であった


 休んだ次の日、クラスの雰囲気に置いていかれているような感覚を味わった事はあったが、今回のそれは今までとは別物・・


 引っ越して転校してきた様な感覚だ


(まぁ転校した事はないけど・・)


 とにかく、、今まで味わったことの無い感覚にボクの気持ちは浮足立った



 席に座り先生が来るのを待つ間もボクはソワソワしていた



 けど・・・




 ボクは思い知らされた







 ボクの感覚、思い、全て妄想で実際は・・・




 "ガラガラ"


「落ち着かないだろうが、席につけ〜朝礼を始めるぞ!」


 声に反応して、教壇の前にいる先生を見た。歳は30後半の小太りなおじさん、綺麗にはしているが、清潔感は余り感じられない



「朝礼と言ったが、初めに言っておく!突然だが、今日から夏休みとする事が昨日決まった。これ以降授業も無いので各自下校するように。また学校の開始は未定の為、追って連絡をする」


「いぃぃよっっしゃぁぁ〜〜〜〜」


 クラスから大勢の声が響き渡った


 同じような事がどのクラスでも起こっているのだろうか、色々な所から声が上がっている


「静かに!!まだ伝える事がある」


 先生の声にクラスの歓喜が収まったが、声は無くとも歓喜の雰囲気に満ちている。状況が理解出来ないボクはただただ把握する為に、先生の方を見た


「なぜこのような話になったかだが、、それは君たちも知るように昨日の件が原因だ」



(・・・・・!?)



「おっ!?北大路は昨日休んでたな。良くなったか?」


「・・はい、大丈夫です」


先生の問いかけに動揺しながらもなんとか返した


「そうか、なら良いんだ。心配してたからな!気をつけるんだぞ」



(よく言うよ。自分の保身しか考えてないのに・・・)



「話を戻すぞ。北大路は休みだったから知らないだろうが、昨日鳳仙くんの手から"火"が出たんだ」



(は!?)


 

 先生が何を言っているのか理解出来無かった


「いきなり"火"を出したもんだから鳳仙くん含めてクラス中が大パニックになったな」


 クラスからはその時を思い出したかの様に笑い声が聞こえた。大我はその中でもひときは大きく笑っている



(何だよそれ、、何がそんなに面白いんだよ・・・)



「ごほんっ!」


 先生の咳払いにクラスの視線が教壇に向いた


「火に関してはすぐに消えて何事も無かったが、大事なのはこの後だ!昨日君たちを帰らせた後、我々教師もニュースで確認して。それと同じようなタイミングで政府から学校に電話が来たんだ」


(ニュースって、、確か昨日琴莉もそんな事言ってな)


 ボクは普段からテレビも見ないし、それに昨日はスマホも見ていなかった。琴莉の話を聞いた時に確認をしていれば良かったと後悔した


「どうやら政府はこの事を事前に知っていた様なんだよ!それで、ウチの学校以外にも全国的に同様の対応をする事が決定したという訳なんだ。それが最初に話した夏休みの件だ。ニュースで知っていると思うが、この休みを生かせるかどうかは君たち次第だからな!それを意識して過ごすように」


 そう言って先生は教室から出て行った。クラスでは皆、声を出して大盛りあがりである。唯一話についていけてないボクだけを残して・・・






「と〜お〜る〜〜ッ!」


 ボクを呼ぶ声に"ビクッ"と身体が反応した


「お前その様子だとニュースも知らず、訳分かんないって感じだなぁ〜。昨日はお前が居ないから試す事が出来なくて寂しかったよ」


 後ろからそう言われながら近づいて来る足音を感じてボクは振り返った。"大我"、"竜哉"、"綾"、"琴莉"の4人がボクの机の周りに来た


「コイツバカじゃないの〜。まぁー知った所で何も出来ないでしょうけどね」


「確かに透みたいな奴には関係のない話かもな」


「おいおい、お前らそんな事言ってやるなよ。何も知らずに実験されるのは可哀想だろ」


「大我ってば、やっ〜さしぃ〜」


「だろ?琴莉、説明してやれよ」


「はぁ!?何で私が」


「幼馴染からして貰った方が透の奴も喜ぶだろうと思ってなぁ」


「しょうがないわね。アンタ、ホントにニュース見てないの?」



 4人のやりとりを緊張しながら聞いていたボクは琴莉の問いかけに動揺した



「え!?う、うん、見てない」


「、、そう。先生の言っていた大我が手から"火"を出したっていうの、、実は世界で沢山の人が出来る様になっているのよ」



(手から火!?世界!?)


 どういう事なのか訳が分からない


「こういう事だよ」


 ボッ!!!


「え!!?」


「いいね!いいねぇ〜昨日は俺自身も驚いたから気づかなかったが、改めてそういう反応されるとテンション上がるな」


 大我の立てた中指に灯った火を見てボクは混乱した。


(意味が分からない、意味が分からない、、どういう事?何が起こってるんだ?)



「どう?理解した?」


 琴莉の言葉に我に返った。混乱しているが、、それでも起こった事は理解した。いや、、しようとした


「う、うん」


「なら続きを言うわね。大我は"火"を出したけど、厳密に言うと"火"以外も出せるし、ありとあらゆる事が出来る様になったのよ」


 火を出せるようになった事は理解した。けど、、正直、琴莉の言っている事の意味は理解出来無かった


「昨日大我が"火"を出した後、私たちは家に帰されたの。その時は理解出来無かったけれど、ニュースを見て理解したわ。いい?今世界では10代後半の人が大我の様に"火"を出せる様になったりしているの。日本では一昨日初めて現れたそうよ。もっとも、世界では1週間ぐらい前から現れ始めてたみたいで、日本の政府もその事は知っていたみたい。研究者によればこの"能力"は"イメージ"や"感情"、"経験"何かに作用して使える様になるらしいわ。詳しい事は、まだまだ研究段階みたいだけど。実際、大我にどうやって火を出したか聞いた時は、タバコが吸いたくなってライターから火が出る瞬間をイメージしてたとか言われたしね」


 琴莉の話を聞いて大我達は笑った


「まぁ〜まじで火が出るとは思わなかったけどな」


「それで日本としては10代後半、とくに高校生を中心に研究の意味も込みで、学校は休みにするからいろいろしてみろって訳。能力次第では政府から特別待遇何かを約束するって話も出てるし、世界では大我の火なんかよりもっととんでもない能力が使える人もいるみたいよ」


 (何だよ、、それ・・・)


「うるせぇ〜ここからすげぇ~能力が使える様になればいいだけだろ?」


「だな、というかニュースとか先生の話ってそういう事だったのか」


「竜哉くん、、アナタも理解してなかったの?」


「なんとなくはしてたさ。琴莉の説明でより理解出来たってだけだよ」


「もぉ~やめてよ、恥ずかしい。彼女の私までバカだと思われるじゃん。でも確かに分かりやすかった!流石琴莉」


「まぁ〜いい、理解したか透」


「う、うん、なんとなく・・・」


 大我の問いかけになんとか声を出して答えたが、内心それどころでは無かった



(変わった、想像もしてなかった、、いや、むしろ想像してた様に・・)


 すぐ理解しきる事は出来なかったが、大我の火に琴莉の説明に心臓が高鳴った。それほどにまでボクの身体は反応していた


 現実逃避だと言い聞かせていた妄想が、目の前に広がった様に思えた


「でだ、、透、ここからが本題だ。昨日は理解する前に家に帰らされたし、お前が休んだから能力を試す事が出来無かったんだよ。だから今日は能力をお前で試させてくれ」


(は!!?)


 琴莉の話も理解出来ていなかったが、大我の話も訳が分からない


「竜哉、透を後ろから抑えてくれ」


 大我の言葉に反応して咄嗟に席から立った。その瞬間、竜哉に後ろから両手で抑えられて動けなくなった


「え!?どどどういう事?」


「おい!じっとしてろ」


 竜哉の言葉に緊張して身体が固まった


「よ〜し、じゃ早速」







 腹部から衝撃が走った


「いぁぎゃ〜〜〜〜ッ!!!!」


 言葉にならない声が出た


 それほどまでの衝撃


 痛いのか、熱いのか、冷たいのか、何がなんだか分からない


 けど、とにかく耐え難い衝撃



 腹部を見るとそこには焼け焦げてシャツに穴が空いていた


「へぇ~やっぱ物だけじゃなくて人も焼けるのか。昨日家で物が焼けるかは試したが、出してる俺が熱くないから気になっててよ」


 大我を見ると人差し指を立てて、火を出している


「すっげぇ~カッコいいな」


 後ろで押さえていた竜哉が起こった事に興奮していた


「さらに、、昨日試した通りなら」


「あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙〜〜〜〜」




 あまりの衝撃にボクは力なく、失禁した


「うわぁ~きたねーコイツ漏らしてやんの」


「おいおい勘弁しろよ。付いたらどうしてくれんだよ」


 綾と竜哉が話しているが、そんな声は届かない。それぐらい今起こった衝撃で真っ白になっている


 それこそ失禁した事が分からないぐらいに


「思った通り、"経験"がかなり重要らしいな」


「思った通りって大我、何か知ってたのか?」


「あぁ、昨日試した時に1度燃やした後、次に燃やしたら前よりすぐに燃えたんだ。だから"経験"する事でより"イメージ"が鮮明になって火力が上がると思ったんだよ。見ろよ」


「すっご〜いこっちの火傷、炭みたいになってる」


「確かに、2回目の方がはるかに火力が強いわね」


「あぁこれが俺が発見した1つ目だ」


「1つ目ってまだあるの?」


「むしろ2つ目の方が重要かもな。おい!"士部崎"、"小鳥遊"、竜哉の代わりに透を抑えろ」



 大我が叫ぶと、2人がオドオドしながらボクの方へと来て竜哉の代わりに腕を掴んだ


「ご、ごめん、でもしょうがないんだ。鳳仙くんに言われたら僕は逆らえない」


「ごめん、、なさぃ、、、」


 何を言われても今のボクはそれどころでは無かった。更にこれからまだ何かされるという現実に襲われてボクは絶望した


 手にしていた"きぼう"はあまりにも無力なものだと感じた


 さっきまで輝いて見えたそれは光を失い

雲散した・・・






「ーーーご〜い!!」


「ーーーじか、まじか!」



 力ない瞳でボクは前を見た


 そして、、震えた






 大我、竜哉、綾の3人がダーツの矢の様なモノを生み出していた


「よし、出来たな。これが2つ目だ」


「おい、大我!何で俺、"シャフト"みたいなの出せるんだよ」


「詳しくは説明出来ないが、俺の火とニュースから、これなら恐らく出来るだろうと思ってな」


「おいおい、それじゃあわかんねーよ」


「お前ら昨日、自分も火を出そうとか試したか」


「もちろん」


「うん」


「そうね」



「出せたか?」


「ダメだった」


「俺もだ」


「無理だったわ」


「理由はお前らの経験とイメージが足りなかったからだよ」


「なるほど。大我はタバコ吸うから経験も、イメージも私達よりあるって事ね」


「あぁ、だがここからだ。俺は昨日火以外も出そうとしてみたが何も出来なかった。それこそこの矢もな」


「ちょっと待ってよ。じゃあ何で今は出せてるの?それに私達も」


「それはイメージや経験、感情の他に重要な要素があるからだよ」



 大我の言葉にクラスの生徒達も驚きを隠せず動揺した


「それって?」


「"状況"だ。もっともイメージとか程、重要では無いと思うがな。少なくても"状況"はイメージ何かを助ける事が今分かった」


「どうしてそう思うの?」


「俺が矢を出せる様になって竜哉達も出せてるだろ?」


「私は出せていないけどね」


「それはまた調べようぜ」


「そうだよ琴莉、気にしないで」


「じゃあそろそろ実際に使ってみるか。火と同じなら使えば使うほど能力が向上するだろうしな」


 震えながら聞いていたボクの方へ視線が向いた。これから起こることをボクは知っている


 毎日味わっていたのだから


 だが、今のボクにはとてもじゃないが耐えられない。さっきまであった剣は綺麗に無くなり、ボクには今までに無い程の"ぜつぼう"が向けられていた


(もう無理だよ、、こんなの・・・)


 気づいたら抑えていた2人を振りほどき走り出していた


「おい!!ふざけんな」


 後ろで声が聞こえるが、そんなの今は気にならない。とにかく走る事だけに集中していて何も考えられない


 学校を出てもひたすらに走り続けた



 しばらくして河川敷の橋の下に来た。ここは通りも悪くすぐにはバレないと思ったからだ



 とにかく逃げたかったこの現実から。現実は自分の夢みた世界になった



 けど、、より絶望が増しただけだった。突き付けられた刃に静かに、、涙した・・






【新キャラ設定】

士部崎しぶさき みゆ」 

 肩に掛かる程度の黒髪

 年齢の割に幼児体型でメガネを付けている

 性格は内気で大人しい

 一人称は"私"


小鳥遊たかなし 桜騎ろうき

 主人公達と同じクラスメイト

 肥満体型にメガネであり、クラス内カーストは主人公を除けば最も低い

 一人称は"僕"



 読んで頂きありがとうございます。是非次話も読んで頂けると幸いです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ