第1話 絶望の刃と希望の剣
前作を読んで下さっていた方、登場人物や流れは変えていませんが、所々変更点がございます。もう1度読んで頂けると今後のストーリーが分かりやすいと思いますのでよろしくお願いします。また、新規で読んで下さる方へ、今回2話3話と連続である程度投稿致しますので、是非この機会に読んで頂けると幸いです。
後書きに新キャラ等の情報を書きますの是非読んで頂けると幸いです。
現代で魔王と呼ばれた元イジメられっ子始まり始まり〜
「トール!!もう止めて!!!」
「どうして、、なんでこんな事に・・」
「魔王よ!!これで全て終わりだ!!」
「「「「「・・・・・」」」」」
(終わり・・か)
「そうだな、、これでようやく終われる・・・」
(ようやく、、ようやくだよ・・・父さん、母さん)
――――が、、数多の人間へと迫ってく
「じゃあね・・・絶―――」
子どもの頃・・誰しも1度は想像したはず
魔法が使えるようになったら、ヒーローになりたい、悪者を倒して英雄、勇者になりたいと・・・
だが、、多くの者が次第に自然に想像しなくなる・・・
理由は様々あれどそれが普通
もしまだ想像しているのなら
それは、、子どもの時とは異なり
ただの、、現実逃避だ・・・
雨音だけの部屋でボクは1人、遠くを観ながらネットの何処で観たのかも覚えていない言葉を思い出していた
いつもの日常、いつもの現実、いつもの絶望・・・
クラスの休み時間、後ろのスペースで1人の学生が上半身裸で、壁に背中を当てて立っていた
そしてその学生の正面には4人が立っており学生の身体を的にダーツをしていた
「と〜るぅ〜動くんじゃあねーぞ!!動くと今度は右眼も無くなるぞ!」
「大我たいがさ〜動かなくても狙うじゃん」
「確かにな!そう言う竜哉りゅうやこそ気をつけろよ!お前は力が強すぎて危ないからな」
「わかってるよ、、ってかどの口が言ってんだよ!」
「ホントにわかってるの?あーし、飽きてきたし〜明日は別の事で遊びたいんだけど」
「そうね、透は同じ事すると慣れてきて、リアクションが薄くなるものね。左眼に当たった時は大袈裟にリアクションしていたけれど」
「確かに、あの時は笑えたわ!」
「え〜〜!竜くんってば、ひっど〜〜」
「ったく!お前らは気楽だな、あれをもみ消したのはオレだぜ!教師の弱み探して口裏を合わせさせるのも大変なんだからな」
「だからそろそろ別のゲーム考えようって事!今日はこれで良いけど!」
彼らの声が抗えない現実と、幾度と来た"刃ぜつぼう"に、、心に深く突き刺さる・・・
ボクに出来るのはただ、、我慢するだけ・・
それだけしか無いから・・・
そうしてボクは逃避する
少しでも苦痛を和らげるために・・・
(ボクの名前は"北大路きたおおじ 透とおる" 学力、運動神経、顔、全て普通の特徴らしい特徴は特に無い、何処にでもいるただの高校1年生だった。今は左眼を潰され眼帯をしている。潰れた原因は今まさに行われているこのダーツの真似事のせいである。そして正面の4人、左から"鳳仙大我"、"緑山竜哉"、"鈴木綾"、"川坂琴莉"、所謂いじめっ子だ)
("鳳仙ほうせん 大我たいが"は運動神経、学力に長け、目付きは悪いが顔も良い。絵に描いたようなクラスカーストの頂点だ)
("緑山みどりやま 竜哉りゅうや"は学力は下だが、運動神経が特に良く、部活動ではかなり期待をされているらしい。言うまでもなくクラスカーストの上位)
("鈴木すずき綾あや"は学力、運動神経ともに中から下と良くないが、顔、スタイルが良い為、クラスでの発言力を持っている。当然カースト上位であり、竜哉の彼女でもある)
("川坂かわさか琴莉ことり"は鈴木綾の親友であり、ボクの幼馴染だ。綾に負けず劣らず顔、スタイルが良く、オマケに学力、運動神経も中以上だ。そして琴莉は大我の彼女だ)
(ボクはいじめられるとは思いもしていなかった。勉強も運動も良くは無いが、でも最下位では無い、顔も特別良い訳では無いが、それでも悪いという訳では無い。現に中学ではカーストの中間ぐらいでいじめられるということはなかった。こうなった理由は、、2ヶ月前、高校入学してすぐ、琴莉が大我と付き合った為だ。幼馴染だが特別仲が良かったという訳では無く、高校入学をしてしばらくしたある日、ボクは授業中消しゴムを忘れた事に気づき、前の席にいた琴莉に借りた。琴莉と大我が付き合っている事は知っていたが、幼馴染という事で問題無いと勝手に思い、借りた結果、、授業後ボクは大我に呼び出され、、以降、、いじめられる様になった。既にクラスではカースト上位が決まっていて、クラス内では暗黙のルールが出来上がっていた。琴莉の様なカースト上位、ましてや頂点の大我と付き合っている人には、男子で話し掛けるなどして良いのは、同じくカースト上位の人だけというものだ。もちろんボクもルールの存在はなんとなく感じてはいたが、ボクと琴莉が幼馴染だという事は入学後、クラスメイトに知られていた為、話し掛けても問題無いと思っていた。でも、、問題ないと思っていたのはボクだけで、大我と周りは許してはくれなかった。ルールを破りカーストも上位では無かったボクは、いじめをきっかけに自然とカースト最下位になり、、現在に至る・・・)
イジメを受けている最中でも、何かを考えたりしている間は、現実を忘れ気が紛れる気がする
それが今ボクに出来る唯一の事・・・
「おい! おい!」
腹部の強烈な痛みが襲った
「何ぼーとしてんだよ!人間ダーツは刺さった時のお前の痛がり方で点数が決まるって言ったよな!しっかりどのくらい痛いか表現しろよ!じゃ無いとまた眼に当たるかもな!」
大我のパンチと言葉に再び現実に戻され
痛みと恐怖、トラウマで立っていられない
めまいと震え、動悸によってその場に崩れ落ちた
朦朧とする意識で、震える声を出した
「ごごごめんなさいッ!眼だけはゆるじてぐださいッ!」
それがボクが覚えてる最後のシーン
「おいおい、透の奴気絶しやがった!身体に刺さるのは平気でも流石に目玉はトラウマか」
「竜哉くん、アイツに服着せて保健室まで連れて行ってくれない?」
「は!?何で俺が!大我がやったんだから大我に言えよ琴莉!」
「大我には先生の所に行って、口裏を合わせるようにして貰わないといけないからダメなのよ」
「ちっ!そういう事か、それならしょうがねぇーな」
「おいおい!俺も動くのかよ!」
「そーよ、大我しか先生の弱みを知らない事になってるんだから」
「ちっ!わかったよ。なら行ってくるわ」
天井はどこも同じだ。だけど目に付く情報は教室ではないと言っている
「あら、気がついた?北大路君、気絶したそうなんだけど大丈夫?覚えてる?」
「あ、え!?あぁ、保健室・・」
「そう、緑山君が連れてきてくれたの」
「そう...ですか、担任の先生からテストに対してのストレスで、休み時間中に過呼吸になってそのまま気絶したって聞いたけどそうなの?」
「え?あぁそうですね、成績が悪くて、、テスト期間になると稀に近い状態になるんです。気絶したのは初めてですけどね・・・」
「気をつけてね!1人で思い悩まずに、友達やご両親、相談しにくかったら私でも担任の先生でも相談しなさいよ」
「・・・わかりました」
「担任の先生が今日は帰って休みなさいだって!カバンはそこの机にあるから」
「ありがとうございます・・失礼します」
ボクは保健室から出て学校を後にした
家に着く頃には雨が降り出していた
曇天空が思考を鈍らせ現実から逃避しろと言われてるようだった
部屋に入りベットに寝転がり窓から遠くをみていると自分の時間が止まった気がして気が紛れる
(もしも、ボクにマンガやアニメの主人公みたいな能力があれば、、少しは変わったのかな・・・。いや、ボクが持っていた所で世界が今のままなら誰かに利用されるか、捕まるか、どの道、今と大差ないだろうな...)
唐突に現実に戻され目の前が歪んだ
夜になると両親が帰宅した
当然2人はボクに会いに来た
「透〜入るぞー」
父の声に寝ながら外を見ていた身体をドア方向へと動かし起き上がった
「今日学校の先生から気絶したって聞いて・・大丈夫?その眼もそうだし、高校行き出してから透の身に色々起こってて・・お母さんもお父さんも心配なの」
「あぁ何か悩んでいる事があるなら相談してくれ!必ず助けになるから」
「いや、、大丈夫。ちょっとテストに緊張しただけだから」
「そう?それなら良いんだけど、、あれなら夏休みまであと2週間ぐらいだし休んでもいいのよ?テストも2学期から頑張れば大丈夫だし」
「そんなの大丈夫だよ・・ちゃんと行く」
「・・わかったわ。けど明日は念の為、休みなさい。いい?先生には明日連絡しておくから」
「わかったよ」
今起こっている現実を相談出来ればどれだけ楽か・・・
でもそれは出来ない
心配させたくないし
信用されなかったらつらいから・・・
そして何より自分のプライドが許さない
いじめられている事、傷つけられている事を身近な人に知られたくない
知られれば自分が壊れてしまう
今、この現実に耐えていられるのは、、このプライドがボクの支えだから・・・
ベットの上で横になりながら空を見ていた。昨日からの曇天空。相変わらず考える事は妄想じみた、夢みたいな展開、希望、現実逃避・・・
その度に我に返って、、今いる現実を思い知らされる
(それでも今日は自然に休むことが出来ただけましか)
夕方、玄関の呼び鈴が鳴る
普段なら気にもしないが、今日はなんとなく、、家が静かな事もあって玄関の方に耳を傾けた
「おーい、居るんでしょ!出てきなさい」
微かに声が聞こえる
「居るのは分かっているのよ!さっさと出てきなさい!」
聞き覚えのある声に心臓の鼓動は早まり、指先が痺れ、目の前が回る感覚がした
依然として声は続いている
震える足でベットから立ち上がり、玄関の方へ歩き出した。壁にもたれながら歩いてなんとか玄関までたどり着き、扉を開けると
目の前には川坂琴莉が立っていた
「やっと出てきたわね、あんた何やってるの?許可なく学校休んだりして」
琴莉はボクにそう言い放った
「ごごめん、母さんに休むよう言われて、、休む気は無かったんだよ!」
「・・まぁいいわ。今日はあんたで遊んでる場合じゃなかったからね」
「な、何かあったの?」
「その様子だとあんた、ニュース観て無いんでしょうね。明日学校に来れば嫌でも分かるわ。学校に来れればだけどね」
「行くよ、行くしかないから・・・」
「そう、、楽しみにしてる」
そう言い残すと琴莉は帰っていった
「ハァ〜〜」
出たときは何をされるかと頭が真っ白になったけど、、とりあえず何もされなかった事に安堵した
(ただ、、、今日間違いなく何かあったんだ!それもとんでもない事が・・・。琴莉が家に来たのは初めてなんだから)
それだけで不思議と高揚した
明日何が起こる分からないが、少なくても昨日までの日常が、現実が、変わった気がした
落ち着かない状態で夜、眠りについた
(この気持ちは何だろう...良く分からないが、例えるなら、そう、勇者が聖剣を手にした時の様な・・・そんな感じの・・・・希望・・・・・・希望の剣)
【キャラ補足設定】
「北大路 透」
黒髪に普通体型、何処にでもいる高校生
高校生入学後、髪が伸びて前髪は眼に掛かっている
左眼には白い眼帯を付けている
一人称は"ボク"
「鳳仙 大我」
切れ長の目に金髪、そして180cm近い身長
左耳にピアスを付け、制服を着崩している
一人称は"俺"
「川坂 琴莉」
スレンダーな体型に、長くキレイな黒髪
クールな雰囲気をしている
一人称は"私"
「緑山 竜哉」
180cm後半の高身長に筋肉質
髪は短く剃り込みが入っている
一人称は"俺"
「鈴木 綾」
茶髪にポニーテール、制服を着崩している
川坂琴莉よりも身長は低いが胸のサイズは上
一人称は"あーし"
読んで頂きありがとうございます。是非次話も読んで頂けると幸いです。