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『空』から来たSOS

「調べた結果、リリーの両親はこの国にはいないことが判明した。」


「そんな…パパとママいないの?」


「リリーちゃん…。」


翌朝、王座の間でリオーネの調査結果を聞いて、沈んだ様子でリリーが泣き崩れリアーナが寄り添う。


「パパ…ママ…。」


「リリーちゃん…その…君のパパとママは…。」


クスンクスンと泣き続けるリリーをエインも何とか慰めようと寄り添うも彼自身も何処か気まずそうだった。


(エイン…ずっと独りだったために妹の存在が慣れない上に、両親のこともあって…無理もありませんね。)


それもそのはず、リリーの両親はエインの両親でもあり実質二人は血の繋がった兄妹になるのだ。 


しかしエインは両親から捨てられ家族と言う概念がほぼ無かったことから、自分に実の妹がいたと言われても実感以前に妹と言う概念も知らないのだ。


おまけに暗い過去の象徴である両親のことを嫌でも呼び起こすために、その両親に会えずに泣いているリリーとどう接したら良いか分からなかった。


「しかし会えない訳では無い。リリーの両親は異世界に転移する前に別の国に移り住んでいるんだ。」


「つまりこの国にいないだけで、別の国にリリーちゃんの両親がいると言うことですか。」


「恐らくそうではないかと。」


しかし両親は別の国でまだ存命しており希望はあると教えてくれる。


「何処?何処の国にいるの?」


「調べたところどうやらアルローマに移り住んだようだ。だからいるとすればそこだろう。」


「アルローマ…私の国にか。」


(わら)にも(すが)る気持ちで居場所を聞くにラピスの故郷であるアルローマに向かったと言う。


「じゃあ、そのアルローマに行けばパパとママに会えるんだね!」


「だが、行くのは推奨出来ない。今はバリオンに向けて準備をしているところだからな。」


「そんな…やだ〜!?」


リリーはすぐさま両親と再会したいがためにアルローマにいきたかったが、国の指針は既にバリオンに向けられているため提案は受け入れられなかった。


「大丈夫だ、きっと再会出来るさ。今はまだ辛抱しててくれ。」


「そうよ、だから今は我慢して。」


死んだ訳では無いし両親にはいずれまた再会出来る。そして今はまだやることがあるため両親のことは後回しにして欲しいと説得する。


「ううっ〜…やだやだ〜!?」


だがホームシックになって両親との再会を待ち望んでいた幼いリリーは聞き入れることが出来ずに駄々をこねる。


我儘(わがまま)を言わないでくれ、この国の未来が懸かっているんだ。何としてもバリオンに行き、残る火薬の材料と銃の調達をしなければならないのだ。」

 

幼い子を説得するために柔らかい口調だったが、リリーだけの感情で国の指針を変える訳にはいかないと強めの口調で諭す。


「むぅ〜…!もういい!行こ、ゴンちゃん!」


『ギァ〜…。』


「あ、リリーちゃん!すみません、失礼します!」


さすがに強めの口調で言われたことでリリーは言い返すことが出来ず、涙目で膨れっ面になりながら王座の間からゴンと共に出ていき、それをリアーナが慌てた様子で追い掛けるのだった。


「リリーちゃん!…あの本当にダメなんですか?」


「…悪く思わないでくれ。」


リリーの様子を見てエインはリオーネに訊ねるも答えは変わらなかった。


「一刻も早く戦力を強化せねばあのモンスターはもちろん、他国との戦いに勝てないことだってあり得るのだ。」


「他の国と戦うんですか?」


魔法が使えなくなった魔法使い達のためにも銃による戦力強化が必要なのだが、相手がティラノサウルスのようなモンスターはもちろん他の国と戦う必要があるのかとエインは疑問に思う。


「悲しいことだが人間と言うのは時としてモンスターよりも恐ろしい一面を持つ。己の欲望のためなら平気で同族を騙したり殺したりする。」


人間のどす黒い本性に人生を狂わされたことのあるエインに取ってシスカの台詞は痛いほど伝わって来る。


「この異世界で我らと同じく生き残った国家がいて、邪な連中であれば他の生き残った国家を牛耳ろうと戦争を仕掛けるだろう。そのためにも戦力強化は必要なのだ。」


リオーネがいち早く戦力強化を計るのはこの異世界に適応した他の国家が、征服のためにグランドレイクはもちろん他国に戦争を仕掛けると考えていたからだ。


「人と人とが殺し合う…そんなのがリリーちゃんのことよりも大事なの…?」


「…残念だがそれが現実だ。リリーにはとても悪いがな…。」


リリーと両親の再会よりも人と人との殺し合いに備えることが大事なのかとエインは心の底から疑問に思っており、リオーネもそれを聞いて耳が痛そうな様子を見せる。


「ですが必ず合わせましょう。今は確かにバリオンに向かった方がよろしいでしょう。」


決定権は国王であるキオナにあり、リリーと両親は必ず会わせると誓うと同時にやはりバリオンに向かうべきだと指摘するのだった。


「それにしても貴様は何故そこまであの子の肩を持つんだ。」


「それは…僕が…。」


(言い難いですわよね…。)


エインが無類の優しさ持っているのは知っていたがリリーに対してはそれだけではないようにも思えた。と言うのもリリーが実妹であることはまだキオナしか知らないのだ。


「僕が…リリーちゃんの…ん?あれは?」


『クルック〜…。』


「鳩…のようですね。」


口籠っていると窓の外から胸の羽毛が赤い鳩が侵入し、王座の間を暫く飛び回った後に中央に着陸してくる。


「まったく…鳥とは言え場を(わきま)えて欲しいものだな。」


「待ってください、もしかしてその鳩は…やはり、伝書鳩のようです。」


リオーネが追い払おうとするがメリアスはその鳩の脚に手紙らしい物を括り付けられているのを見て伝書鳩であると伝えてくる。


「伝書鳩?『リョコウバト』じゃないの?」


「伝書鳩とは鳩の帰巣本能を利用して文書を届けてくれる鳩のことですわ。旅行には行きませんわ。」


伝書鳩とはこの鳩…リョコウバトの固有名詞なのかと疑問に思うも、このリョコウバトに与えられた役割のことだとキオナから教えられる。


「だが、伝書鳩は確かエルフや山林に住む者達が使う伝達手段だが…。」


「この文書…私の故郷の里の刻印がされています。」


元の世界で伝書鳩を使うのはエルフやある一定の亜人だけであり、その証拠に文書にはエルフの狩人であるメリアスの故郷の印がされていたのだ。


「内容は何ですか?」


「これは…どうやら私の故郷である『ルミナス』でモンスターのトラブルが起きたために救援を求めているようですね。」


肝心の手紙の内容はメリアスの故郷からの救援要請であり、それを読んだ彼女も故郷が危機に晒されていると知って多少なり動揺した様子を見せていた。


「と言うことはメリアスの故郷の人達は無事であると同時に危機に陥っているのですね。」


「森に住まい、自然と共に生きるエルフ達ならばこの異世界でも何とか生き残れたのでしょうが我々と違い里は壁などで守られていませんからね。」


エルフは自然環境を破壊せず共存するように生活しているためこの異世界の自然の中でも生き残れたが、グランドレイクのように国境を壁で囲われていないため同時に常に捕食者から狙われていることになる。


「そんなエルフの方々が助けを求める事態とは?」


「どうやら一連の騒動にドワーフ達が関係しているとか。」


「まさかドワーフがモンスターをけしかけているのか?無理もないとは言え…。」


逞しく生き残ったはずのエルフが助けを求めるのはドワーフも関係していると聞いて難しい顔をする。


「ドワーフの人達がエルフの人達と…どう言うことなの?」


「昔からドワーフとエルフは種族間で仲が悪くてな。小競り合いや口論ならまだしも、酷い時はそれこそ戦争に発展する場合もあったんだ。」


異種族や亜人などは疎外されてた時から知っていたが、その関係性を知らなかったエインにドワーフとエルフの歴史を教える。


エルフは先述の通り森の中に住まい自然と共に生きるが、ドワーフは技術による文明を発展させるために人工物を建設したり山や森を切り開くためエルフとは昔から対立が絶えないのだ。


「今回の救援もドワーフとのトラブル関連しているのなら、バリオンでの仕事を頼みづらくなるだろう。」


「それを差し引いてもエルフの人達に危機が迫っているのなら助けに向かうべきです!」


このままエルフとドワーフの種族間での争いが続けばこちらの用件どころではないはずだ。それ以前にエルフの人達が危機に立たされているのなら助けに向かうべきだとキオナはハッキリと告げた。


「やはりリリーちゃんには悪いですが、今はドワーフとエルフとの種族間の争いを止めルミナスを救うのが先決です。」


リリーの両親は死んだと決まった訳では無いし、今は要救助を求めているエルフ達を助けるべきだとキオナは決断する。


「メリアス、ルミナスへの案内は可能ですか?」


「問題ありません。途中まではイーロスの街への道を使います。」


「では各自準備を進めてください!」


故郷を救いに行くこととなって案内人として里のことを知っているメリアスが力強く名乗り出て、キオナも頷いて準備を進めるように伝えるのだった。


「リリーちゃん、リリーちゃん?…何処に行ったんだろう。」


『クゥン…?』


皆が準備を進める中でエインは王座の間から出ていったリリーのことが気になりロボとフォークと共に探していた。


「エイン、やはり心配ですか?」


「キオナ…僕にはよく分からないよ。リリーちゃんがあの人達と一緒に写真に映ってて…何て言ったらいいのか分からないけど、あの子のことが気になってしょうがないんだ…。」


あの人達とはリリーの両親…つまりかつてのエインの両親のことであり、それを知ってからリリーのことが頭から離れなかったのだ。


「それはリリーちゃんがあなたの妹だからですね。」


「妹…キオナとルティカちゃんみたいなこと?やっぱり僕には分からないよ…。」


家族に捨てられ愛を知らずに孤独に生きてきたのに、自分には妹がいたと知っても中々受け入れられなかったしどう言う感じかも分からなかった。


「確かに形容し(がた)いですからね。でも下に弟や妹が出来ると言うのは誇らしいことなんですよ。」


「誇らしい?」


「そうですよ。守ってあげたくなる、助けたくなる、目が離せなくなりますけど一緒にいて楽しくなりますよ。」


「そう…なの?」


同じ妹がいる身としてその存在がどんな物か教えるもエインにはイマイチ理解出来なかった。


「…あなたが実の兄だとリリーちゃんに話してはどうですか?家族なんですし、あの子のホームシックを解消するためにもあなたの存在は欠かせないのでは?」


「それを信じてくれるかどうか…。」


エインのためにもリリーのためにも本当のことを打ち明けるべきなのではと提案するも、エインだってこの事実は到底受け入れられないのにリリーにも受け入れられるはずがないだろう。


「それに僕はもう家族ではないんだ。リリーちゃんに取っての家族はあの人達だけだし僕の居場所なんて…。」


何よりもリリーはエインを捨てた後に産み落としたのなら、リリーの家族としての居場所は既にないものだと結論づける。


「そこまで言わなくても…ならあなたはどうしたいのですか。」


「僕は…リリーちゃんの家族を見つけて、それを見届ければそれで充分だよ。」


卑屈になっているのにリリーのために何をするのかと質問すると、エインは家族の元に送り届けた後に引き下がるつもりだった。


「ところでキオナもルミナスに向かうの?」


「なにせ国家の事情も関与していますからね。王女として向かわねばなりません。まあ、リオーネも同行することになりますが…。」


話は変わってキオナも旅路に同行すると聞いていたが、今回は珍しくリオーネの許可も降りての参加となっていた。もちろん彼女やボディガードがピッタリと同行する形でだ。


「よし、途中の道までは拓けている。ルミナスはそこより北に向かった場所だ。」


「それではルミナスに向けて出発します!」 


『『『プオオオン!』』』


以前と同じメンバーとパラサウロロフスの馬車を用意し、今度は近接主体の冒険者も招集してルミナスに向かって出発するのだった。


「ルミナスに向かうためとは言え、またこの道を通ることになるとはね。」


「あはは…仕方がないよ。」


以前にエインを忌み嫌う余り道から外れてカルノタウルスに襲われたことがあった。その道を再び歩くことになりエリーシャ達は苦笑いしながら進んでいた。


「あれ、何だろう?」


『ブオオオオ…。』


以前の拓けた草原にはコリトサウルスがたくさんいたが、今回は別のモンスター達がたくさんいて草を食べていた。


「角の騎士!…のようだが少し違うような…。」


形態からしてラピスの大好きな角の騎士ことトリケラトプスのような角竜かと思ったが、フリルと(くちばし)が見当たらなかった。


「って言うか、あれは角なの?」


「角と言うよりも頭の一部が硬質化してるみたい。」


唯一似ていると思っていた角も、鼻先が緩やかに反り返るように伸びて硬くなったかにも見えた。


「あれは『エンボロテリウム』だよ。前はコリトサウルスがいたはずなのに…。」


「必ずしもそのコリトサウルスがいる訳でもないだろう。とにかく先を急ぐぞ。」


目の前にいたのはエンボロテリウムであり、恐竜ではなく哺乳類の仲間で角竜よりもサイに似たような見た目をしていた。


コリトサウルスが見当たらないが今は先を急ぐため刺激しないように遠巻きにしながら草原を通り過ぎる。


「ここからはお前達の出番だ。この鳩にルミナスの道案内をさせてくれ。」


『クルル…。』


「分かりました!」


ダスプレトサウルス達が縄張りにしているイーロスの街より北に向かった所で、ここからは道なき道を行くため伝書鳩のリョコウバトに道案内をさせるためにエインの力を借りることにする。


「さあ、君は何処から来たの?」


『クルック〜!』


生体電流(パルス)でリョコウバトと意思疎通をし空へと放つと飛び立っていく。


『クルック〜!』


「この間と比べると順調ですね。」


「そう言う時こそ危険なんだ。警戒を緩めるな、ここは我々の知らない領域だからな。」


リョコウバトを追い掛け、鬱蒼(うっそう)とした樹木が沼に浸かった湿地帯のような場所に出る。これまでと比べると肉食生物にも出会わず順調とも言えるがだからこそ慎重になれとシスカが警告する。


「イーロスの街からだいぶ先に来たがここら辺もだいぶ変容しているな。」


「おっと…ここからは川を越えないとダメだな。」


メリアスは故郷への道のりが異世界の自然に覆われたことに圧巻としていると、ドランが目の前に大きな川が流れているのを目撃する。


「川…まさかまたあのブラッディダイルとかいないよね?」


「川から現れたもんね…大丈夫かな。」


「ワイバーンもどきもね…。」


これまでにもカルノタウルスやバリオニクスが現れて襲われそうになったために川にはあまり良い思い出はなかった。


『キャンキャン!』


「ここにはカルノタウルスもバリオニクスもいないって。」


「そいつらがいなくても他がいるかもしれんな。気を付けろ。」


ロボは匂いを嗅いでその二種がいないことを確認するも、他にも危険な生き物がいるのではと警戒しながら川を渡り始める。


「思ったよりも深いな。」


「フォークとロボを馬車に乗せて正解だったけど…冷たくて気持ちいいなぁ。」


「確かに川遊びがしたくなるわね。」


周りはムシムシしてて熱帯の気候であるために、川の水は冷たくて渡る際に腰まで浸かったがとても心地良かった。


「私も自分の足で…」


「姫様はダメです。」


馬車から出て自分の足で川の水に浸かりたいと思っていたがリオーネから止められる。すると後ろでガタガタと音がしてくる。


「今のは?」


「何者だ、出てこい!」


音が気になり振り返るキオナの前にリオーネが立って剣をいつでも抜けるように身構える。


「またルティカですか?」


「いえ、以前のこともありルティカ様はティアにしっかりと預けましたので…まさかモンスター?」


前の遠征ではキオナとルティカが荷物に紛れていたことがあったが、省みたリオーネは荷物は事前に確認した後にルティカを侍女のティアにしっかりと預けていた。


『ギァ~!』


「あら、あなたは…ゴンちゃん?」


荷物の隙間から亀の子供のようなモンスターが出てくるが、まるっきりアンキロサウルスの子供のゴンにしか見えなかった。


「あ、ダメ!?」


「リリー…ここで何をしている?」


ゴンを引き連れているのはリリーしか該当せず、その証拠に慌てた様子で荷物の隙間から彼女の姿が出てくる。


「リリーは…迷っただけ…。」


「目が泳いでるぞ。忍び込んだな?」


「…アルローマに行くの!リリーとゴンちゃんだけでも行くの!」


苦しい言い訳であるために目が泳いでおり、リオーネから問い詰められたリリーは開き直るかのように自身の願望を告げる。


「バカを言うな。こんな所では一秒とも保たないぞ。」


「そんなこと…ないもん!」


「あ!ダメですよ!?」


頭から否定されたリリーは涙目で膨れっ面になりながら馬車から飛び降りて大丈夫だと証明しようとする。


「きゃあっ!?」


「え、リリーちゃん!?」 


ところが馬車は今は川を渡っており、そこから飛び出したとあれば必然的にリリーは川に落ちてしまう。


「ぷあっ!?あう…!?」


『ギァ〜!?』


腰まで浸かる深さなら四歳ほどのリリーからすれば足が届かない深さであり溺れてしまう。馬車の上からゴンも心配そうな鳴き声を出している。


「助け…てぇ…!?」


「リリーちゃん!待ってて!」


バシャバシャと藻掻いているリリーに向かって、エインが血相を変えて真っ先に飛び出す。


「さあ、僕の手に…!」


「お兄ちゃ…あっ!?」


手を伸ばして掴もうとするがリリーの身体が不意に水中に沈んでしまう。


「リリーちゃん!?」


「ちょ!あんた泳げないでしょ!?」


エリーシャが止めるのも聞かずにエインは水に潜ってリリーを追いかけようとする。


『シュルル…!』


(く…苦しい…!?)


水中では姿はワニのようだが表面が鱗に覆われておらず、ツルツルとした体表を持つモンスターがリリーの服を咥えて水中に引きずり込んでいた。


(あれは…『プリオノスクス』…!)


名前はプリオノスクスであり大きさと姿はワニのようだが、実は両生類であり歴史上に置いても最大種とされている。


「ごぼおっ…!?」


(リリーちゃん!その子を…僕の妹を返してぇ!!)


口から大量の気泡を吐き出したリリーは身体が脱力したようにフヨフヨとし始め、それを見たエインは生体電流を放ちながら追いかける。


「何処に行ったの?」


「まさかあいつまで溺れたんじゃ…。」


「早く助けませんと!」


いつまでも浮いて来ない二人を心配してエルケ達も水中に潜ろうと服を脱いで下着姿になる。


「おおっ…!マジかよ…!」


「眼福眼福…。」


リュカ達男性陣が思わず女子達のあられもない姿をマジマジと見てしまう。


「バカ!こんな時にエロい目で見んな!てか、あの二人を助けるの手伝えよ!」


「わ、悪い…あれ…何だあれは?」


無論、女子達から冷ややかな視線と怒りの言葉を送られてマーキーは慌てて水面を見ると、淡く光っており魚がピチピチと跳ね回っているのが目に入った。


『シュル!?』


「ぐううっ!返してよ!」


「うわっ!?何それ!?今度こそブラッディダイル!?」


その直後にプリオノスクスに抱き着いて生体電流を流しているエインが水面から飛び出す。


『シュルル!?』


「あぐっ!?うあっ!?」


プリオノスクスは再びエインと共に水中に消え、暫くは水飛沫と水音で騒がしくなるも波打ったように静まり返る。


「エイン!大丈夫ですか!?」


『バウバウ!ウオオオン〜!?』


不気味な静けさにどうなっか分からないがロボは呼び掛けるように遠吠えをしていた。


『……。』


「あ、あそこ!」


「まさかエインくんとリリーちゃんはもう…!?」


水面にプリオノスクスの姿が見え、レイが不吉だがそれ以外は考えられない最悪の事態を口にするとプリオノスクスが近付いて来て…。


「ぬうううっ…うああああ!!」


「エイン!」


なんと身体の下から艶のある尖った石を片手でプリオノスクスの腹に突き刺しながら、エインが水中から立ち上がり姿を現したのだ。


「ぐっ…はあ…はあ…。」


「お前…こいつ仕留めたのかよ!」


「スゴいわね…。」


動かなくなったプリオノスクスを見て、こんなモンスターを一人で水中で仕留めたことに呆気にとられると同時に称賛を贈るのだった。


「それよりもリリーちゃんが!」


「ううっ…。」


「見せてください!」


もう片方の手にはぐったりしたリリーが抱えられており意識はあるがとても辛そうにしており、ラスコがエインからリリーを預かり容体を確認する。


「どうですか?リリーちゃんは…。」


「…大丈夫です、リリーちゃんは水を飲み過ぎて気を失っただけですから助かりますよ。」


「良かったぁ〜…。」


心配した様子で聞いてみるもリリーの命には別状はなかったらしくエインはホッとする。


『ギァ…ギァ〜!』


「あう…ゴンちゃん…?」


ゴンが寄り添って顔を舐めるとリリーはゆっくりと目を覚ます。


「バカ者!」


「ひうっ!?」


目を覚ましたところでリオーネはリリーに向かって怒号を飛ばし彼女を怯えさせる。


「これで分かっただろ!君が一人でこの異世界で生きられる訳がないだろ!危うく溺れるところだったんだぞ!」


「う…ううっ〜…ごめんなさい…。」


「待ってください、それを言うなら僕だって同じです。」


溺れてぐったりしているために身動きが取れないリリーを叱りつけるリオーネだったがエインは庇うように名乗り出てくる。


「僕も一人でプリオノスクスと戦ったんだ。言ってみれば僕はリリーちゃんと同じなんですよ。」


「しかしそれは…いや、分かった…今回はエインに免じてこれぐらいにしてやろう。とにかく色々言いたいが…無事で良かった。」


自分もリリーと同罪だと言うためリオーネは言い淀み掛ける。だが、仕方ないと言った様子でリリーへの説教を止めて安堵の表情を向けながら彼女を励ますのだった。


「感謝するんだぞ?エインが君を命懸けで助けたんだからな。」


「うん…お兄ちゃんが助けてくれたの…見てたの…お兄ちゃん…ありがとう…。」


「うん…。」


リオーネはリリーを助けたのはエインだと言うが、彼女自身も水中でエインが助けに来てくれたのを見ていたらしく感謝の言葉を掛けるのだった。


「とにかくこれでは国へ引き返すことは出来ないな。死にたくなかったら一緒に来るんだな。」


「うん…分かった…。」


成り行きとは言えこのまま連れて行くしかなく、こんな目に遭った以上はリリーも慎重になるしかなかった。


「大丈夫、僕が付いているからね。」


「…!うん!」


(エイン…なんだかんだ言ってても、やっぱり妹であるリリーちゃんのことが大事なんですね。)


エインはリリーの家族として居場所はないと突き放す雰囲気だったが、助ける際はいつもより鬼気迫る勢いだったし今だって不安そうにしている彼女に寄り添う様にキオナも微笑んでいた。

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