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人間は考えることで道を見つけ出す

「そうですか…イーロスの街は既に壊滅していましたか…。」


「残念ながら…。」


紆余曲折あって一日遅れで帰ってきたメリアス達からの報告を聞いて、キオナは後悔と悲しみに暮れる表情を浮かべていた。


「街中を捜索しましたが既に他のモンスター達によって街の人々は食われており全滅は間違いないかと…。」


「三種類の肉食性のモンスターが縄張りにしていました。そして私達を巡って獲物の取り合いをしていたのなら、もう街には獲物にするだけの人間はいないと言うことに…。」


エイン達が辿り着く前にメリアス達は街の捜索を行っていたが人は見掛けず、寧ろダスプレトサウルス達が自分達を巡って我先にと襲って来たのなら一人残らず食べられた可能性が高かった。


「イーロスの街を救えなかった…。」


「姫様…その…この異世界に来てから思ったのですが、救うにしても限界があるのかもしれません。我々も多くの犠牲者を出したように…。」 


キオナは助けれなかったことに自責の念を覚えていたが、リオーネは現状から言って何もかも救うには限りがあると諭し励ますのだった。


「それに僕らだって早く辿り着いてれば…。」


「あ、いえ!あなた達はよくやってくれました!大義です!」


実際に助けに行ったエイン達を責めるつもりはなかったが、遠回しにそう言ってしまったことを謝罪し労う。


「ですが私は…ここにいて何もしなかったのが悔やまれるのです。」


ただキオナは自分自身は玉座にいるだけで助けにも行かなかったことを自嘲していたのだ。


「キオナ…僕は…。」


何とか励まそうとするエインだが、キオナは繰り上がりとは言え国王になったのだ。その肩には国と国民の命運が掛かっていると言っても過言ではないため中々掛けられる言葉が見つからなかった。


「…安心してください、エイン。私はグランドレイクの王女キオナ!悔みはしますが、それならば悔いが残らないように王女として先導するだけです!」


一旦は落ち込みはするもリオーネも手を焼くほどのお転婆で気が強いために、いつまでも落ち込んでられないと毅然とした態度で宣言する。


「とにかくあなた達や学生の皆さんが無事で良かったです。今はしっかり身体を休めてくださいね。」


今度は労うように優しい笑みを浮かべながらウィンクをする。それを聞いた学生達も肩の力を抜いてホッとするのだった。


「うへぇ〜…本当に大変な遠征だったよなぁ…。」


「あちこち汚れたわよ…お風呂に入りたい…。」


王座の間だと言うのに口々に疲労感を露わにする学生達。まるで校長先生の長いお話を聞き終えた後のような弛緩した雰囲気だった。


「今はお湯は出ないわよ…お風呂なんて夢のまた夢…」


「お湯なら出せると思いますよ。」 


弛緩した雰囲気の会話の中で汚れた身体を洗いたいと入浴のことが話題に挙がるも、無い物強請りしても仕方ないと諦めているとラスコが聞き捨てならないことを口にしたため弛緩した空気が静まり返る。


「それ本当!?」


「お湯を?!温かい水のお湯を本当に出せるの!?」 


「それでお風呂に入れるの!?」


特に女子達は何かの間違いではないのかと詳しく説明するかのように、細かくラスコに確認しようと詰め寄る。


「まだ実験中ですがこれが成功すれば今後の生活にも役立つはずです。」


そう言うとラスコは見たことないガラクタの寄せ集めのような物を取り出す。


「どう言う代物なんですか?」


「もしも上手く行けば水を温めることが可能なはずです。ゆくゆくは入浴に使えるはずですよ。」


「こんなガラクタがそんな良いものになるの!?」


驚くことにこのガラクタならお湯を沸かせると聞いて女子達は色めき立つ。


「ただ問題は雷魔法がないと効果が発揮されないことですね。」


「ええっ…!?この異世界では魔法が使えないのに…!?」


「やっぱりただのガラクタじゃん〜…!?」


ところがラスコのガラクタは雷魔法がないと使えないことに一気に落胆する。そもそも魔法が使えるならこんな思いをしなくて済んだのだ。


「ですが同じエネルギーがあれば大丈夫です。」


しかしラスコは慌てず騒がずまだ手立てがあることを話す。


「同じエネルギー…って、どう言うこと?」


「雷魔法に似た力…それこそ落雷や電気があれば効果を発揮するんですよ。」


必要なのは電気であるため、わざわざ魔法を使う必要はないのだ。


「落雷ってそんな無茶な…。」


「第一そんなのどうやって…。」


電気を手に入れるにしても落雷から収集する訳にもいかないし、やっぱりそれこそ魔法がないと不可能に思えた。


「あれ?お忘れですか?電気を出せる子がいるじゃないですか。」


「電気を出せる子?……あ。」


「「「あ…。」」」


ラスコはウィンクしながら電気を出す子供の存在を仄めかし、そこまで来てようやくルシアン達も誰のことを言っているのか気が付いた。


「…え、また…僕?」


全員が満場一致だと言わんばかりにエインに注目が集まり、再び自身に注目が集まったことに彼も唖然となる。


「けど、彼の電気でお湯が沸かせるの?」


ルシアンもその目でエインの生体電流(パルス)を見て、一応は電気ではあると認識はしているもののあまり電圧は強くなさそうなため本当に出来るかどうか分からなかった。


「それを試すんですよ。これが成功すればきっとお湯は手に入るはずです。それに彼の可能性や限界も分かるはずですよ。」


ラスコの言うようにこれから先エインの生体電流が何処まで通用するかどうか調べる必要があるだろう。


「では浴場へ向かいましょうか。」


「これでもしも成功すれば…あたしらも行ってみよう。」


どうなるかは分からないがもし成功すればこの異世界に来てから久々に入浴が出来るかもしれないと思いエリーシャを始めとする女子達も浴場へと向かう。


「まず、この金属の棒を浴槽に入れます。」


「何なんですかこれは?」


「雷魔法が流れるとこの金属の棒が発熱するようになる仕組みです。」


いわゆる電熱線のことであり、後は電気を流すだけだと言うシンプルな物だった。


「後はエインくんにこの吸盤を貼り付ければ準備は完了です。」


その電熱線にはコードのような物で繋がれた吸盤が付属していた。この吸盤をエインに着けて生体電流を流させれば機能するようだ。


「あ、服は捲ってくださいね。服越しだと電圧が弱まりますから。」


「うひゃ…あはは…くすぐったいよ…。」


地肌に吸い付く感触がくすぐったくて身を捩らせるエイン。しかしラスコは構わず吸盤をエインの上半身に貼り付けていく。


「さあ、やってみてください。」


「は…はい。えい!」

 

青白い生体電流を全身に纏うも吸盤からコードを伝い電熱線へと送られていく。


「うひゃひゃ…これもくすぐったいし、力も抜ける…。」


再びくすぐったさに襲われると同時に今度は脱力感に襲われるエイン。


「温かいけど、まだぬるいですよ。」


水から湯気が上がっており、多少は温まっているもまだまだお風呂のお湯としては不十分だった。


「う〜ん…キチンと機能してますが、思ったよりも電圧が弱いようですね。」 


「そう言えば狼の時も電気を出せると言っても痺れさせるぐらいだしね。あんまり威力がないのかも。」


問題としてエインの生体電流の電圧が小さいのが原因であり、期待していたが風呂に入れないことに残念そうにするエリーシャ。


「あう…ごめんなさい、役に立てなくて…。」


人の役に立てると思っていたが失敗したことにエインも残念そうな顔をしていた。


「いや、これは仕方ないって。」


「でも…。」


「ったく…少しは笑えって!」


「あはっ!?あははは!?」


前ならこれでもかと罵倒していたが、打って変わって落ち込むエインを元気づけようとくすぐり始めるエイン。


「ちょっと、止めてぇ〜!?」


「おっ!?何これ!?」


くすぐられたエインの生体電流が一気に膨張し、驚くエリーシャを他所に浴槽の水が僅かにブクブクと沸騰する。


「これは…エリーシャさん、もう少しやってみてください。」


「え?やるって…こう?」


「あははは!?」


一部始終を見ていたラスコはエリーシャにエインをくすぐらせる。くすぐったさに大声で笑い転げるエインに比例して浴槽の水が温まっていく。


「どう言うこと?くすぐると電圧が上がるの?」


「いえ…恐らく刺激を受けると電圧が上がるのかと。先程はリラックスした状態でしたが、エリーシャさんが『くすぐる』と言う刺激を与えたために電圧が上昇したのかと…。」


ラスコは興味深いと言った様子でエインの生体電流のことについて考察を纏める。


「う〜ん…もっとデータを取るためにズボンも脱いでください。」


「え…ズボンもですか?」


「ええ、上半身で刺激を受けるとここまでなら下半身も含めればきっと…!さあ、脱いでください!」


「わひゃあ!?」


ラスコは研究者としての(さが)からか、ズボンも脱げと言われて戸惑うエインに構わず彼の衣服を掴んで無理やり剥ぎ取り始めトランクス一枚にしてしまう。


「さあ、下半身にも貼り付けましょうね〜!」


「あははは!?」


「なんかさあ…あいつヤバくない?絵面的にも…。」


ひん剥いた直後にエインの下半身にも電熱線の吸盤を貼り付けるのだが、自身の発明品のためにエインの了承も得ずに襲い掛かる様にエリーシャ達はドン引いていた。


「では電流を流すために刺激を与えますよ〜!」


「あははは!?も…もう…止めてぇ…!?」

 

「逃げちゃダメですよ〜!」


そしてエリーシャがやったようにラスコはエインの生体電流を強めるためにくすぐり始める。もうイヤだとエインは逃げようとするが鬼気迫るラスコに抑え込まれた上にくすぐられ続ける。


「あはははは〜!?」


「わあっ…!エインくんには気の毒だけど、お水が沸いてきたよ!」


ラスコの目論見通り生体電流が強まり電熱線が温まりそれに伴って水の温度が上昇し、ルシアンも思わず興奮した様子で知らせてくる。


「はぁ…はぁ…これで良いの?」 

  

「はい!大成功です!お風呂が沸いたんですよ!」


浴槽から温かい湯気が立ち昇る中で息を切らし笑い疲れたエインが突っ伏していたが、ラスコは発明品が成功しお風呂も沸いたことにご満悦と言った様子だった。


「お風呂…!」


「「「きゃあああ!お風呂だああぁぁぁ!」」」


この異世界に来てから食われるような思いと背中合わせで、ずっと苦しい思いをしていた彼女らに取ってお風呂に再び入れることは願ってもないご褒美だった。


「ぶっ…!?何これ…服?」


「「「やっほー!」」」


だからこそだろうか彼女らは幼いとは言え笑い疲れたエインがいるにも関わらず、衣服も下着も脱ぎ捨てて生まれたままの姿で歓喜し浴槽から沸き立てホヤホヤのお湯を掬って身体に浴びていた。


「はああ〜…!これよこれ!こう言うのを待ってたのよぉ〜!」


「気持ち良い…♪」


気が付くと女子達は身体に着いた汚れを洗い落とし、湯船に肩まで浸かって極楽気分に浸っていた。


「わあ…!本当にお風呂が沸いるわ!」


「やったんですね、エイン。」


今回の遠征には参加しなかったキャロラインやキオナも入浴が出来るようになったと聞きつけ嬉しそうにしていた。


「ふう…それじゃ僕はそろそろ…。」


「待ちなよ。沸かしてくれたお礼に洗ってやるからさ!」


エインは何とか立ち上がり浴場から去ろうとするが、エリーシャが再び入浴が出来るようになったお礼にと身体を洗おうとしてくる。


「別に僕は…。」


「エインくんも散々雨に濡れたり、泥まみれになったでしょ。」


「それに綺麗なお姉さんに洗って貰えるなんて男からしたら最高のご褒美でしょ!」


遠慮しようとするが入浴出来てご機嫌となったエリーシャ達はお礼をしたい気持ちでいっぱいでエインを引き戻す。


「ほらほら、だいぶ汚れたでしょ?」


「はう…またくすぐったい…。」


風呂桶に座らされてエリーシャ達から身体を洗われる感触にエインは再びくすぐったさを覚える。


「綺麗にしてあげるからねぇ〜。」


「…でも…何だか懐かしいなぁ…。」


幼い頃に両親と共に入浴し身体を洗われた記憶が僅かにあるエインは懐かしさを覚えていた。


「……エイン、またいつの間にか手籠めに…。」


「姫様。ここは彼女らに任せましょう。」


女子達がエインを労うように洗っていたのをキオナが見ていたが面白くなさそうに睨みつけていた。


「くそぉ〜…何であいつだけ…。」


「何とか見れねぇかな…。」


「でも、見つかったら俺達リンチだぞ。」


ついでに面白くなさそうにしていたのはキオナだけでなく、実験のためとは言え女湯に連れ込まれたことを羨ましく思う男性陣もまた同じであり、何とか中を覗けないかと攻めあぐねていたのだった…。


「はふぁ…気持ち良かった〜…。」


「おおっ…さすがキャロラインさん、大人の色気がありますねぇ…。」


「羨ましい…。」


久しぶりの入浴に女子達は満足していたが、湯上がりのために大人の色気が増したキャロラインを見て息を呑む。


「さすがはラスコちゃんだわ、魔法もないのにお湯を沸かせるなんて。」


「魔法…そう言えば魔法に代わる代物について目星が付きましたよ。」


「え?それ本当ですか?」


キャロラインのラスコへの称賛を耳にしたキオナは魔法使いの面々からすれば朗報とも言えるようなことを思い出す。


「昨日はご苦労様でした。そして今日は昨日話した通り魔法に代わる代物のことについてお話します。」


その翌日、いつもの王座の間にてキオナから魔法の代用品に付いての話がなされる。


「ラムスさん、先日見せてくれた物を。」


「こちらになります。」


キャラバンの代表であるラムスが木のフレームで補強された鉄の筒らしき物を提示してくる。


「それはもしや…『銃』か?」


狩人であるためかメリアスはラムスが見せてきた物に見覚えがあり、それが銃と言う武器だと見抜いた。


「銃…?」


「知ってる?」


「さあ…数字の『十』だったら…。」


疎外されていたエインはもちろんだが、魔法やスキルを主体に生きてきた学生達は銃の存在は知らないらしく珍しそうに見つめていた。


「『鉄砲』とも呼ばれている鉛玉を火薬の爆発力で打ち出す武器の一種だ。大砲を小さくした物だと考えれば良い。」


「聞いたことがあるぞ。魔法や剣術などに不慣れな者が使っていた武器だな。今じゃ魔法やスキルが発展したことと、大砲を小さく製作する必要があるため最近は見かけなくなったとか。」


最初に言い当てたメリアスと凛とした様子のシスカが銃の事情や歴史を語り出す。


「けど、その銃がどう関係して…あ、もしかして…。」


銃は元の世界ではほぼほぼ見掛けなくなって博物館でしか見られないような代物だ。それをどうするのかと質問しようとするが直感で何を考えているか察するキャロライン。


「もしかして銃を魔法の代わりに?」


「その通りです。これなら魔力やスキルは関係はないですし、基本的なモーションやルーティンは魔法を使う時と何ら変わらないから大丈夫なはずですよ。」


キオナが見つけ出した魔法の代用品とは銃のことだったのだ。


「銃を魔法代わりに…?」


「使ったことのない武器なのに大丈夫なのか?」


「でも大砲を小さくした物なら確かに魔法を使う時と変わらないような…。」


最初は銃に魔法の代わりが務まるのかとザワめくものの、大砲と原理は同じなら使えなくもないと賛否両論だった。


「あの…仮に銃を魔法の代用品にするとして使い方などは…。」


魔法もスキルもないこの異世界に来ている以上、もはや代用品などは否定するつもりはないが使い方は誰が教えてくれるのかと疑問に思う。


「そこは案ずるな。砲手達が一連の火器の扱いには長けているからな。無論、あまり見られない銃のことについてもな。」


「しかし問題は数ですね。これは私達が好事家(こうずか)に売るために載せていた荷物の一つですからね。話を聞くに魔法使いの方々に装備させたいようですが…。」


「こんなことになったのだから無理もありませんよ。」


使い方はこの国の砲手がいるため問題ないが、元々銃の需要は少なかったためキャラバンでも運ぶのは(まれ)だと言う。


「何処でそれをよく仕入れますか?」


「ドワーフの王国である『バリオン』です。我々は注文があればそこから銃を仕入れています。」


「バリオン…大陸中の武器や防具を一任されているドワーフ達の王国ですね。リオーネ、地図を見せてください。」


主な銃の仕入れ先はドワーフの王国であるバリオンからだと聞いてキオナは考える素振りをした後に地図を持ってくるように指示する。


「もしも彼らが生き残っていれば…恐らく銃の製造は可能なはずです。それだけでなく消耗した武器の補充にも持って来いです。」


「確かに彼らほどうってつけの人材はいません。我が国の鍛冶師は()()()に頼っていたために形無しになってしまいましたし…。」


ここでスキルに付いてもう一度説明しよう。スキルは特定の事象や動きを詠唱を唱えることで扱う技術のことだ。


攻撃だけでなく日常生活や職業に使えるまで多岐に渡り、これまでは発展に伴いスキルを使えば低コスト・低スパンで物事を進められるようになったため重要視されていた。例えそれが鍛冶仕事だったとしてもだ。


「ドワーフ達は昔から己の手で道具や武器を作ることに誇りを持っていましたからね。昔ながらの()()()()()での鍛冶仕事を生業にしているためやってくれるかもしれません。」


しかしこの異世界に転移したことでスキルが失われた今となっては、スキルに頼らず自らの手で製作を行うドワーフ以外に鍛冶仕事を出来る者はいないだろうと結論づける。


「じゃあ、次の目的地はバリオンってこと?」


「そうしたいのですが…実は銃を扱うには『火薬』が必要なのですよ。」


目的地はバリオンかと思われていたが、銃や大砲に使う火薬も必要だとキオナが苦虫を噛み潰したように呟いた。


「火薬?」


「火を付けると爆発する粉状の薬のことだ。大砲にも使われている物だ。しかし姫様、まさか火薬の方が…。」


「はい…先日のタイラントドラゴンの襲撃と雨天によってそのほとんどが使い物にならなくなって…。」


火薬が必要と聞いてメリアスは質問すると案の定火薬の方が不足していることが判明した。


「そのバリオンって所で作れないの?」


「ドワーフが作れるのは道具や武器だ。火薬のような薬学に精通した物体は作れないはずだ。」


餅は餅屋と言うようにドワーフ達は武器を作る鍛冶師であり、火薬となれば火薬を専門に扱う薬師だろう。大砲などは作っても中に詰める火薬は別問題になるのだ。


「…爆発する物を火薬って言うんですか?」


「まあ、全部が全部と言う訳ではないが平たく言うとそうだな。」


「だったら…ラスコさんが使ってたあの爆発するあれも?」


「っ…そうか!」


火薬が爆発する物だと聞いてエインはイーロスの街でラスコが使っていた爆弾のことを思い出す。あれにだって火薬は使われているはずだと期待した様子で見つめる。


「あー、まあ…確かに私は火薬を作れますけど…。」


「何でそれを先に言わないんだよ!」


「それで鉄砲の問題は済むんだからよ!」


リュカとマーキーはラスコが火薬を作れるのなら何で黙ってたのかと言及する。


「ですが火薬を作るための材料がないんですよ。」


「その材料とは何ですか?私達に出来ることなら揃えてみせます。」


作れるが根本的な問題として作るための材料がないと言うため、キオナはラスコが火薬を作れるように何が必要か訊ねる。


「必要なのは『木炭』、『硫黄』、それと『硝酸ナトリウム』です。」


「…木炭は分かりますがそれ以外の物は聞いたことがありせんね…。」


木炭は木を燃やして作る炭であるため容易に分かるが、それ以外はあまり聞かない材料だった。


「硫黄は主に火山地帯で採取出来る石です。硝酸ナトリウムは確か…海鳥の糞から採取出来ると聞いたことがあります。」


研究者であるためその材料が何処で手に入るかは知っていたラスコは産出場所を挙げていく。


「火山と海鳥ですか…最低でも三箇所の場所を訪れる必要がありそうですね。」


木炭はこの国でも作れるが残る素材はどうしても硫黄が産出される火山地帯と海鳥が生息する海辺へ行く必要がある。


それだけでなくドワーフの国のバリオンにも向かわねばならないのだ。


「この国からだとまだ海の方が近そうですね。それに海へ通ずる道が出来れば海産物などが手に入りやすくなりそうですね。」


「それに海鳥であれば何も海辺でなくても、周辺の森まで来ることがあるでしょうし、手っ取り早く入手出来るかと…。」


まだ海の方が近い上に必要なのは海鳥の糞であるため、海辺でなくとも近辺に住む海鳥さえ見つけられれば大丈夫なはずだ。


「あの…硫黄でしたら多分バリオンでも入手出来ますよ。確かドワーフ達は鍛冶仕事をする際には火山の熱エネルギーも利用しているみたいなので硫黄ぐらいは簡単に手に入るかと…。」


「それならバリオンは後回しにし、まずは海辺から行くことにしましょう。」


ラムスは商人であるためバリオンで硫黄が産出されることを知っていた。それを聞いて回る箇所は二箇所だけとなり、取り敢えずは海辺から行くことにする。


「それと今回は魔法使いの学生も同行させてください。魔法に成り代わる物を手に入れるのですから当然です。」


以前は戦士や剣士と言った前衛に長けた者達が遠征に向かったが、今回は魔法使いの学生達を遠征に参加させると言う。


「と言うことは私もですよね…そんな遠い所まで体力が保つかしら…。」


「さすがに体力的に差があるからな。馬車を用意しよう。」


魔法を長けた者は基本的に後方支援としてあまり動かず、魔法を頼る傾向があるため体力的には前衛職からすれば劣ってしまう。


海辺まではイーロスの街より遠くはないが、それでも体力的に不安があるためリオーネは馬車を用意してくれるようだ。


「馬車は三台用意した。牽引はこいつらがしてくれる。」


『プオオオン…。』


「よしよし…。」


肉食生物によって牽引してくれる馬なども食い荒らされたため、馬車の前には馬の代わりにパラサウロロフスが繋がれておりエインが生体電流で宥めていた。


「ちょっと何よあの変な馬?牛は?」


「何か新しく家畜になったモンスターみたい…。」


「はいは〜い、魔法使いの学生さん、こちらですよ〜。」


ラスコの引率でとんがり帽子にローブと魔女や魔法使いを彷彿とさせる服を着た生徒達が馬車の前のパラサウロロフスを見てマジマジと見つめていた。


「こんな変なのが役に立つの?」


「警戒心が強いから危険があれば騒ぎ立てるから大丈夫だよ。」


明朗快活な太い眉にツーサイドアップにした赤髪が特徴的な十五歳ぐらいの女の子がパラサウロロフスの奇抜な見た目に難癖をつけるがエインが生態を解説してくる。


「あら、あんた知ってるわよ。無能とか役立たずとか言われてた子じゃない。」


「あう…。」


雰囲気に違わず強気な目付きでエインを萎縮させる少女。しかしエインの肩を誰かが掴んで後ろへ下げさせる。


「ちょっとあんた、こいつにちょっかい出してんじゃないわよ。」


「あら、エリーシャさんですか。確かアルシーアト家の方ですわね。」


髪を上品に撫でながら少女はエインの前に出たエリーシャのことを知っているらしく、彼女のミドルネームを言い当てる。


「エルケ・カリュデアス…()()()は魔法使いの名門貴族様として呼ばれてたでしょうけど今は…。」


「…ふん、下々の者は人の揚げ足を取るのだけは優秀のようですわね。」


赤髪の少女はエルケと言うらしく、エインだけでなくエリーシャのことも下に見たようなことを吐き捨てるのだった。


「エリーシャさん…。」


「安心しな、もう二度とウチらみたいなバカはさせないからさ。」


「だから大丈夫だよ。」


エリーシャは前回のエインへの嫌がらせを経て、心を入れ替えてエインの味方となり、ルシアンも安心させるように寄り添う。


「あれ、今日行くのは魔法使いの人達だけなんじゃ…。」


「一部の学生は志願すれば引き続き遠征に参加出来るの。私達みたいにね。」 


今回は魔法使いの人達のために海辺への遠征となっていたが、それだけでは心許ないため前衛職の学生達の何人かは引き続きこの遠征に加わっていたのだ。


「よし、出発するぞ!」


「皆、お願いね。」


『『『プオオオン…!』』』


メリアスとエインの号令でパラサウロロフスの牽引する馬車が動き出し、跳ね橋を越えて海辺へと向かうのだった。

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