『恐ろしい』共生関係〜後編〜
『グルルル…!』
「冗談でしょ…ドラゴンと狼が手を組んでるなんて!?」
元の世界でも種類が異なるモンスターが出現することはあったが、力を合わせて追い詰めるように狩りをするモンスターなんて聞いたことがなかった。
『ゴアアアア!』
「こっち!?」
生体電流を纏ったエインはルシアンとエリーシャの手を引いてダスプレトサウルスの顎をことごとく避けていく。
『『『ウオオオンー!』』』
今度はダイアウルフが駆けて来て逃げるエイン達を追いかけてくる。
「ゴメンね!?」
『ギャン!?』
エインは生体電流をダイアウルフの一頭に流して痺れさせる。
「守れてばっかじゃ…ないわよ!?」
「やあっ!?」
エリーシャも踵を返して剣を抜いて二頭のダイアウルフを切り捨て、ルシアンも棍棒をダイアウルフの頭部に叩き込む。
『ギィー!』
『ギャン!?』
「良いよ!フォーク!」
フォークも小さいながら自慢の角でダイアウルフを突き上げて道を切り拓く。
「狼のモンスターなら学校の実技で何度も戦ったわ!これくらいなんてことないわ!」
モンスターとの戦闘を想定し、学校では実技で本物のモンスターと学生を戦わせるカリキュラムがある。そのため学生とは言え、初級のモンスターならば戦えない訳では無い。
『ゴアアアア!』
「けど…あれは流石に無理〜!?」
狼のモンスターならまだ立ち回れるため強気になれるが、ドラゴンとは戦ったことが…と言うよりも冒険者でも上級者向けであるため、ダスプレトサウルスの前では逃げるしかなかった。
『ギエエエ!』
「ワイバーンよりデカいくせに速い…!?」
カルノタウルスより大きなダスプレトサウルスは最初こそ速くはなかったが、徐々に加速しスピードが出てくる。
「そこの路地に入ろう!あんなに大きいと入れないはずだよ!」
「それよ!」
しかしながらあれだけ身体が大きいと小さな相手を追い掛ける場合、相手が自分の身体が通らない場所に入られたらどうにもならないはずだ。
『ゴアアアア!?』
「ひえっ!?危なかったわ!?」
ルシアン達は路地を曲がって振り返ってみると、目論見通りダスプレトサウルスは鼻先が入ってもそれ以上は引っ掛かって進めそうになかった。
『グルルル…!』
「諦めたわね!やっぱりここまでは来れないっしょ!」
これは無理だと判断したダスプレトサウルスは後退りして路地から鼻先を引っ張り出す。エリーシャ達もこれで諦めたかとホッとする。
『ゴアアアア!』
『『『ウオオオン〜!』』』
「と思ったらダイアウルフが!?」
ダスプレトサウルスは入って来れないが、その代わりダイアウルフ達が路地の中に入り込んで来る。
「キッツ〜い!?」
「はぁ…はぁ…さっきから走ってばっかりぃ〜…!?ひぃ〜ん…!?」
ここまで来るのに色々な生き物に追いかけ回されており、もう体力の限界でウンザリだと言わんばかりな様子だった。
「建物の中に入ろう!フォーク、あそこの扉を壊して!」
『ギィー!』
逃げ切れないと考えたエインはフォークに近くの建物の扉に突進させて突き破らせる。
「早く早く!」
「ひええっ!?」
エインはルシアンとエリーシャが入ったのを確認して近くにあった棚や家具を倒してバリケードをする。
『『バウバウ!』』
バリケードの外ではダイアウルフ達が吠えたり、噛み付いたり、引っ掻いたりして物音を立てて破ろうとしていた。
「はぁ…はぁ…まさかドラゴンが狼を仕向けるなんて…。」
「こうやって助け合ってたのね。ドラゴンが入れない場所に狼を向かわせて獲物を追い込んでいたのね。おまけに狭い場所だと武器がかさばって戦いにくそうだし…。」
取り敢えずバリケードは破られる心配はないため、息を整え落ち着いたところでダイアウルフとダスプレトサウルスが助け合っている意味と山のように積まれた人骨の持ち主がどうやって殺されたのか判明した。
『ゴアアアア!』
「ん…どうしたんだろう?」
「静かになったわね?」
ダスプレトサウルスの咆哮が聞こえた途端にエインは何かを感じ取り、同じくダイアウルフの喧騒も聞こえなくなった。
「…いなくなってる。」
窓からそっと見てみるとバリケードの外にいるはずのダイアウルフは一頭もいなくなっていた。
「今度こそ諦めたの?」
「でもリザードマンの時は…。」
狙わなくなったのかと考えるもディノニクスの時は家屋の中から回り込んで来たことがあった。
「…さっきのダスプレトサウルス、『こっちを手伝え』って呼んでた。」
「何それ?どう言うこと?」
先程の咆哮の意味を読み取ったエインだったが、何を指しているかは意味不明だった。
『ブオオオオ!?』
「あ…この鳴き声は…。」
ダイアウルフでもダスプレトサウルスでもない鳴き声が聞こえてきて思い出したがこの街に来たのは自分達だけではないと思い出す。
『『バウバウ!』』
『ブオオオオ!?ブオオオオ!?』
「やっぱりウインタテリウムが襲われてる…。」
二階に登り窓から外を覗くと六本角のサイのようなウインタテリウムがダイアウルフに取り囲まれていた。するとダイアウルフの一頭がウインタテリウムの背中に飛びついて噛みつく。
『ギャイン!?』
「歯が折れちゃった。」
ところがガリッと嫌な音がしたと思ったらダイアウルフの歯が折れてしまっていた。
「どうやら皮膚が硬いようね。あれなら幾ら噛みつかれても大丈夫なようね。」
『ブオオオオ!』
歯が折れたダイアウルフをウインタテリウムはフォークのように空高く突き上げて反撃する。これならまず負けることはないはずだ。
『『『ガルルル…!』』』
『ブオオオオ…!?』
「あいつら歯が立たないのに無駄なことを…。」
ところが歯が折れると分かっていながらダイアウルフ達は次々とウインタテリウムに飛びついては脚や背中に噛み付く。
『ゴアアア!』
『ブオオ!?』
「あ…!噛み付いた!」
その隙を突いてダスプレトサウルスはウインタテリウムの首に喰らいつく。
『ブオオオオ…!?』
『グググ…!』
「強い…!」
「こ…これは…勝てないわ。」
ウインタテリウムは振り解こうとするが、バナナのような太く鋭い牙が硬い皮膚を貫く痛みと同時に顎の力で気道を押し潰されることで息が出来なくなる。
『グオオオオン!』
暴れていたウインタテリウムだが苦痛と窒息から押し倒され動かなくなる。ダスプレトサウルスは脚を動かなくなったウインタテリウムの身体に置いて仕留めた歓喜の咆哮を挙げる。
「そうか…ダスプレトサウルスが噛み付きやすいように…。」
「集団で獲物の動きを封じていたのね。」
「確かにあたしらも強いモンスターと戦う時は皆で力を合わせて戦うもんね。」
確かにウインタテリウムの皮膚は硬くて歯が立たないが集団で飛び付いて動きを鈍らせ、圧倒的に顎の力が強いダスプレトサウルスがトドメを刺すことで獲物を獲得しているようだ。
『グルルル…!』
「うっ…昨日も見せられたけど、また暫く肉は食べたくないかも…。」
仕留めたところでダスプレトサウルスは脚で抑えながらウインタテリウムの皮膚を噛みちぎって肉を食べ始める。その際に筋繊維や内臓が露わになり、グロテスクな余り食欲が失くなりそうになる。
「そうかな?美味しそうに見えるけど…。」
「あんた…どう言う価値観や感性をしてんのよ。」
しかしながらエインはそんな捕食光景を見て、初めて肉を食べたことを思い出して美味しそうだと思ってしまいエリーシャをドン引きさせる。
「それにしても、あの狼達は食べずに待っているみたいだけど…。」
仕留めたのはダスプレトサウルスのお陰だが、ダイアウルフも活躍したと言うのに彼らは一緒に食べようとはせずに寝そべったり、座り込んだりしてダスプレトサウルスの食餌を見ていた。
『ゴフッ…グオオオオン…。』
『『『グルルル…。』』』
ゲップをして満足したダスプレトサウルスはその場に寝そべり、入れ替わる形で今度はダイアウルフ達が食餌を始める。
「なるほど、あのドラゴンの食べ残しが目的だったのね。」
「そんなの貰って嬉しいの?」
一連の行動を見て分かったのはダイアウルフが食べるのは、ダスプレトサウルスが食べ残した部分であり、それで満足出来るのかと疑問に思う。
「ダイアウルフは大きな生き物を仕留めたりはするけど、基本的には他の生き物の食べ残しや死体を食べるんだって。」
「よく分かるわね…名前はともかく生態まで…。」
「じゃあ、生きてるあたしらは無視して欲しいんだけど…。」
少なくとも食べ残しでも満足は出来るようだが、それなら自分達は狙わないで欲しいと思ってしまう。
『ギィギィ…。』
「お腹空いたの?そう言えば僕も…。」
「ぐっ…さっきはああは言ったけど…確かに昨日から何も食べてないわよね…。」
食べているのを見て影響されたかフォークが食餌を求めており、自分達も昨日からロクな食事を取っていないことを思い出す。しかもずっと走り回っているせいで輪にかけて空腹だった。
「何か食べ物でもないかしら?」
「降りてみましょう。」
生存者がいるかどうかは不明だが背に腹は代えられないため食糧を失敬することにする。
「食糧庫は…あ、ダメだよ。荒らされてる。」
「あの狼達の仕業ね。」
隠れ潜んだ家の食糧庫は既に開け放たれており、肉は食べ尽くされ野菜は踏み荒らされていた。
「他の所も多分…けど、備蓄倉庫ならまだ頑丈で荒らされていないかも。」
「そうね。私達の国もそうだったわね。」
備蓄倉庫は物資の保存はもちろん、攻め込まれたり盗まれたりしないように頑丈に作られており例え恐竜相手でもそう簡単には壊せない仕組みになっているはずだと考える。
「でも、どうやって通る?」
「そうよね…下手に動いたら狼がまた…。」
備蓄倉庫へ向かうなら安全地帯であるこの家を出なければならない。そうすると襲われるリスクが上がってしまうため、何かしら見つからない工夫が必要だった。
「あれ、これは…?」
「オレンザの実ね。それだけはヤケに綺麗ね。」
エインが見つけたのはオレンジによく似た果実のオレンザの実だった。それだけは踏み荒らされることなく食糧庫から離れた位置に綺麗に残されていた。
「ラッキー、一つ貰うわよ。」
「確かに運が良かったわね。オレンザだけは綺麗に残ってるなんてね。」
備蓄倉庫で食糧を獲得するつもりだったがどう言う訳か綺麗に残ってたため、これだけでは満腹とはならないものの少しは腹の足しになるとオレンザを食べ始める。
『ギィ〜!』
「他の野菜は踏み荒らされているのに、これだけは遠くにあるなんて…まるで意図的に避けているみたいな…?」
フォークが美味しそうにオレンザを食べる中で、エインは手に握り締めながら何故離れた位置にあったか考えていた。
「嫌いなんじゃないの?あいつら肉しか食べないんだし…。」
「嫌い…もしかして…。」
エリーシャの発言から何か考え付いたエインは再び窓から外の様子を伺う。
「ふん…!」
『グウッ…!?』
実を絞って果汁を寛いでいたダイアウルフの側に落とすと、そのダイアウルフは顔をしかめるかのように起き上がりその場から立ち去る。
「何してるの?」
「エリーシャさんの言う通りだよ。ダイアウルフはこのオレンザの実の匂いが嫌いみたいなんだ。」
「え?マジ?」
「果汁を落としたら嫌がってたよ。」
適当に言っただけだが本当にオレンザの実が嫌いらしく、ダイアウルフ達は実を避けるように遠ざけていたのだ。
「…えい!」
「はあ?何してるのよ?」
何を思ったのかエインはオレンザの果汁を全身に浴び始めたのだ。
「僕らにオレンザの実の果汁を塗っておけば、ダイアウルフ達は寄ってこないはずだよ。」
「え〜?そんなんで本当に上手く行くの?」
「この際だしダメ元でやってみよう。」
成功するかどうかは不明だが、もしエインの考えが当たっていればダイアウルフは寄って来ないはずだ。半信半疑ながらもエリーシャとルシアン、更にフォークも果汁を浴びるのだった。
「良いよ、いないよ。」
バリケードの外にダイアウルフがいないのを確認してからエイン達は残ったオレンザの実を持って外へと脱出する。
「あれだけ大きな生き物の肉を食べたんだから暫くは食べようとはしないはずだわ。」
「だと良いんだけど…。」
自分達よりも身体が大きいウインタテリウムを仕留めて食べたのなら暫くは食餌を摂らないと考えるも、一応は警戒しながら備蓄倉庫へ路地伝いに進む。
「ん…これは…。」
「確か…コリトサウルスって言ってたかしら、このモンスターは…。」
路地には犠牲となったイーロスの街の人達の骨はもちろん、昨日出会ったコリトサウルスの死体も混ざっており腐敗してハエや蛆が湧いていた。
「こいつも狼にヤラれたの?」
「それにしては周りの骨と比べて肉が残ってるよ。」
その死体がコリトサウルスだと分かったのは、周りに骨が散らばっているのに対し肉が多少残っていて原型を留めていたからだった。
「それがどうしたのよ?」
「死体や食べ残しを好んで食べるダイアウルフが何も手を付けてないなんておかしいよ。」
ダイアウルフはダスプレトサウルスを始め、他の肉食生物が残した肉や死んだ生き物の肉を好んで食べる傾向がある。
それなら死んで腐敗したコリトサウルスをダイアウルフ達が放って置くはずがないのだ。
「それにこの傷痕もダイアウルフが付けたにしては随分大きいような…?」
それだけでなくコリトサウルスに致命傷を与えたであろう傷も、まるでダスプレトサウルスのような大きな生き物の顎で丸齧りにしたかのようだった。
「あのドラゴンが倒して、たまたま狼達はお腹いっぱいだったのかしら。」
「どっちにしてもこうはなりたくないわね…。」
いずれにしても自分達もダイアウルフかダスプレトサウルスに襲われ、無残な腐敗した肉塊になるなんてまっぴら御免だった。
「見て、あれが備蓄倉庫かな。グランドレイクにも同じのがあったから…。」
「きっと、そうよ!」
ルシアンの言う通りお腹いっぱいになったのかダスプレトサウルスやダイアウルフに会うことなく備蓄倉庫まで何とか辿り着けた。
「でも鍵はどうするの?こう言うところって鍵を掛けてるんでしょ?」
「それは…あれ?この備蓄倉庫って…。」
前も鍵を開ける必要があったが、ルシアンはふと首を傾げながらドアを軽く押すとすんなりと開くのだった。
「鍵が…掛かってない?」
「それどう言うことよ?」
「慌てて鍵を掛けるのを忘れたのかも…。」
備蓄倉庫は国や街の食糧や物資を保管する重要な場所なのだが、鍵が掛けられていないなんて金庫の扉を開けっ放しにするのと同じであった。
「あの〜…誰かいますか。」
ルシアンは恐る恐る扉を開けてみると、夜でもないのに部屋の中は真っ暗で一寸先は闇と言うのが相応しかった。
「…やっぱり誰もいないのかな。」
「食べ物とかは?」
「でも、こう暗くちゃ……っ!?」
返事もないし、何も見えないが何かが通り過ぎた気配がしてルシアンは息を呑む。
「何かいる…!?」
「あ…これ使ってみて。」
壁に松明が掛かっているのを見てエインは生体電流で点火してルシアンに手渡す。そして松明を受け取った彼女は備蓄倉庫内を照らしてみる。
『グアアアア!』
「きゃああああ!?」
先を照らすと大きな口がルシアンに向かって大きく開いており、彼女の目の前には鋭い牙がズラリと並んでいたために腰を抜かしてしまう。
『ゴルルル…!』
『グオオオオン!』
「ちょ…何なのよこいつらは!?」
驚く間もなく備蓄倉庫の中に恐ろしいうめき声が聞こえ、松明を振り回してみるとルシアンを驚かせたのと同じモンスターが棚や資材を押し退けながら現れて来る。
「ひっ…腰が抜けて…!?」
『グアアアア!』
そのモンスターはダイアウルフのように四つん這いの身体に長くしたダスプレトサウルスの頭を取り付けたような見た目をしていたため、ルシアンは驚きと恐怖の余り動けなくなってしまう。
「危ない!」
「ひうっ!?」
エインがルシアンを引っ張ると顎がガチンと閉じられ九死に一生を得るのだった。
『グアアアア!』
「逃げるわよ!?ここはこいつらの巣窟よ!?」
倉庫から立ち去ろうとするエリーシャ達だが、逃がすかとモンスター達も倉庫の入り口へと殺到してくる。
「エインくん、そこの閂を!?」
「えい!?」
モンスターが簡単に出てこられないようにと扉を閉めたエインはルシアンから指摘された閂を降ろす。その途端に扉に体当たりし、封鎖を打ち破ろうとするモンスター達。
「さっきのドラゴンと狼を足したようなモンスターね…あんなのもいるなんて聞いてないわよ…。」
「あれは『ゴルゴノプス』って言うモンスターみたい。」
この街の事情を誰かに聞いた訳でもないのに、ゴルゴノプスもいるなんて話が違うと文句を言うエリーシャ。
「とにかくここから離れましょうよ…あんな思いするのはもうコリゴリよ…。」
「まさかあんなのがいるんじゃ、備蓄倉庫にはもう近寄れないわね。」
備蓄倉庫がゴルゴノプスの巣になっていたこともあるが、怖い目にあったため早くここから立ち去りたかった。
「あれ?何か静かじゃない?」
エインは扉を叩く音やゴルゴノプスの喧騒がいつの間にか消えていたことに気が付く。
「諦めた…んな訳ないよね…。」
「出入り口が何処か別にあるのかも。早く離れよう!?」
これまでのことを考えれば獰猛なモンスター達がこれで諦めるとは思えなかった。それを証明するように周りからドタバタと足音とうめき声が聞こえてくる。
「一応閂やバリケードはしたけど、いつまで保つか分からないよ。」
「そう言えばメリアスさん達はどうなったのかしら…。」
「先に来てるはずなんだけどね…考えたくはないけど、まさか先にヤラれたんじゃないでしょうね?」
適当な家に入って戸締まりをしっかりして一息をつくも、先に来ているはずのメリアス達の姿が見えないことに最悪の事態を考えてしまう。
「ん…!?何か足元がゴトゴトしていない…?!」
座り込んでいると床板が揺れており、テーブルや椅子もそれに合わせて揺れ動いていた。
「床下に何かいるみたい…!?」
「何かって…何がよ!?」
まるでモグラが地中を移動しているかのように、次第に床の揺れが激しくなりそれに比例して床板が跳ね上がっていく。
『バウバウ!』
「うわっ!?ダイアウルフだ!?」
「まさか床下を掘り進んで来たの!?」
床板を破って飛び出したのはダイアウルフだった。身を捩って床板を破り、家の中に上がり込んで来る。
「お願い!僕らを襲わないで!?」
『グルルル…!』
生体電流で気持ちを伝えるがよほど空腹なのかダイアウルフは唸りながらにじり寄って来る。
「下がって!ここはあたしが…!?」
『グルアアア!』
エインを後ろに下げて剣を抜くエリーシャにダイアウルフは飛び掛かるのだが、バリケードが派手な音と共に決壊して長い口が飛び出してくる。
『ゴアアアアア!』
『ギャイン!?』
「いっ!?」
ダイアウルフはエリーシャを捕食しようとしたが、バリケードを破ったゴルゴノプスによって逆に捕食されてしまうのだった。
『グオオオオ!』
「うわっ!?他のゴルゴノプスもバリケードを破って来た!?」
突然の展開に唖然となるも他のゴルゴノプス達もバリケードを破って頭を突き出してくる。
『グルルル…!グオオオオン!』
『ギエエエ!』
幸いにもゴルゴノプス達は身体までは家の中に入らず、壁際から首を伸ばしてガチンガチンと噛み付こうとしてくる。
「壁伝いに二階に…!?」
「ひええっ…!?」
エイン達は噛みつかれないように壁に背中を着けて二階へ避難しようとする。ルシアンは身体の一部が大きいために噛みつかれないかどうか不安になっていた。
「って、二階に逃げても逃げ道がないわよ!?」
あのままいても捕食されていただろうが、二階に逃げても追い詰められることは変わりなかった。
「今度は屋根伝いに…わっ!?」
「矢…!?ってことは…!」
窓から屋根の上を渡ろうとするが、窓の外から矢が飛び込んで来て壁に刺さる。
人工物である矢が飛んでくると言うことは、明らかに人の手があると言うことだが誰がやったかは一目瞭然であると同時に一気に表情が明るくなる。
「エイン!ルシアン!エリーシャ!無事か!」
「メリアスさん!」
自分達とは向かい側の家に、この場で一番会いたかったメリアスが弓を構え、息を切らしながらも安堵した様子でこちらを見ていた。
「その矢に括り付けたロープを伝ってここへ来い!奴らが来るぞ!」
壁に刺さった矢にはロープが結び付けられており、メリアスがいる家の方まで続いていた。下層ではゴルゴノプスとダイアウルフが既に家の中に侵入して吠えており考えている時間は無さそうだった。
「早く渡らないと…!?」
「待って!下を見て!?」
『ゴアアアアア!』
「こんな時に…!?」
ロープを渡ろうとするが下にはダスプレトサウルスが大きな口を開けて待ち構えていた。
「僕が引きつける!その間に!」
『ゴアアア!』
屋根に出たエインは生体電流をダスプレトサウルスに放ち注意を引きつける。
「武器を引っ掛けて滑って来い!」
「分かりました!」
「えい!?」
ダスプレトサウルスが屋根の上のエインに注意が向いている間にエリーシャは鞘に収めた剣を、ルシアンは棍棒をロープに引っ掛けターザンロープのようにメリアスの所へ滑走する。
「エイン!残るは君だけだ!急げ!」
『ゴアアア!』
「はい!?」
今度はメリアスが屋根に出てダスプレトサウルスに矢を放ち注意を引き、それを見たエインは急いでロープの方へと急ぐ。
『ウオオオン!』
「わっ!?」
「エイン!?」
ところが窓からダイアウルフが飛び出し、エインは持たされたロングソードで咄嗟にガードするも体重差もあり押し倒されてしまう。
「しまった!?矢が…!?」
矢筒に手を伸ばすも空振りに終わり、矢が失くなってしまったことにメリアスは凍りつく。これではダスプレトサウルスを引きつけるどころか、エインを助けることも出来ない。
『ギィ〜!!』
『ギャイン!?』
だが、フォークが後ろから突進してダイアウルフを屋根から突き落とした。
『ギャン!?』
『グウウウ!?』
おまけにダスプレトサウルスの顔に突き落とされたダイアウルフが当たり結果的に怯ませることに成功する。
「今だ!早く来い!」
「行こう!」
『ギィー!』
今しかチャンスはないとフォークを抱えてエインはロングソードを引っ掛けて滑走する。
『グオオオオ!』
「うわっ!?」
それと同時にゴルゴノプスが飛び出し、滑走しているエインに向かってジャンプしてくる。
『ゴアアアアア!』
「ひえっ!?」
更にダイアウルフを払い除けたダスプレトサウルスがエインに気が付き食らいつこうとする。
『ギャアアア!?』
『グウウウ!?』
「わわっ!?あ…危なかったぁ〜!?」
ダスプレトサウルスの顎は飛び付こうとしたゴルゴノプスとぶつかってしまい、エインは何とかやり過ごすのだった。
「エインくん!?大丈夫!?」
「うん…結構危なかったけど…。」
「とにかく無事で良かった…!」
メリアスも会えて嬉しいとエインの無事を確認した後に抱き着くのだった。
「あの…他の人達は?」
「皆、無事だ。さあ、行こう。」
エインはメリアス以外の仲間達はどうしたのかと訊ねると、彼女は別の場所にいると三人を案内するのだった。




