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気を付けろ、『鬼門』はすぐそこにある

「よし、そろそろ出発するぞ。」


二十分ほど休んでそろそろ次のポイントへと移動しようとメリアスが声を掛ける。


「また移動かぁ〜…。」


「えぇ〜、もうこの子達と離れたくな〜い。」


『『プオオン…。』』


生徒達はまたあの悪路を進みたくない、或いはこの異世界で初めて出逢った癒しの存在であるコリトサウルスの子供達と離れたくないと言う意見でいっぱいだった。


「バカを言うな。ここは獣道でもあるんだぞ。つまりはあのタイラントドラゴンやワイバーンの狩場でもあり、このまま夜になれば奴らが現れるんだぞ。」


開けて見通しが良い場所だが、逆に言えば捕食者からも見つかりやすいことを意味している。


こう言う場所は獲物を捕る場所にも最適であり、捕食者に取っては縄張りの範囲内に入っている事が多いため、このまま居座るといずれ肉食性生物に襲われる危険性が出てくるのだ。


「じゃあ、この子達もいずれ…。」


「大丈夫ですよ。確かに彼らは被食者ではありますが、そこは頭数を増やすことで襲われにくくしているんですよ。」


それならそれでコリトサウルス達が襲われるのではとルシアンは心配するが、ラスコは生態学にも詳しいのかそんなことを言って励ます。


「とにかく我らは先へ急ぐぞ。帰り際に頼むぞエイン…エイン?」


気を取り直して出発する前にエインにコリトサウルス達のことを改めて頼もうとするが、返事がないことにメリアスは辺りをキョロキョロと見回す。


「エインはどうした?」


「あれ、そう言えばいないな?」


「便所じゃないのか?」


「小さいから見えないとか…何処かで寝ているとか…。」


仲間達に聞いて回るが全員が憶測で答えるため、確実な証言とは思えなかった。


「あれ、よく見たら女子生徒も何人か足りなくないか?」


「全く…団体行動が取れんのか?」


女子生徒も数人足りないとドランからの報告によりメリアスは頭を抱えていた。


「どうしますか?こんにゃことしてる場合じゃにゃいのに。」


「しょうがない、周辺を探すしかあるまい。この草原を中心にここにいない者達を探すんだ。」


心配のあまり猫の獣人特有の訛りが出るモナの言葉を聞いたメリアスは止むを得ないと草原内を手分けして探すように指示する。


「それと森の中には入らないようにするんだ。ミイラ取りがミイラ取りに合うぞ。」


これ以上の迷子や遭難者を増やさないために、捜索範囲を草原に限定して捜させるようにする。


「お〜い!何処に行ったんだー!」


「そろそろ出発よー!」


「見つかったか?」


「ダメだ…コリトサウルスばっかだ。」


群れの中を掻い潜りながら探すも、これと言って変わった様子は見られなかった。


『…キャンキャン!』


「あれ、君は確かエインくんが連れていた…。」


ルシアンは森近くに人影がいないか探しているとロボが吠えていることに気が付く。彼女は知る由もないが、ロボがいる場所はエインが最後に腰掛けていた場所だった。


『クゥン…キャンキャン!』


「あ、何処に行くの!」


ルシアンを見た後にロボは森の中へと入ってしまった。


『ギィー!』


「ちょっと…ああ〜、もう!?」


ロボの後を追うようにフォークもまた森の中へと入って行ってしまう。ルシアンがあたふたしている間に二匹の足音は遠退いていき、半分ヤケクソ気味に彼女もその後を追うのだった。


「ううっ…うわっ!?」


そんなことになっているとは知らずにエインは目隠しをされ、後ろ手に縛られた状態で押されながら森の中を進まされており何度か転びそうになっていた。


「さっさと歩きなさいよ、そんなことも出来ない訳?」


「きゃはは!キチンと前見なきゃケガするわよ〜!」


押していたのはエリーシャとその取り巻きである高飛車なギャルっぽい女子生徒達だった。


「僕を…何処に連れて行くの?」


「うっさいわね、あんたは黙って歩けば良いのよ!」


彼女達はエインの質問に答えることなく、一方的に前へと進ませていた。彼女達はエインが困り果てている様子を見て喜んでいた。


「ふん、この辺で良いかしらね。」


「あう!?」


満足したようにエリーシャはエインの進行方向に足を出して、彼の足を引っ掛け転ばせた後に目隠しを取る。


「くっ…ううっ…。」


視界を遮られ暗闇に目が慣れていたこともあり、目隠しを取られた瞬間に光が差し込んでエインは目が眩んでしまう。


「…さっきの草原じゃない?それにメリアスさん達もいない…?」


視力が戻って辺りを見回すとあんなにいたコリトサウルスの群れも、ここまで来るのに一緒だった仲間の姿がエリーシャ達以外に見当たらなかった。


「ここは何処なの?」


「うっさいわね、あんたは何か不思議な力に目覚めたんでしょ?それが何処まで役に立つか調べてやろうってんのよ。ありがたく思いなさい。」


見知らぬ場所に連れて来たエリーシャ達に質問するも、帰ってきた返答はよりエインを困惑させた。


「頭悪いわねぇ、だから役立たずの無能って言われんのよ。あんたはここから誰かの力に頼らず、自分の力で切り抜けられるかどうか試すってことよ。」


「まあ、あたしらは先に調査隊に戻るけどね。」


「あんた最近は周りの人達に甘えっぱなしなのよ。」


「言わばこれも愛のムチよ。良いわね?」


掻い摘んで解釈するに彼女達はエインをここに置き去りにして、彼一人だけでこの状況を切り抜けろと言っているのだ。聞こえは良いかもしれないが、明らかにこれはイジメの部類だった。


「でも…僕縛られてるんだけど…。」


「そんなのあんたの力で何とかしなさいよ!そんなことも分からない訳!?」


「んじゃ、先に帰ってるからヨロ〜。」


「あ、それとこのことチクったらぶち殺すからね。」


色々と捨て台詞を吐いたエリーシャ達は本当にエインを置き去りにし、来た道を戻って行ってしまう。


「……よいしょっと…。」


後ろ姿が見えなくなり、本当に置き去りにされたことに呆然となるエインだったが、慣れているためすぐに立ち直って、切り株のささくれにロープを擦り付けて切ろうとする。


「にしてもエリーシャも考えたじゃん?あいつをこの森の中に置いていくなんて。」


「あんな弱っちい奴なんか今頃モンスターの餌食になってるよ…。」


「あいつをイジメてあいつら…ワゲルって言ったっけ?本当あいつらは単細胞よね。」


話に出たワゲルとはエインとキオナを襲おうとしたいじめっ子達のリーダーの名前だ。彼らのやろうとしたことは彼女らの耳にも届いており最初は呆れていた。


「無能でガキだから迷子になってもおかしくないし、この森の中で迷えば証拠は出ない…もっと賢く生きなきゃね。」


呆れていたのは短絡的で下心が丸出しなやり方で始末しようとしたからだった。同じ(てつ)を踏まないようにと、自分達はこっそりと遠回しにエインを始末しようとしていたのだ。


「…でも、もしも無事に合流して私達のことを話したらどうするの?それに幾らなんでもこれってワゲル達とやってること同じなんじゃ…。」


しかし中にはここまでして始末することに疑問を覚えたり、やり方変わってはいるがぶっちゃけやろうとしていることは結局ワゲル達と変わらないのではと指摘する者もいた。


「はあ?忘れたの?あたしらが努力して手に入れた魔法やスキルが理不尽に使えなくなったのに、あいつは変な力に目覚めて王女様に気に入られてんのよ。きっと心の何処かであたしらのことせせら笑ってんのよ?そんなの許せる訳?」


ここまでやって今更怖気付いたのかと睨みを効かせながら、自分達の味わった辛酸や屈辱を口にするエリーシャ。


「それはそうだけど…でもこれってあたしらヤバいことしてるんじゃ……あれ?」


屈辱や辛酸がない訳ではないが、何も人の命を危険に晒すようなことまでする必要はないのではと口を開こうとするが信じられない物が目に入った。


「ん…?」


「は?あんた何であたしらより先に来てんの?」


エリーシャも何を見たのかと視線を前に移したら、手を縛っているロープをささくれで切ろうとしているエインの姿が目に入った。


「先に…?僕はずっとここでロープを切ろうとしてたんだけど…。」


エリーシャ達はメリアス達の所へ戻ったと思っていたが、引き返して来た上に彼女から先回りされたのかと聞かれて首を傾げるエイン。


「え…?どう言うこと?」


「あ…そっか、道を間違えたんだった。こっちよこっち。」


「ああ、そう言うこと。」


道を間違えたことに気が付いてエリーシャ達は正規ルートの方へと足を進める。それを見たエインも再びロープを切ろうとモゾモゾする。


「……あんた…まだロープ切ってんの?」


「…もうすぐだけど…。」


あと少しでロープが切れそうと言うところで再びエリーシャ達と顔を合わせたエイン。彼はエリーシャの顔が見たことがないほどに顔面蒼白としていることに唖然としていた。


「…切れた!……あ。」


「……嘘でしょ…!?」


ようやくロープを切ったエインは身体を伸ばしていると、見る見る内に血の気が引いていくエリーシャ達と目が合う。


「ちょ…まさかあたしらまで森の中でこいつと迷子になったの!?」


「そ…そんなぁ〜!?ヤダ〜!?」


認めたくないが、これはもはや認める他ならない。自分達はエインを森に置き去りにして報復しようとしが、自分達まで森の中で迷子になってしまったのだ。まさしく因果応報であった。


「見つかったか?」


「ダメだ、見つからない。」


「あの…ルシアンもいなくなっていましたが…。」


そのエインとエリーシャ達の行方を草原でメリアス達が捜索していたが、見つけることが出来ずに途方に暮れていた。


「もう時間が押している。このままだと今回のスケジュールは中止するしかあるまい。」


まだ日が高いとは言え、予定していたイーロスの街へ向かい国へ日帰りで帰って来るのは不可能だと判断し調査を中断しようとする。


「お前達は先に行け。私が残って彼らを引き続き捜索しよう。」


ところがシスカはここに残って引き続きエイン達を捜索し、尚且つ調査の中断に対して異を唱えた。


「ええ…こうなったら普通は中止するべきじゃ…。」


「イーロスへ行っても国へ帰ってこれないんじゃ…。」


だが、それに更に異を唱えたのは生徒達だった。キツい探索を早く切り上げられると思っていたのに、まだ続くのかと嫌な顔をしていた。


「そもそも行方不明者が出ているのに…。」


「大丈夫かな…これ以上はもう…。」


しかしながら中には行方不明者を心配し、これ以上の被害者や犠牲者を増やさないように引き返すべきだと言う様子を見せていた。


「貴様ら!まだ死体を見た訳でもないのに死んだと決めつけるな!誰かが姿を消しただけで投げ出そうとするな!これから先はそんな生半可なことでは生き残れないと思え!」


シスカは口々に不平不満を呟く生徒達に甘えるなと怒鳴りつけ、エイン達も本当に死んだかどうか分からないのに決め付けるなとまくし立てる。


「…とにかく君達はイーロスの街へ行け。場合によっては寝泊まりはあそこで出来るはずだ。」


「マジかよ…。」


「でも…確かにその方が現実的ね。」


叱咤激励されたことでまだ多少ショックは受けていたが、シスカの提案を受けて否定する声はなかった。少なくともこんな危険な場所で野宿するよりかはマシだからだ。


「しかし土地勘がないのに大丈夫なのか?」


「地図はある。問題ない。私達も後から合流する。」


「…そうか、吉報を待つぞ。」


ドランとメリアスは心配するが、シスカなら問題ないと判断して生徒達を連れて先を急ぐのだった。


「さて…まずは何処から探すか。あの子は確かここに腰掛けていたはずだ。」


残されたシスカは最後にエインがいた場所を探るのだが、彼の痕跡とそれとは別の痕跡を幾つか見つける。


「これは…犬の足跡か?それとまだ新しい人の足跡…。」


犬の足跡と言うのはエインが連れていたロボのことだが、もう一つの人の足跡はロボとフォークを追うように森の中に入っていったルシアンの物だった。


「ねぇ、ちょっと…誰も道を覚えていないの!?」


「あんただってこっちだって言ってたじゃない!」


「そんなこと言ったって…。」


エインを迷子にさせて始末しようとしたが、結局の所自分達まで迷子になってしまったエリーシャ達。


未知の危険生物がウヨウヨしている森の中で迷子になったとなれば、恐怖の余りパニックになってエインを差し置いてお互いに責め合いを始めるのも当然だった。


「そもそもあんたのせいでこうなったのよ!何とかしなさいよ!」


「ええ…何とかって…。」


しかしそれも束の間で糾弾の矛先はエインへと向けられ、エリーシャを始めとするギャル達は一斉に彼を責めるように睨む。


「あんたは道を覚えていないのかって話よ!責任取って調査隊の所に帰しなさいよ!?」


「でも…目隠しされてて何処をどう来たのか…。」


「何よ!使えないわね!?本当に無能!?」


目隠しをされていたし、ここへ連れて来た彼女らも右も左も分からないのならエインにはどうにもならなかった。


濡れ衣どころか責任転嫁までされた上に、挙句の果てに言われようのない罵倒や罵声まで浴びせられてしまう。


「ねぇ…早く戻らないと暗くなってくるよ…それになんか不気味な鳴き声とかするし…。」


取り巻きの一人の台詞でエインへの責任転嫁と罵詈雑言(ばりぞうごん)は一時的に止まる。確かに一刻も早く戻らないと野垂れ死には間違いないと満場一致になったのだ。


「だからどうにかするんでしょうが!あんたなんか方法ないの!?」


「…僕達がいなくなったことにメリアスさん達は気付いているだろうけど…。」


『ギャアギャア!』


「ひいっ!?それまで待ってられないわよ!?」


メリアス達のことだからきっといなくなったことに気付けば探してくれるだろうが、周囲の肉食生物達はそれまで待てないと言わんばかりに不気味な鳴き声を発していた。


「あんたのバチバチってしてたあの力で何とかしなさいよ!」


「さすがに帰り道を探すのは出来ないよ…それに人の考えが分かるのは一定の間隔だけだし…。」


今度は生体電流で何とか解決しろと言ってくるが、相手の次の行動は読めてもナビゲーションに特化した能力ではないためどうすることも出来ない。


「本当に使えないわね!どうすんのよ!?」


「そんなこと言ったって、こっちだって聞きたいわよ!」


エインをディスるもののどうしようもならないと、再び仲間同士で言い争う。


「…!待って…何か来る…。」


「はあっ!?何か来るって何よ!?」


ハッとなったエインは何かが近付いて来るのを感じ取る。それを聞いてエリーシャ達は怯えた様子を見せて固まり合う。


「これは……うわ!」


「ひっ!?」


何が近付いて来るのか気付いた瞬間に茂みから、獣らしき影が飛び出してエインを押し倒した。


『キャンキャン!』


「あはは!?くすぐったいよ…。」


獣ではあったが押し倒したエインを捕食するようなことはせずに、寧ろ友好的な様子を見せるようにエインの顔を舐めていた。


「ロボ…やっぱり君だったんだね…。」


『キャン!』


獣の正体はエインの相棒であるロボだった。エインは微笑みながら抱えるとロボも嬉しそうに尻尾を振りながら吠える。


「でもどうしてここに?」


『クゥン…キャンキャン。』


ロボは少し困ったような様子を浮かべて、何かを伝えるように吠える。


「僕を探して?ありがとうね。」


「え…あんた、もしかしてその犬の言っていることが分かるの?」


端から見るとエインはロボの言っていることを理解しているように見えるためエリーシャ達は信じられないと言った様子だった。


『ギィー!』


「きゃあ!?今度は何よ!?」


今度は見慣れない三本角の四足獣のようなモンスターが茂みから出てきたことにエリーシャ達は慌てて後退りする。


「フォーク!」


『ギィー!ギィー!』


「何で救助隊じゃなくてあんたのペットが来るのよ…。」


ロボを降ろしてエインは共に来てくれたフォークの頭を撫でるのだが、エリーシャ達は来たのが人じゃないことにガックリと肩を落としていた。


『ギィー。』


「え?他にも人がいるの?」


「もしかして救助隊が…!?」


フォークの生体電流を読み取ったエインは他にも人がいると知り、それを聞いていたエリーシャ達は顔が明るくなる。


「はあ…はあ…待ってぇ〜…。」


「あれ、あんたは…ルシアン?」


茂みを掻き分けながら二つの柔らかい果実と編み込んだ後ろ髪を揺らしながらルシアンが息を切らしながら現れる。


「あれ…あなた達は…。」


「どうしてあなたがここに…。」

  

思いも寄らない顔見知りとの再会に掛けるべき第一声がそれではないのに、こんな状況も相まってお互いにキョトンとしてしまう。 


「そうだわ!あなたが来たってことは他に人が…!」


エリーシャは思い出したように辺りを見回す。ルシアンが来たのなら、他の救助隊がいてもおかしくないはずだ。


「君のワンちゃん達が何処かへ行ったと思ったら…それよりも早く戻らないと!」


「戻らないとって…もしかしてあなた一人で…?」


ルシアンも思い出したように慌てて追いかけたために引き返すべきだと警告するが、それはつまり彼女は一人でロボとフォークの後を追ってきたことになる。


「あ…あんた一人?じゃあ…もしかして道とか覚えてる…?」


まさかと思いエリーシャはルシアンにここまで道のりを訊ねる。


「……あ。慌てて追いかけてきたから…目印を付けていなかった…!?」


「何やってんのよ!?」


口振りやここまで慌てて来たことから、エイン達を探しに来たのは間違いないだろうが、帰り道が分からずルシアンまでもが共に迷子になってしまったのだ。


「そんなぁ〜!?助かったと思ったのに〜!?」


「こんな所で死ぬのはイヤ〜!?」


上げて落とされたことでエリーシャの取り巻き女子達も耐え切れずに座り込み泣き出してしまう。


「…ロボ、僕達の匂いを辿れる?」


『キャン!』


それを見ていたエインはロボに匂いを辿れるかどうか頼み込むと、了承したように吠えたロボは地面の匂いを嗅ぎ回る。


『キャンキャン!』


「向こうだね。あっちだよ。」


「…あ、そうか…犬なら匂いを辿れるわね…。」


「「「良かったぁ〜…。」」」


「早く案内しなさいよ!」


ロボの嗅覚のお陰でメリアス達と再会出来る希望が見えてきた。そのため一同は水を得た魚のように生き生きし始める。


「それにしてもあなた…あの犬に話し掛けていたようにも見えたけど…。」


「うん、何でか出来るようになったの。」


ルシアンは興味本位からエインがロボと意思疎通が出来ることを訊ねていた。


「もう疲れたぁ〜…。」


「休みたい〜…。」


エリーシャの取り巻きの女子達は緊張の糸が切れたためか、暫く歩くと疲れて座り込んでしまう。


「早くしないとメリアス達が…。」


「先に行きはしないわよ。私達がいなくなって待機しているはずよ。」


置き去りにはしないだろうがそれでも早く合流したかった。心配させて待たせていることもだが、周囲にはどんな危険な生き物がいるか分からないからだ。


「でも喉渇いた〜!?」


「私も水筒の水を全部飲んじゃった…。」


しかしながら生きていく上で肝心な水が底をついたのは痛手だった。後先考えずにガブ飲みしてしまったため、彼女らは空になった水筒を手に途方に暮れていた。


「待って…これは水の流れる音…?」


しかしタイミングが良いと言うべきかエインは流れる水の音がすると話してくる。


「え?水?音?そんなの聞こえる…?」


「適当なこと言わないでよね!」


だが、ルシアン達は耳を澄ましてみても不気味な生き物の鳴き声がするだけで、水流はおろか雫が落ちる音すら聞き取れなかった。


「でも確かに聞こえる…向こうに川があるのかな?」


「それ…本当…!?」


出鱈目を言っているようには思えないエインの顔に、ルシアンも彼を忌み嫌っていたエリーシャ達も希望に満ちた顔になっていく。


「やった!やっぱり川があった!」


エインを先頭に進んでみると、綺麗な水が流れている川が本当に目の前に広がっていたのだ。


『ギィー♪』


フォークも喉が渇いていたらしく、一直線に川に口を付けて水を飲み始める。


「み…水〜!?」


「良かったぁ〜!」


それに続くようにルシアン達も川に近付き、はしたないと分かっていながらも川に口を直接付けて水を飲み始める。


「ぷはっ!生き返るわ〜!」


「ありがとう、エインくん。」


「う…うん…。」


水を飲んで元気が出た女子達。ルシアンは水を見つけてくれたエインに感謝するが、やはり慣れていないのか彼はモジモジしてしまう。


『ウウウッ…!』


「どうしたの?」


するとロボが牙を見せて唸り声を挙げており、何かに威嚇しているようにも思えた。


「ちょ…何であたしらを威嚇してんのよこいつ…!?」


「ちゃんと(しつけ)してあるの!?」


エリーシャ達がエインを敵視しているのを見抜いたのか、威嚇しているロボの視線の先には彼女らがいた。


『ウウウッ…!』


「は…?」


ところがロボはエリーシャ達ではなく、彼女らがいた場所の近くにある()()に対して威嚇をしていた。


「これが…どうしたってのよ?」


「あれ…何処かで見たことあるような…。」


その足跡の特徴は何処かで見たことがある上に指が三本あることだった。


「この足跡は…国を攻めてきたあのドラゴン達の足跡!?」


「はあ!?何でそんなのがあんのよ!?」


それを見たルシアンは国を攻めてきたドラゴン…ティラノサウルスを始めとする肉食生物の内の何かの足跡だと見抜き一同は騒然となる。


『ウウウッ…!』


「ロボが警戒してる…まだ新しい足跡なのかも…。」


「ってことは…まだ近くにあのドラゴンがいるかもしれないってこと!?」


ロボが威嚇しているのはこの足跡の持ち主がまだ近くで彷徨(うろつ)いている可能性があったからだ。


「…早くメリアスさんの所に戻るわよ!?でないとあたしら揃ってそいつの餌食になるわよ!?」


水筒に水を入れ、足跡の持ち主が戻って来る前に大慌てで川から離れようとする。


『『『ヒヒー!』』』


「ぎゃっ!?な…今度は何よ!?」


だが、しかし川を隔てた茂みから甲高い鳴き声がしたと思ったら、ヤギくらいのサイズの小さな馬達がバシャバシャと群れを成して川を渡って来たのだ。


「皆!早く木の上に!?」


「はあ!?何で!?」


「いいから早く!?」


突然エインが慌てた様子で木に登るように示唆してくる。ただでさえ訳が分からないのに、どう言うつもりなのかと問い詰めようとするがエインはロボとフォークと共に木に登りながら手を伸ばしていた。


「気安く触るんじゃないわよ!」


「うっ…!?」


今更ながらエリーシャはエインから差し伸べられた手を乱暴に払い除けて怒鳴りつけてくる。


「ご…ごめんなさい!?」


「ちょ…何すんのよ!?触るんじゃないわよ!?」


一瞬は怯んでしまうもこのままでは危険だと分かっているエインは、エリーシャの腕を掴んで無理やり樹上へと引きずり上げる。


「触るな!離せ!離せって言ってるでしょ!?この無能!?」


『グアアアア!』


エインの腕を振り払おうと暴れるエリーシャだったが、地獄の悪魔の囁きに似た恐ろしい咆哮が近くで聞こえたことに一同は硬直する。


「何か来るんだよ!ヒラコテリウムはそれで逃げてるんだ!?」


「「「きゃあああ!?」」」


ヒラコテリウムとは先程から周囲を取り囲むように逃げているヤギサイズの馬達のことだ。先程の咆哮の主を恐れて逃げていると、さすがのエリーシャ達も理解して慌てて木の上に登る。


『『『ヒヒー!』』』


「はあ…はあ…それにしても随分小さな馬ね…。」


木に登って一安心しているとたくさんのヒラコテリウム達が水しぶきを上げながら川を渡って逃げているのが目に入る。


『グアアアア!』


群れが途切れ途切れになった瞬間に茂みからヒラコテリウムとは異なる生物が死神のような叫び声を挙げながら現れたのだ。


『グオオオオ!』


『ヒギャ!?』


その生き物は頭にある角の用途を説明するかのように、頭を振るって野牛のようにヒラコテリウムの一頭を高く突き上げる。


「うわっ!?」


「きゃあっ!?」


突き上げられたヒラコテリウムはエイン達がいる枝にぶつかったのだ。落ちることはなかったがヤギサイズとは言えここまで飛んでくるとは思ってもいなかった。


『グルルル…!』


枝に当たって地面に落ちて来たヒラコテリウムは川に落ちてビクンビクンと痙攣(けいれん)していたがやがてピクリとも動かなくなる。


そしてヒラコテリウムを見ていたのは悪魔や鬼を彷彿とさせる二本の角と刺々しい鱗を持ち、前脚が異様に小さい割には後ろの二本脚はガッシリと発達していた。


「嘘…あれはワイバーンもどき…!?」


その生き物は悪夢のような一夜の前日に現れたワイバーンもどきだった。


「あれは…『カルノタウルス』だよ…!?」


しかしワイバーンもどきとは仮の名前であり、この生き物の本当の名前は『カルノタウルス』と呼ばれている。


「名前なんかどうでも良いわよ…!?」


「察するにあたし達…あいつの縄張りに入っちゃったってこと…!?」


メリアス達と合流する前にエイン達は意図せずカルノタウルスの縄張りに迷い込んでしまったようだ。

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