同じ穴の『獅子』身中の『蛇』〜前編〜
「な…何ですかあれは…!?」
「もしかして巣穴だったのかな…。」
怒ったステゴサウルスから逃げるために洞窟に飛び込んだ二人だが閉じ込められてしまい、その上で洞窟の最奥で何者かの眼光が光っていることに警戒していた。
「キオナ、下がってて…。」
「いいえ!王女として民を守るのは…。」
「でも僕はキオナを守らなきゃいけない!そう言う人になったんでしょ!?」
「…!ですが…。」
互いに守り合うようにするキオナとエイン。その間に眼光は徐々に荒い息遣いをしながら近寄って来る。
『グルルル…!』
「…誰なんですか?」
ロボが威嚇しながらエインも何者かと訊ねるも眼光の持ち主はこちらをジッと見つめるだけだった。
「あ…ああ…あああ…!?」
「…え?人なの…?」
ところが持ち主は次第に人の声を発するようになり、目の前にいるのが獣ではなく人間であることに気が付く。
「わああん!?良かったー!?人だああぁぁ!?」
「うぶっ!?」
暗闇から飛び出したのは魔法使いのような格好をした二十歳ほどの金髪の女性で、彼女は泣きながらエインに抱き着いてそのまま押し倒してしまう。
「ん〜!?んん〜!?」
対するエインは顔面を包み込む、柔らかくて温かい未知の感触に驚き暴れていた。
「わああん〜!?怖かった〜!?ずっと一人だったから心細かった〜!?」
二十歳のような見た目だが何処か幼さがあって、ずっと洞窟の中で一人ぼっちだったらしくこんなに泣きじゃくるのも当然だった。
「むぐっ…んん…!?」
「あの…いつまでそうしてるんですか。」
このままだとエインは彼女の大きな胸に押し潰されそうであった。キオナは含みのある感情が一瞬だけ見え隠れし、押し殺すようにその女性に話し掛ける。
「あ…ご…ごめんね!?大丈夫!?」
落ち着いたのか女性は慌ててエインから離れ、ズレていた眼鏡を掛け直す。先程光っていた眼光の正体は眼鏡のレンズだったのだ。
「ぷはっ!?…あ…あなたは…?」
「大丈夫ですか?エイン?」
対するエインは呆然とした様子で尻餅をついていた。抱かれたのは幼少の頃に両親からされたぐらいなため、他人の大人の異性から抱き着かれたのだから尚更だ。
「私はアークウィザードのキャロラインです。キャラバンのボディーガードをしていました。」
「キャラバン?」
「各地を旅して商売や調査を行う人々のことですわ。モンスターや盗賊から身を守るために冒険者などを雇うとは聞いたことがありますが…。」
この女性は行商人達が雇ったアークウィザードのキャロラインだと言うことが判明し、それ以外に気になる疑問点が浮上した。
「もしかして森の中で狼煙を上げたのはあなた達ですか?」
「狼煙…もしかして私の仲間がきっと…。」
例の狼煙を上げたのは話にあったキャラバンの人間か、或いはそれこそキャロラインの護衛仲間が上げたのだろうと互いに考える。
「と言うことはやっぱり君達は私達を助けに…!?」
「えっと…そのはずだったんですけど…。」
やはり救助が来てくれたとキャロラインは大喜びだったが、二人は気まずそうな雰囲気で顔を見合わせる。
「僕達もここに閉じ込められたみたいで…。」
「ええっ!?そんなぁ〜…!?」
救助しに来たのに自分達まで要救助者になってしまったことに苦笑いするも、キャロラインは上げて落とされた気持ちになりヘナヘナと腰を落としてしまう。
「ですが、この岩を退ければ外に出られますよ。それに今頃リオーネ達もこちらに向かっているはずですよ。」
「そ、そうなんですか?良かったぁ…まあ、救助隊にしては若過ぎるなあって思ったけどね!」
救助者が自分達だけではないと知ったキャロラインは、無理やり大人びいた様子を見せるように眼鏡をクイッとさせる。
「そう言えばキャロラインさんは何処からここに?」
「と言うよりも何故この洞窟に?」
無理に大人びいた様子を見せるキャロラインに苦笑いしていた二人は、そもそも彼女がどうして洞窟の中にいるのか気になっていた。
「あ…私達は最初は次の国に向けて旅をしていたのですが…変な流れ星と、雷みたいな爆音がしたと思ったらいつの間にかこんな鬱蒼とした森の中にいて…。」
思い出したようにキャロラインはこれまでの経緯を話すが、エインとキオナはその話には既視感があった。
「もしかしてそれって…あれのことかな?」
「恐らくはそうでしょう。…あの、ついでで聞きますがもしかしてあなた達は魔法やスキルが使えなくなっていませんか?」
流れ星と雷のような爆音とは、隕石が飛来し落ちて来た轟音のことだろう。そこでキオナは気になっていたことをキャロラインに質問する。
「え?ええ…よく知ってますね?護衛だって言うのに、突然魔法やスキルが使えなくなって…甚大な被害が出てしまって…。」
「…あのですね…ここは…。」
サプライズと言う訳では無いが、この危機的状態を知らせようとしていたキャロラインは逆に度肝を抜かれる羽目になり、更にキオナから信じられないことを教えられる。
「ここは私達の知る世界とは別の…異世界!?」
「状況的に考えてそうとしか考えられないんですよ。」
それは自分達が今いる世界が異世界であると言うことでキャロラインも到底信じられないと言う様子だった。
「確かに…見たことがないドラゴンにも襲われましたし…。」
「ドラゴン…もしかして前脚が短くて、二本脚の翼のないドラゴンでしたか?」
「…見ていないのに具体的な特徴を何故言い当てられるのですか?」
ドラゴンと聞いてエインは城に攻め込んで来たティラノサウルスのことではと考え質問し、またしてもキャロラインは度肝を抜かれることとなった。
「私達の国も襲われたんです。それもドラゴン以外の複数のモンスターから…それにより大勢の犠牲者が…。」
「…!あなた達も相当苦労したようね…私達も…その…犠牲者が何人か出たけどなんとかドラゴンから逃げ切って…。」
犠牲者と聞いてキャロラインは気の毒そうな様子を見せる。しかしながら彼女も彼女で色々と大変な思いをしてきたようだ。
「だけど、馬が死んじゃったから動けなくなっちゃって…そこで私達は救助が来るまでの間に、食料を調達しようと思ってたんだけど…うっかり穴に落ちちゃって…。」
機動力が失くなったことでキャラバンは動けなくなり、キャロラインは食料調達をしようとしたがうっかり洞窟に落ちてしまったようだ。
「そこからは出られないんですか?」
「私の身長より高くて届きませんでした〜!?」
身長は三人の中では無論キャロラインの方が一番高いのだが、彼女でも落ちた穴に手が届かないのなら…そもそも届くのならずっとここにはいないはずだ。
「肩車でも届きそうにないですか?」
「…それなら多分…。」
それなら肩車でも届かないかと言われるとそうではないようだ。
「キオナ、もしかしてその穴から出るの?」
「ええ、ひょっとしたら私達の探している要救助者の方々と出会えるかもしれませんし、部隊長のことですから二つに分けて、そちらに行っている可能性もあります。」
ここで待つのも有りだが、やはり自ら動いて先に要救助者の確認をしようと考えていた。それに救助隊の何人かが既にそちらに向かったかもしれないからだ。
「その穴の場所は分かりますか?」
「うっ…それなんだけど、この暗さだから何処をどう歩いて来たかは…松明は全部燃え尽きちゃったし…。」
キャロラインの話によると思ったよりもこの洞窟は入り組んでおり、暗さと相まってちょっとしたダンジョンのようになっていた。
それならまだ良かったが魔法もスキルも消失したこの世界の、この洞窟の中でキャロラインはほぼ丸腰状態で彷徨っていたのだから再び不安な様子を見せていた。
「そうだ。ロボ、キャロラインさんの匂いを辿れる?」
『キャン!』
エインはロボに視線を合わせて頼み込むと、ロボは尻尾を振りながらキャロラインに鼻先を突きつけた後で地面に残る彼女の匂いを辿り始める。
「あの子は…犬なの?見たことがないけど…。」
「そうだよ。ロボって言うんだよ。」
ロボの後を追いながら三人は洞窟の奥へ奥へと進んで行く。
「…エイン、随分とキャロラインさんと仲がよろしいようで?」
「ん?どうしたの?」
何とかキャロラインを励ますつもりで会話していたが、後ろから見ていたキオナはニコニコと笑顔だが何処か面白くないと言う雰囲気を滲み出していたがエインはまったく気が付かなかった。
「うっ…何かこの子…歳下の子供なのにスゴい迫力…。」
しかしながらキャロラインは間接的とは言え、自分に向けられているキオナからの嫉妬心に顔をしかめる。
『…キャン!』
「あれ、もう着いたの?」
ロボが吠えて振り返るのを見て、最初は遠く離れた目的地にもう辿り着いたのかと思っていた。
『クゥン!』
「あ、骨を見つけたんだね。良かったね。」
口には立派な骨が咥えられており、ロボは嬉しそうにしゃぶっていた。
「えっ…!?骨!?」
犬の可愛らしい仕草に微笑むも骨が見つかったことに三人はギョッとなる。
「ふ…二人共…あれ…!?」
キャロラインも何か気が付いて震える手でその先を指差すと、そこにはたくさんの骨が散らばっていたのだ。
「こ…こんなにたくさんの骨が…!?」
「もしかして…ううん、もしかしなくてもここは何かの巣穴だったんだ…。」
目の前に散らばる骨は明らかに丁重に葬るためではなく、この洞窟を巣穴にしている家主が捨て去った物だろう。
「一刻も早くここから出ましょう!」
「ロボ!今は骨よりも出口を探して!」
『キャン!』
ぐずぐずしていると自分達もここで骨を埋めることとなり、家主が戻って来る前に急いでキャロラインが落ちて来た穴へと急ぐのだった。
「くそ…なんたってこんな時に…!?」
「皆!不用意に前へ出ようとするな!」
その頃、エインとキオナを捜索するリオーネ達は思わぬ足止めを食らっていた。
『『『ウオオオン!ブオオオン!』』』
目の前にはさっきのステゴサウルス達が背中の板を真っ赤に染め、尻尾を振りかざしながら威嚇していたのだ。
「先程までは側を通っても気にも留めていなかったのに…。」
『ブオオオン!』
戦士の一人が一歩前に出るとステゴサウルスが後ろ脚で一時的に立ち上がり、前脚を降ろすと同時に地面を着いて威嚇してくる。
「かなり攻撃的になっているな…どう言うことだ?」
「き…きっとあの無能が俺らの邪魔をしてんだよ!?」
原因はいじめっ子達がステゴサウルスの子供を攻撃したからによるが、その原因である彼らはエインに罪を擦り付けようとしていた。
「何でそんなことを…。」
「そ…その…キオナ姫に卑猥なことをする気だろうぜ!?俺、聞いちまったんだよ!?」
これも根も葉もない嘘で、最初はあの衛兵がキオナだとは思っていなかったが、こうすることである人物の平静さを乱せると知っていたからだ。
「ひ…姫様に…!?おのれエインめ!?特殊な力に目覚めたからと言って、私達の妨害だけでなく姫様に何と言うあられもないことを!?」
この中では階級は上であるリオーネは、キオナがエインに酷い目に遭わされていると被害妄想をしてしまい、その上で彼が妨害工作までしたと勘違いしたことで敵意を剥き出しにする。
「一刻も早く姫様を探すのだ!?そしてエインの奴め!もしも万が一のことがあれば…拷問に掛けてくれる!?」
(何とか…無能のせいに出来たが…何とか早くあいつらを見つけて始末しねぇと…!?)
(おい、役立たずを殺すのは賛成だがまさかキオナ姫まで殺す気か!?)
(知らなかったとは言え、俺らが無能と一緒に殺そうとしたことがバレたんだぞ!?何とかしねぇと俺らは破滅だぞ…!?)
リオーネがステゴサウルス達と睨み合う中で、いじめっ子のリーダーは仲間達に隠蔽工作を完遂させるためにエインとキオナを始末させようとする。
しかしこれは平たく言えば王家の者を殺害し、国家反逆罪どころか国家転覆罪に値することだ。仲間達は尻込みするも、こうでもしなきゃ自分達は破滅すること間違いないと躍起になっていた。
「あ、ここです!ここから落ちたんです!」
キャロラインは見覚えのある道と、洞窟の天井にパックリと空いた大きな穴を見て歓喜する。
「三人で肩車してもギリギリのようですわね…。」
しかし穴の深さは思ったよりもあり、全員で肩車しても届くかどうか分からなかった。
「ん…ねぇ、穴の側に何か垂れ下がっていない?」
「蔓かしら?でもあれに手が届けば…。」
穴の縁には蔓が垂れていて、そこまで手が届けば蔓を伝って外に出られそうだった。
「私が一番下になるわ。その…私が一番重いでしょうし…。」
「じゃあ、僕がその上に載るからキオナは僕の上に…。」
「いいえ、私の上に載ってください。私はこれでも鍛えているのであなたよりも力があるはずですよ!」
一番下にキャロライン、二番目にエインが連なるようにしようとするが、自慢げにキオナはガッツポーズをして二番目になろうとする。
「でも王女であるキオナを踏みつけにするのは…。」
「今更それを言うのですか?」
「…王女様…それにキオナって何処かで聞いたことがあると思ってたけど、あなたってグランドレイクのお姫様のキオナ姫!?」
エインの台詞を聞いたキャロラインはキオナが、有名国家も含めて顔の知れた王族であることに気が付き徐々に青ざめていく。
「し…失礼しました!?キオナ姫様だとは知らず…!?」
「今はそれどころではありません。ここから脱出するためにも…エイン!私の上に載りなさい!そしてあの蔓を掴んで先に脱出し、蔓を降ろすか不可能なら助けを呼んでください!」
「…分かりしました。」
キャロラインは土下座して謝罪するも、今は脱出を優先させるべくキオナはキャロラインとエインに指示を出すのだった。
「さあ、載ってください。」
「失礼します。」
まずはキャロラインが屈んでその上にキオナが載ってから壁伝いに立ち上がり肩車をする。
「さあ、エイン。私達の上に!」
「それじゃあ…失礼します。」
残るエインは先に肩車をしたキャロラインとキオナを伝って上へ登るだけだ。
「ふふっ…ちょっとくすぐったいわ…。」
「ご…ごめんなさい…。」
最初はキャロラインの身体を傷つけないようによじ登るが、その優しい触り方が逆にくすぐったかったらしくクスクスと笑わせてしまった。
「うふふっ…確かにくすぐったいですね。」
「キオナ…ごめんね。」
「いいえ、エインなら構いませんわ。」
今度は歳が近くて、キャロラインと比べると身体は発達中で膨らみかけのキオナの身体をよじ登るエイン。同じ反応されるがキオナは何処か嬉しそうだった。
「ねぇ…蔓まで手が届きそう…?」
「もう少し…!」
苦しそうな様子で踏ん張るキャロラインとキオナのために精一杯手を伸ばすエイン。指先が蔓の先端に触れかけており、あと少しで掴めそうだった。
「く…く…く…!?…やった!!」
「エインくん!偉い!」
「あれ…これ…。」
踏ん張って限界まで身体と腕を伸ばしたエインはようやく垂れていた蔓を掴んだのだった。しかし不思議とその蔓は妙に温もっており、若干ピクピクと動いているようだった。
『ガオオオオ!?』
「ぎゃあああ!?」
蔓の先には木があると思ったら獰猛な獣の本体が目に入り、獣は怒りと驚きを交えた咆哮を挙げたことでエインは驚きバランスを崩してしまう。
「きゃあ!?エイン!?」
「何!?どう言うこと!?」
バランスを崩して落ちて来たエインに、キオナもキャロラインも何事かとバランスを崩して倒れてしまう。
『グルルル…!』
「し…獅子…!?」
上の穴から壁の出っ張りを伝って獣が降りてくる。見た目はライオンのようだが、鬣は短くて体格は倍近くはありそうなサイズだった。
「いたた…まさか蔓だと思ってたのは『ホラアナライオン』の尻尾だったなんて…!?」
「ホラアナ…ライオン?と言うことはここはあのモンスターの巣穴だったのですね…。」
目の前にいるのは主に洞窟などを巣穴にしていた『ホラアナライオン』と言う獣であり、先程見つけた骨はこのホラアナライオンが残した物だろう。
『グルルル…!』
『ウウウッ…!』
『ギィー!』
ホラアナライオンは体勢を低くして唸っており、ロボもそれに倣ってか体勢を低くして唸りながら睨みつけていた。フォークは角を振りかざすように威嚇していた。
「エイン、あのモンスターを大人しくさせられますか?」
「それが…さっきからピリピリ伝わって来るんだ…『私の子』とか『奪った奴』とかよく分からないがことが伝わって来るんだ…。」
キオナはエインならば鎮められるのではと考えたが、ホラアナライオンは空腹や縄張りとは別のことで殺気立っているために止められそうにないと返される。
『ガオオン!』
「危ない!?」
ホラアナライオンはジャンプして三人に飛びかかるもキャロラインは左側に、エインとキオナは右側に飛んで回避するのだった。
「あっ、服が…!?」
助かったと思ったらビリリと言う音と共にキオナが衛兵の鎧の下に着込んでいた服が破けてしまう。
「この石に服が引っ掛かったみたいだね。けどこれ…。」
「スゴく綺麗ですわね…。」
破けたのは尖った石に服が引っ掛かったからだったが、その石は不思議と尖っていて黒い艶を放っていた。
「二人共!?危ないですよ!?」
『グルルル…ガオオン!』
ホラアナライオンは石に見惚れていた二人に狙いを定めており、にじり寄った後にそのまま二人に飛びかかる。
『ギィー!』
『グアアア!?』
だが、横槍を入れるようにフォークがホラアナライオンの脇腹に突進し吹き飛ばす。
「それでこれからどうするの!?結局、穴からは出られそうにないし…!?」
「それは…うわ!?」
ここがホラアナライオンの巣なら、早い所脱出したところだか頭上から再び何かが落ちて来た。
「し…死んでる…!?」
上から落ちて来たのはオルニトレステスの死体であり、強い力で骨ごと潰されたような有様になっていた。
『シャアアア!』
「きゃああ!?こ…今度は蛇!?」
死体が落ちて来た頭上の穴を見てみると、そこには大蛇がいて舐め回すように見つめていた。
『シュシュシュ…!』
「こ…こんなに大きな蛇…見たことありません!?まさかバジリスク…!?」
元の世界でもバジリスクと言う蛇のモンスターには何度も手を焼き、英雄達も死にそうになったことがあるが、それが目の前に現れたのかと戦慄するキオナ。
『シャアアア!』
「うひゃあ!?」
大蛇の口は人を容易く呑み込めるほどに大きく、洞窟のように真っ暗な喉の奥が迫って来たためエインは咄嗟に避け、大きな口は近くの地面にめり込むのだった。
『ティタノボア』。現存する大蛇の中で最大はアナコンダとされるが、ティタノボアは十五メートルもあり胴の太さも子供の身長と同じぐらいで地球の歴史上では正に最大の蛇とされている。
『ギシャアア!』
「あっ!?」
「あう!?」
「エインくん!?キオナ姫!?」
ティタノボアは鎌首を上げたかと思えば今度は長い身体をエインとキオナを締め上げるように巻き付いてくる。
身体の大きな蛇は毒などは持たないが、代わりに筋肉の塊とも言える長い身体で獲物を締め上げ圧死させるのだ。
『シュシュシュ…!』
「あっ…きゃっ…!?」
「うっ…ぐっ…!?」
一説によればティタノボアの締め上げる力は自動車を潰せるほどであり、言わば生きたプレス機のような物であり、下手に力が加われば小枝を折るように背骨が折れてしまうだろう。
「二人共!?止めて!?」
『ガウ!?ガウ!?』
キャロラインはロボとフォークと共に何とか二人を助けようと杖で殴ったり、噛み付いたりするが長い筋肉の塊はビクともしなかった。
『グオオオオ!!』
『ギシャアア!?』
「えっ…!?」
ところが自分達に対して殺気立っていたはずのホラアナライオンが、どう言う訳かティタノボアの頭に喰らいついたのだ。




