18:50分過ぎ
凍りついた心を溶かしてくれた。
確かに心は溶けた様に思えた。
けれど、私の心は麻痺してしまっていてもう取り返しのつかない様に思えた。
表面の分厚い氷だけが溶けてその他の氷はまだ張り付いたまま私を離してはくれない。
だけど初めて表面の氷が割れて溶けた。
初めて希望が見えた。
“何があったのか”
この状況で浮かんでくる当然の質問。
だが、彼は何も言えない私を見据えて深くは聞かなかった。
ただ、私が泣き止むまでそばにいてくれた。
……わかってしまった。
“彼は私のことを受け入れてくれると。”
私は、卑怯だ。
私は本当のことは言っていないし、言えない。
本当のことを言えば…きっと距離を置かれてしまうから。
…きっと私の目の前から去ってしまう。
もし許されるのなら一つだけ。
真実を知ってしまっても見捨てないでと願った。
「何を隠しているかは聞かない。そんな事をしたらキミはいなくなってしまうでしょ。」
そう言い終わると彼は微笑んだ。
私の心の奥底の汚い卑怯な部分を見透かされた様だった。
「…もし。犯罪者だったとしても驚かないけど。」
冗談ぽく笑い肩を揺らし、私の反応を見ているかの様だった。
私はさらに罪悪感が増して、目頭が熱くなるのを感じる。
とうとう涙腺が決壊し、目から大粒の涙が溢れるのを感じた。
「僕のせい⁉︎」
朔は慌てふためき背中を撫でてくれた。
夜の18時50分を過ぎていた。