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首席の少女③

 王都にあるハウエル侯爵の屋敷への帰り道、アサヒはさっそく今日の出来事をアルに話した。


「……アル兄様、なんで嬉しそうな顔してるの?」

「ん……?いや、すまんすまん、確かにセドリック団長も意地が悪い。今日はハナを連れててよかったな」

「それは、そうなんだけど」

「アル、なかなか話が分かる男だニャ。ハナはずっとアサちゃんといっしょニャ」

「ハナ………」


 ハナにお留守番をさせようと思ったのが、到底無理な話だったようだ。すでに隠れる気もないようで、アルとアサヒの間をスタスタと歩いている。


「この時期の遠征は毎年、魔法学校の新入生の成績上位者が選ばれるのが習わしだったから、もしかしたらアサヒが選ばれるかもしれないとは思っていたんだ」

「えっ!そうなの?」


 アルは笑顔で頷いた。


「今回の遠征で騎士学校の生徒も同行すると聞いただろう?魔法学校の生徒が新人なこともあって、何かあったときにフォローできるように、騎士団は団長クラスの騎士が、騎士学校からは選抜で勝ち抜いた生徒が選ばれる」

「うん」

「実は、その生徒の一人は僕なんだ。思ったとおり、アサヒと遠征に行くことが分かって、つい顔に出てしまったみたいだ。遊びではないが、楽しみだ」


 アサヒの驚いた顔を見て、アルは「ふふっ…」と微笑んた。


「アル兄様、選抜なんだ!小さい時から頑張ってるもんね。それにしても、そんなに遠征に行きたかったんだね」


 アルは微笑んだまま一瞬、その動きを止めたが、すぐに「そ…、そうだ」と応え、咳払いをした。


(アル、ハナは分かってるニャ)


「それに、マリア嬢とは幼馴染だから、今度アサヒに彼女のことも紹介しよう」

「マリアは私に興味なさそうだったけど……」

「マリア嬢は昔から魔法にしか興味がないというか…」

「首席になるくらいだもんね」

「とても勉強熱心で努力家の彼女は、実力で認められたいという気持ちが強いようだ。まぁ、他にも理由はあるんだが。特別扱いされることをとにかく嫌うんだ。立場上、彼女を特別視しない方が難しいというのに無理を言う。こんなことを言ったら不敬と言われそうだが、僕たちは知った仲だからな」

「マリアは特別なの?」


 アサヒの質問に、アルは目を丸くした。


「もちろん。あれ、アサヒ知ってるよな…?」

「え…?」

「彼女は、この国の第二王女だ」


(………!!?)


「そう…、だったの…?」


 道理で校長先生も慌てていたわけだ。

 おそらく執務室では、セドリックに対してマリアを危険に晒したことを咎めていたのだろう。

 けれど、同じく氷の円柱により押し上げられたアサヒを慮るようすは微塵も感じられなかったわけだが。


 アサヒはなんとなく、この遠征で何かが起きるような気がしてならないのだった。


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