首席の少女①
入学式が終わると、アサヒともう一人の少女は生徒会の腕章を付けた上級生の男子生徒に来賓室へと案内された。
他の生徒たちは各教室へ移動したようだが、あんなに目立ったあとにクラスに馴染めるとも思えなかったので、別行動になったことはかえって良かったように思えた。
「すでにセドリック団長がお待ちです。指示に従うようにお願いします」
生徒会の生徒はそういうと、来賓室のドアをノックし、アサヒたちに中へ入るように促した。
「二人をお連れしました。それでは、失礼します」
仕事が残っているのか、彼はそそくさとその場を去っていった。
来賓室には、セドリックと学校長の姿があったが、何やら話が揉めているようだ。
「とにかく、我々はこの件に関して抗議いたしますぞ!セドリック団長!!」
話が長引きそうなので、アサヒは横に立つ首席の少女に声を掛けようとしたが、少女はこの状況に多少の関心があるようで、二人のやりとりをじっと見ていた。
先程も思ったのだが、この少女…、少女というには大人びた美しさをもっている。ウェーブがかった金髪のロングヘアーに青く澄んだ大きな瞳。スラリと長い手足はモデルのようだ。同じ制服を着ているはずなのに、この差はなんだろう。
「聞いておりますか、セドリック団長!!」
セドリックは面倒そうな表情で学校長から視線を反らすと、アサヒたちに声を掛けた。
「いつまで立ってるの………座ったら………?」
「は、はい!!」
アサヒはセドリックが指差したソファ席へと急いで腰掛けたが、もう一人の少女はその場に立ち尽くして動こうとしない。
「君………?」
セドリックが声を掛けたが、その声を遮り、少女は学校長へと強い口調で話し出した。
「学校長、抗議というのは先程のセドリック団長の所業がわたくしに成された件でして?それでしたら結構です。特別扱いは一切の不要ですわ」
「し、しかしマリア様……!!」
マリアと呼ばれた少女はギロリと学校長を睨みつけた。
美人の怒った顔はそれはものすごい迫力である。
「学校長は一生徒に対してふだんから敬称を付けていらっしゃるの?」
「しょ…承知しました……」
(おおお〜………)
マリアははっきり物申すタイプの女性のようだ。
学校長はというと、すっかり縮み上がってしまっている。
かと思えば、キッとセドリックを睨みつけ、捨て台詞のように
「セドリック団長、この件は不問といたします。では、あとは頼みましたぞ!!」
と言い放ち、来賓室を去っていった。