9月29日 自滅
もう陽が沈んでいく。グラウンドも明かりがなくなってきていた。俺は、どう励ましたらいいかわからなかった。これまでなら、ここに佐藤がいて俺も上手く話せたけど。今日ばかりはそれすらできなかった。エースとしての責任なのかタオルを被ったままベンチから動くことができない。直江の肩は無言の重さに沈んであるようだ。背中からは、悔しさと虚しさが滲み出ているようだった。さっきまで使っていただろうグローブは下におかれ、汗ばんだ手のひらは震えている。 振り返れば、直江のピッチングは悪くなかった。6回まで0対0という試合展開。しかし、7回に試合が動いた。1番若葉がレフト前ヒットで出塁し、2番成田がファーボールでつなぐ。ノーアウトランナー1.2塁で、3番足立が送りバントを決め、ワンナウトランナー2.3塁になる。ここで、4番直江が登場。聖徳高校ピッチャー田中の変化球をすくいあげ、きっちりライトフライとなる。3塁ランナーの若葉がホームにかえり、犠牲フライで先制点をとったのだった。同時に2塁ランナーの成田も3塁へ進んだため、ツーアウトランナー3塁で5番の南が打席となった。田中のストレートをセンター前に打ち返し、2点目をとったのだ。ここまでは、よかった。ここまでは。
ここからが大変だった。7回裏のマウンドに上がった直江は、さっきまでとは別人だった。連続ファーボールでランナーをため、そこからはヒットやエラーが重なり、この回7点をとられ、ノックアウトとなったのだ。直江のあとを引き継いだピッチャー陣も打ち込まれ、10対2という試合展開で負けてしまったのだ。打ち込まれた一球一球を思い出しているのだろうか?俺もそうした場面はあった。打たれた記憶ばかりの蘇ってくる。また、投げたら打たれるんじゃないんだろうか?と不安ばかりが頭の奥に渦巻いた。チームメイトは既に帰っており、残っているのは直江と俺くらいだった。
直江「守さん」
突然、呼びかけた。
俺 「どうした?」
直江「もう、辞めます」
俺 「は?」
自分の頭にかけていたタオルをそっとグローブの上に置いた。
直江「自分がここまで、実力ないとは思いませんでした」
何もフォローすることがない。コイツの気持ちも理解できるが、まだ始まったばかりだ。
直江「なんか、もうどうでもよくなりました。すいません、せっかく来てもらったのに」
本気の目だ。俺は、話を聞くことしかできなかった。




