7月24日 後輩
いよいよ明日は、守田工業高校戦。部員たちは、1回戦、2回戦以上に気合が入っていた。グランドから響きわたる野球部の声は、部室まで響いていた。
明日の守田戦は、先発予定の佐藤がどれだけ、抑えられるかがポイントになるだろう。昨日の佐藤を見ていると、相当不安な様子だった。俺は、スパイクとグローブを持ってグランドに入った。
今日は、フリーバッティングをしてからノックという軽めの練習だ。学年によって、終わる時間も様々なので、グランドに来た者からアップが始まる。俺が、スパイクとグローブをベンチに置くと、後ろから挨拶が聞こえた。"こんにちは"
振り返ると、2年の直江が立っていた。身長は、約170cmほど。いつも明るく、投手陣のムードメーカーだ。俺は、直江に声をかけ、一緒にウォーミングアップをし出した。軽くストレッチをして、ランニングを始めた。
直江「守さん、今日何時ぐらいまであるんですか?」
俺 「今日は、13時頃には終わるだろ」
直江「いやー、終わって早く遊びに行きたいんですよ」
直江の頭は、すっかりデートモードらしい。
俺 「どこ行くんだ?」
直江「今日は、彼女と映画館行くんすよ」
俺 「映画ねぇ」
ちょうど、陸上部が走るところにさしかかった。
直江「守さんは、例の人とどうなってるんですか?」
俺 「どうもなってねぇよ」
俺は、少しスピードを上げた。直江も横にピタリとついてくる。
直江「嘘だぁ。この前の試合来てたでしょ」
俺 「そうなの?」
直江「またまたー。知ってたでしょ?」
確かに、この前、颯希がいたのは知っていた。だが、コイツに言うとめんどくさいのでスルーする。
俺 「いや、全然。最近、あんまり連絡もとれてなくて」
直江「そうなんですか?」
俺 「あぁ。それより、明日は、投げれそうなのか?」
直江「うーん。まだ、背中の張りがあるんですよね」
もともと、2回戦の取手西高校との試合に登板予定だったが、背中の張りで投げるのを回避していた。本人は、ブルペンに入った時に感じたと言っているが、よくわからない。だが、明日の試合、状況に応じて、俺だけでなく、コイツも投げるかもしれないから、適当にはできなかった。迫る明日に不安が募っていた。そんなことを考えていると、ちょうど野球部のベンチにもどってきた。"まだ、コイツらと一試合でも多く戦いたい"。俺たちの夏は、始まったばかりだ。