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日常で世界を変える(湯浅編)  作者: mei


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8月15日 恩返し

 昨日の直江の言葉は、素直に感じた。心から打たれまいと思っていただろうし、打たれて悔しそうにしたお盆真っ最中の俺は、勉強もせず野球のことばかりを考えていた。

 今の直江に必要なものは精神的なものと昨日は話していた。しかし、それはあくまでも建前で、本音は違う。130km前半のストレートとスライダーではこれから抑えられなくなると思っていた。

 そうなると、球速を上げることと変化球の球種を増やすことが直江には求められるのだった。しかし、昨日の態度では変わることは難しそうだ。昔から、直江の性格は知っていたし、ああなることもわかっていた。直江のことを見ていると、昔の自分が重なってしまっていた。

 俺と直江の性格はまるっきり違う。それでも、俺がリハビリ期間に入った時、昨日の直江の様な感情になっていた。怪我をしたのは、昨年の10月。ちょうど秋季大会が終了した頃だった。まだ、あの頃は自分でも若かった。

 年を越しても投げれない。あの気持ちは、なんとも言えない気分だった。ずっと投げれず、ただみんなを見つめることしかできなかったあの頃は、何か人間の心が薄れていくみたいな感覚だった。

 毎日毎日、佐藤と直江のピッチングを横から、前から、後ろから。ストレートや変化球を投げていた。必死でボールを投げるのはあんなにもカッコいいのだった。でも、アイツらを素直に応援することはできなかった。自分自身でもよくわからないでいた。

 投げれるようになってからも、自分の思うようなピッチングはできなかった。ストレートの球速も上がらなかったし、変化球もほとんど曲がらなかった。そんな自分に声をかけてくれたのが、颯希だった。野球なんて、颯希は全く知らなかったけど、いきなり、俺にキレた。

 あの頃は、言われてすぐに逆ギレしたけど、颯希はずっと真っ直ぐ話してくれた。俺が完全に理解するまでは時間かかった。しかし、颯希の話を理解してからは自分がまるで別人のようだった。それでも、あれがあったから、俺は変われたのだ。

 結局、一昨日の試合では、直江が投げた後も、八上、村井と打たれ続けた。なかなか一方的な試合展開が続き、選手も応援しにきていた保護者もなんともいえない雰囲気だった。園田学院との一戦は、2対18という結果で、全員が気を落としてもどってきたのだった。俺は、あの頃、颯希に助けてもらったように直江にも何かできないものなのかと考えこんでいた。

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