8月11日 深澤真樹
俺たちは、洋食屋さんのテラス席で飯を食っていた。深澤は、ここで話をしているらしい。
深澤「夏、惜しかったな」
俺 「そうか?実力の差だよ」
パスタを頬張りながら、夏大会に触れた。
深澤「あの試合、3番が打ってたら変わってたと思うけど?」
3番は、園山かぁ。そう言えば、あの日の最後のバッターはアイツだった。でも、アイツが打てなくて責めるやつは、淮南高校にはいなかった。新チームになった時から、ずっと3番ショートとしてチームを引っ張ってくれていた。白峰工業高校戦までの4試合では、15打数6安打と調子もよかった。守備でも再々チームを救ってくれていた。
俺 「まぁね。ていうか、見てたの?」
深澤「ああ」
俺 「もう野球興味ないんだと思ってた」
深澤「そんなことねぇよ。聖徳と淮南も見てたし」
深澤が来てたなんて初耳だ。俺は、キンキンに冷えた水を飲み干して話をした。
俺 「来てたの?」
深澤「聖徳のところで、友利と見てたよ」
俺 「へぇ、そうなんだ。もうちょい目立つカッコしてこいよ」
深澤「ハハハ。目立ってんだろ、どうみても」
今の深澤は、金髪で剃り込みも入っている。どう見てもヤンキーの格好だった。
俺 「たしかにな。でも、なんで野球部入らなかったんだ?」
深澤「いや、入ろうとしてたんだけどな、、、」
その続きを言いにくそうだった。俺はこの間を嫌って、相槌を入れた。
俺 「うん」
深澤「実は、父さんがさ、倒れてさ。野球する余裕なくて」
俺 「そうなんだ。全く知らなかった」
俺がここに来たのも、昨日、深澤のことを思い出したからだ。それにしても、まさかそんな事情があるなんて知らなかった。
深澤「まぁ、関係ないしな」
俺 「でも、同じ中学校だろ?」
深澤「そうだけど」
照れくさそうに、深澤は、フォークを見つめていた。
俺 「誰かと今は、会ってるの?」
深澤「今は、摩耶くらいじゃないか」
摩耶とは、染谷摩耶のこと。海美高校に進学したヤツだ。そこまで、賢くなかったが、とても勉強していたのを覚えていた。彼も、進学と同時に野球をやめた一員だ。サードのレギュラーだったが、深澤ほど野球は上手くなかった。彼は、野球をあきらめて、勉強に時間をかけることにしたみたいだ。海美高校であれば、進学先はいろいろ広がる。それもまた一つの選択肢なのかもしれない。




