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Another shadow  作者: 砂城つぐみ
Dey Black
10/10

Someone who knows the ogre2

「…言ってる意味が…どういう事なんですか…?」


司自身に韞化が宿っていると彩葉は言う。韞化を宿すとは一体どう言う意味なのだろう。


「やっぱり知らないのね。…難しい話になるから、良く聞いて」

彩葉は深妙な態度で話し始めた。


「韞化は本来、災害や疫病、当時の化学で証明出来なかった事柄を人が持つ恐れとして生み出された物なの。それは見る事が出来ないし、触れる事が出来ないし、存在を証明する方法も無かったの。…でも、確かに存在するモノとして人はそれを想像した」


水害、火災、地震、落雷、天災など、はるか昔は神の怒りや所業として考えられていた。それもそのはず、現代の様に科学が発展していないからだ。

理解出来ないモノを人は恐怖する。さらに人はその恐怖を形づけ、伝承し、肉付けした。


「だからこそ韞化は目に見えないの。でも可笑しい話しだと思わない?目に見えない、存在していないのに、人に危害を及ぼしているのよ?」


「…そう言われれば確かに」

「でしょ?でも実際に韞化は人の恐れから産まれてるの。それは何故か分かる?」


話がこんがらがって来た。何故産まれるのかと言われれば、ハッキリと答える事は出来ない。

司も思いから産まれるとは感じていたが、それについて説明は出来ない。


「何故って…言われても」

「まあ答えられなくて当然。でも、人ははるか昔から目に見えないモノに頼る傾向があるの。それは様々な宗教や(まじな)い、日本で言うなら陰陽師とか祭りごともそのカテゴリーに入るわね。それで何が言いたいのって思うかもだけど、人は遥か昔から無意識に韞化を体に堕として占いや政治、政を行って来たの」



かの有名なジャンヌダルクは神の啓示を受けフランス軍を勝利に導いたり、日本で名を知らぬ者は居ないだろう卑弥子も鬼道に仕えていとされている。

知る人ぞ知る安倍晴明は陰陽師の中でも知名度が高く、漫画やアニメーションにも出てくる為、司でもそれは理解出来た。


「韞化を体に堕とし、韞化と同様の力を手にする事で人は人知を超えた力を発揮してきたのよ。ここまでの説明、理解出来てるかな?」

「…なんとなくは理解出来ます」



「今はそれで良いわ。…では何故韞化が産まれるのか説明するわ。人にはそれぞれ二つの力が存在しているの。まず一つは人が人として存在する為に必要な鬼魂(キコン)と呼ばれる物があるの。難しく考えず、魂と考えてくれて大丈夫」

「魂…ですか」


「そう、魂。人は存在している鬼魂(キコン)を別のモノに与える事が出来るの。その与える力を鬼力(キリョク)と呼んでいる。この作品には魂が宿ってるとか、この曲聴いたら元気が出るとか聞いた事あるでしょ?」


「…絵画とか美術品とかなら聞いた事があります」

「その考えで合ってるわ。人一人が存在すると言う事は見ることも、触れる事も出来る莫大なエネルギーを持っている事になるの。その人が持つ鬼魂(キコン)をモノに与える鬼力(キリョク)、これはモノだけに限らず声や創造物、文字や文章にも反映される。魂の分裂や一部が宿っていると考えてくれて結構よ。そしてそれは、人が考え得るすべての物に少なからず鬼力が反映されるの。"韞化"も同様にね」



「それって…つまり。韞化は鬼力の集合体って事…?」

「勘が鋭いじゃ無い。まさに癒月君が言った通りで、韞化は鬼力の集合体よ。これが韞化が産まれる理由で、韞化が見えない、触れられないのは人の思う鬼力によってそう言った力を発揮しているからなの」


話を頭の中で簡単に整理する。人は魂、鬼魂と言う人一人が存在していると言う莫大なエネルギーを持っている。人間の心が揺れ動かされる創造物や声、文章などは鬼魂から鬼力と言う力を与えられ、人の魂の一部がそこに宿っていると言う事だ。

更にそらは韞化も同様らしく、つまり韞化は人の魂の集合体と言うことだ。


「人から集まった魂の集合体か…」


にわかには信じ難いが、想いから産まれていると言う司の考えに一致する。


「その魂の集合体の韞化に人一人が存在出来る程の鬼力が集まったとしたらどうなると思う」

「…人と同じ様に存在している事になる…ですか?」


「正解。韞化は所謂(いわゆる)、繭の中の蛹なの。産まれた意味の通り行動し、人から鬼力をもらい続ける。じゃあ人と同じ様に存在する事が出来る程に鬼力を溜め成虫と成った韞化は何をすると思う?」

難しい質問。それは人が何を行うか、何を選択するかと言っているのと同じだ。

「何をするんですか?」


「形付けられた韞化はそうあって欲しいと思う人の想いと同じ行動をするわ。つまり、目に見える存在となって人に危害を及ぼす事になる。これがどう言う事が分かる?」


質問攻めだ。でも人の目に韞化が皆の目に見える様になればどうなるかくらい分かる。今まで目に見えていなかった韞化が起こす現象がハッキリと確認出来る様になると言う事だ。


しかし彩葉の質問のしかたがやけに気になる。

恐らく自分が思っている様な答えでは無い気がする。

司は考える。韞化は人の恐れから産まれる、つまり怖くて、それでいて脅威なのだ。


例えばの話し、大手町商店街の交差点ど真ん中に肉食獣が突然現れたらどうなるだろう。当然の様にパニックになる。最悪の場合亡くなってしまう人も現れるだろう。


「――――二次災害が起こる、ですか?」


司の出した結論はこうだ。韞化によって人が亡くなれば、更に人は恐怖し新たな韞化を産む。


「それも答えの一つね。でも、それよりも恐れなくてはならない事があるの。韞化は人が思った鬼力の力で存在していると言う事、……それはつまり韞化の存在が確認されると際限なく鬼力がその韞化に溜まる事になるわ」


「鬼力が溜まり続ける……」

「すなわち、目に見える様になった韞化はより強大な力を持ち、人に危害を及ぼすの」


司は漸く理解した。実害を起こした韞化は人から恐れられる。怖いとか、殺されるとか。人が思う事は少なからず鬼力として反映される。韞化が現れるだけで鬼力はより韞化へと集まる事となる。死人でも出ればなおさらだ。


「じゃあその韞化に対抗するにはどうすれば良いか…もう何となく分かったかな?」


得体の知れない韞化に対して現代の武力、兵器がどこまで通用するのかは分からないが、彩葉が言いたい事はこれまでの話を聞いていれば自ずとこたえが出る。

目には目を、歯には歯を。韞化の力を力を手にする事で人知を超えた力を発揮したと……。


「韞化の力を人が使う…ですか」

「そう、魔と成りて魔を祓う。その言葉通り禍祓(マガバライ)は韞化をその身に宿し、韞化を祓うの」



韞化の産まれ方。それして、韞化を倒す方法は分かったが、やはり気になるのは"宿す"と事だ。

「俺にも韞化が宿ってるって言ってましたけど…宿すってどうやってやるんですか?」


「方法が三つあるの。まず初めは神堕(シンダ)と言って韞化に語りかけ人の体に堕りて貰う事。シャーマン…日本人ならイタコの方が分かりやすいかしら。トランス状態って聞いた事あるでしょ?」


司の知っているトランスとは漫画やTVで得た知識しかない。確か自分に別の意識を宿すとか、霊を憑依させたり、精霊を体に纏うとかだった気がする。


「まあ、聞いた事はあります」

「まあ、例えでトランス状態とは言ったけど、神堕(シンダ)とトランスは別物として考えてちょうだい。トランス状態はあくまで一時的に別の次元やモノ、韞化に接触している状態を指す物で、韞化と人の鬼魂を共有させる事を神堕(シンダ)と言うの」


「韞化と人の魂を一体化させるって事ですか?」

「うーん…正しくは共有なんだけど、この説明はまだ癒月君には難しいと思うから、そうね、一体化と思ってくれて大丈夫」


彩葉は説明に困ったのか小さく笑う様にそう言った。

まあ説明に困るのも無理は無い。司にとって初めて聞く言葉ばかりで、理解させる方が難しい。


「そして二つ目が継承。これは神堕(シンダ)によって韞化と鬼魂を共ゅ……一体化した物を次世代に繋ぐ事を言うの。やってる事は神堕(シンダ)とそう変わりは無いんだけど、違いとしては前任者の鬼力の一部を引き継ぐ事になるの」

「より強く引き継げる…って事ですね?」


「そう言う事。それと三つ目が…鬼魂同調(キコンドウチョウ)。鬼力によって魂を得た韞化と人の鬼魂の波長が似ている場合に、引かれ合って魂が一体化するの。この場合のみ本人の意思とは関係なく韞化が宿る事になるわ。恐らく癒月君はこの鬼魂同調(キコンドウチョウ)によって韞化を先天的に宿していると私は考えてる」


「俺の中に韞化が……で、でももし宿っていたとして、俺はどうなるんですか?」


彩葉が言う様に先天的に韞化が宿っていたとして、何だと言うのか。韞化は物心付いた頃から見えている為、今更それが困る事は無いし、禍祓(マガバライ)が彩葉の説明した通りに韞化を祓っているのなら、司が近づいて消す必要も無くなる。


「……貴方が眠る前までは何の問題もなかったのよ。でも今は違う。最悪の場合…死ぬ事になる」

「――っ死ぬ⁉︎な、何で?」


話が突然飛躍し司は驚きを隠せずそう言った。

「少なくても私が側にいる間はそんな事は起きないから落ち着きなさい」


「――い、意味が分からないです!なんで俺が死ぬんですか⁉︎説明して下さい!︎」



どれほど眠っていたのかは司は知らない。それでも記憶は鮮明に思い出せる。家族、学校、友人そして恋心を抱いた女性の事も。

当然の様にこれからも日常を送るつもりだった。非現実的な出来心が起きたが、目の前でこうして死を宣言されると流石に動揺が隠せない。


「…癒月君、白い女の子を覚えてる?」

「白い女の子…ですか?」


白い少女。それは司の体がブレ初め、そして当然の様に目の前に立っていた少女の事だろう。

「切られた事を覚えているなら、あの子の事も覚えてるでしょ?」

これから彩葉から告げられる言葉が司にも予測出来る。


「あ、あの子が俺に宿ってるとでも言うんですか?」


「…そうよ。あの子が君の韞化。憑鬼(ヨキ)よ」


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