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恋人はメリーさん 3

.



「こそこそしてるのは京さんじゃないですか」

「俺がいつこそこそした」

「えーと・・恋人が何人いるのか教えてくれません」

「いないもんをどう教えるんだ」

「京さんに恋人の三人や四人いないなんて信じられません」


三人四人いるのが前提か。

あの仙道京司朗相手に一歩も引かない。さすが嫁になっただけはある。


「素・・」


す?

誰だ今の発言?



「素晴らしい!!!」



ドカッと私を押し退けて、ハイエナどもが前に出た。



「素晴らしいです!」

「さすがはお猫様!」

「自ら愛人設定をして修羅場を作り上げようとするその根性は見上げたものです!」


「あなたはまさに猫神(かみ)!!!」

ハモる三人のハイエナどもの眼の輝きが違う。

獲物を狙うハイエナの目ではなく、神を敬う信者の目!


「お前は東雲に迷惑をかけたことがわかってないのか」


ハイエナをまるっとスルーの仙道先輩の冷静さは見習いたい。


「迷惑?」


「東雲は一年前から同棲していた恋人と結婚したばかりだ。そういう女に他の男の愛人疑惑をお前はかけたんだ」


招き猫ちゃんは仙道先輩に私の結婚話を聞かされてビックリして私の薬指を見た。

私は左手の薬指を提示。光る結婚指輪。


「す・・すみません!ごめんなさい!」


どうやら理解してくれたようだ。


「た、たいへんご迷惑をおかけして・・!」


「元はと言えば私が誤解を招く発言をしたからですし」

「でも押し掛けてきた上すごく失礼な迷惑を・・!」

顔真っ赤だ。かわええのう。

「そりゃまあ少しばかり迷惑と言えば迷惑だっ・・」たが、もういいんですよ。・・と言いたかったのに、再びハイエナ達に突き飛ばされてしまった。


「そんなことありませんわ!お猫様!」

「そうです!あなたは我々に福をもたらしてくれました!」

「店長の一人や二人気にすることはありません!今後とも」

「よろしく!!!」

三人揃ってのよろしくは店内に響き渡った。


コイツらぁぁぁっ


突き飛ばした私に目もくれず、ハイエナ達は招き猫ちゃんをひたすらヨイショしている。

「ささ、お猫様!こちらに」

「お飲物をお作りしますわ!」

「ミルクもありましてよ!」


「ミルクより豆乳のほうが」

「ご準備しますわ!今すぐに!!」

一人のハイエナがひゅんと消え、残ったハイエナ二人が、招き猫ちゃんを御輿に乗せる勢いでヨイショにワッショイしている。


仙道先輩もさすがに呆れてるだろうと思いきや、


「う、わあっっ!」

招き猫ちゃんが叫んだ。

仙道先輩が、招き猫ちゃんを一気にかついだのだ。


「京さんおろしてください!」

「帰るぞ。すまなかったな、東雲」

「い、いえ・・」

こめかみに怒りのマークが浮き出ているよ。

(こえ)ぇ。


「あーー!お猫様が!!」

「我々の福の神が!」

「豆乳!豆乳を買ってきましたから!!」


ハイエナ達があたふたしている。


「あ、あの!本当に申し訳ありませんでした!」


と、多分私に向かって叫んだ。


新妻のかわいらしい嫉妬だと思っておこう。

「・・洋服やファッションのことならいつでも相談にのりますわ。またいらしてくださいね」

店長たるもの、笑顔と最低限のマナーは絶対忘れてはいけない。


「あ、・・ありがとうございます!メリーさん!」


「・・・・・」

だからメリーじゃねーよ。


「メリーじゃない!東雲だ!」

「東雲メリーさん!」

「違う!何回言ったらわかるんだ!」

言い合いながら仙道先輩は招き猫ちゃんをかついだまま出ていった。


「━━━━」

仙道先輩・・、大変だな。ほんとに困ってそうだな。



まあ、人様ん()は人様ん()だ。うまくやるだろ。仙道先輩なら。


さて、問題も解決したし、閉店時間だな。


「さあ、閉店にし・・・何やってんだお前らは」



「祠を建てる準備」

「お猫様をご飯で釣って捕獲する準備」

「福の神を一人占めしている仙道を呪い殺す準備」

わらにんぎょおおおおお?!

「どっから出したこんなもの!!呪い殺す前にこっちが()られるわ!仙道先輩と惣領会長に殺されるならお前らだけにしてくれよ!」


「その時は店長命令と自白」

「店長命令は絶対」

「店長はやはりメリーさんだった」


「やかましい!それよりさっさと店を・・!」


ドアベルが鳴った。


「すみませーん、まだいいですかあ?」


よくねえ!!・・と言えたらどんなに楽か。


私は若干笑顔をひきつらせ、お客様に「いらっしゃいませ」と応じた。


一人入ると二人来て、二人が去ったら三人来て・・


私達はこうして帰るチャンスを失い、二時間の残業をするはめになり、閉店できたのは夜九時を過ぎていた。


世の中には常識では割りきれない何かがある。

招き猫ちゃん説もそのひとつだろう。


とにもかくにも、

私は招き猫ちゃん説を受け入れることにした。







end




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