忍び寄る影
短いけど許して
左腕から宿ってるらしいLAWと会話してる最中に聞こえてきた物音
ザッザッザザッザッ
足音の様なソレは月明かりの中確実にこちらに近づいて来ていた
「おい、さっき周囲に誰もいないって言ってたよな!?」
『肯定。先程までは周囲に生体反応はありませんでした。』
「ならこの足音はなんなんだよ!?」
そんな問答をしてる間に物音の正体が見えてきた
四つ脚で歩く大型犬くらいのサイズのナニカ
目があるであろう場所には大量の細かい目玉がギョロギョロ覗き、裂けた口から黒い蒸気のような物を吐き出し、その口からはみ出た馬鹿みたいにでかいキバ、そのキバから滴る液体は砂浜へと落ちるとジュッという音共に煙りがあがる
みるからにヤバイヤツが10m先くらいにいた
『スキャン終了。下級アークエネミー、ゲドであると思われます。近くに出現した為発見が遅れました。』
下級?アレが?どうみても素手で勝てる相手じゃないぞ!と声にならない叫びをあげる
『注意。こちらを捕捉し跳躍の兆しが見えます。至急迎撃態勢を。』
「なっ!?迎撃!?逃げるんじゃなくてか!?」
この左腕さんは俺に死ねとおっしゃるようだ!
そんな事を考えてる間にヤツはグッとかがむように動いていた
くそっ!こうなりゃやけだ!
「おい!俺はどうすればいい!兵器なら何か使い方があるんだろう!」
『肯定。左腕に意識を集中し、起動キーを唱えてください。』
起動キーだと?そんなもの...
と叫ぼうとした時、頭の中に何かが浮かんだ
目醒めよ、と
俺は叫んでいた
「コード!アウェイクン!」
『オーバードライブ』
その瞬間、世界が止まった
左腕の模様が揺らめき一瞬煌き、意識が妙に冴え、目に入る物が瞬間色を失う
黒髪黒目だった顔が髪は赤く染まり、瞳は金に変わる
そんな自分の状況を一瞬で理解し、飲み込んでいた。
『限界起動成功。操者。リミッターをかけていない為全力での行使になります。行動限界は5分です。』
止まった時の中、俺はヤツ目掛けて飛び出した
10m程の距離を一瞬で詰め、燃えるようなオーラを放っている左手を突き出した。
ヤツの顔面にめり込む左手、潰れる多数の目、折れる鼻とキバ。
そんな状況を何故かゆっくりと見れた
そして思った。
(ウギャー!気持ち悪い!ぐちゃっとした感触はなぜか無いけど生理的に無理ぃぃぃ!)
そう思ったせいだろうか
左手のオーラが爆発的に増えた
『操者の意識を理解。アーツ展開。ブレイジングバーストを発動します。』
左手のオーラが俺の全身を包む
目が眩むほどの光と軽い衝撃と共に、身体からオーラが解き放たれる
地面の砂は凹み、余波で波が逆流する
目の前にいたヤツはそのオーラに触れた瞬間、爆散した。
「....は?」
殴ったまではわかる、そこから先に起こった事がエグすぎて彼はドン引きしていた。
辺りにヤツの姿は無い、砂が自分の周りだけ窪んでいる事と目の前に黒いモヤの様な塊が浮いているだけだった。
「なんだこれ、つーか爆散はやりすぎだろうよ..」
『操者。その塊は"世界の歪み"です。左手で触れてください。安心してください、身体に害はありません。』
「世界の歪みて、こんなちっちゃいこれがか?まぁ害が無いならいいけど触れてどうすんだ?」
『左手、つまり私で触れる事で歪みを矯正できます。理屈は..』
「あー、いいわかった。おまえがわかってればいいよ。触りゃいいんだな。」
俺は左手でそっと、その塊に触れた
黒いモヤを放っていたソレは左手に触れた瞬間、フルッと震えて左手に吸い込まれていった。
「うわっ、取り込む系かよ。びっくりしたけどなんとも無いな。これでおわりか?」
『肯定。矯正完了です。』
「はぁー、一時はどうなる事かと思ったがなんとかなるもんだな。身体がすっげぇ怠いけど。」
『戦闘行動終了。限界起動解除。操者お疲れ様でした。』
俺の姿が元の黒髪黒目へと戻っていく、左腕のオーラも消えたようだ
「おう、サンキューな。助かったぜ。...ん?なんだ?...ねむ...やば」
『初回から限界起動をした為反動による休眠が必要です。オーラによる防護壁を緊急展開。気絶後も安心ください。』
「先にいっ...とけっ....てぇ..」
俺はそこで意識を失った。