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【完結】亡郷のナユタ ー:DECILLON:s.Nostalgledー  作者: 棹中三馬
vol.0.10 亡郷の電子姫《ロスト・エレクトリンセス》
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2-1 お節介な聖女

ファート神殿はファート島に存在する女神マテルダを称え奉る大神殿で、転移された冒険者達が聖女セレシアスから旅立ちの洗礼を受ける場所である。


ファート島の首都ビダデンは王都とは異なり、所謂中世ヨーロッパの街並みを忠実に保っており、異世界の文化を取り入れまくる今としては逆に珍しいタイプの町である。


そして、一年前。

人工知能のナユタも例外ではなく彼女の洗礼を受けていたのだ。





私が目を覚ました場所は神殿のような場所でした。

周囲には古代遺跡にあるような白い石柱が立っていて、奥には大きな石造りの女神像が置かれています。

石畳の床には複雑怪奇な模様が詰めこまれた魔方陣が大きく描かれていて、私は丁度中心の丸の所で眠っていた様です。



「イルタディアへようこそいらっしゃいました冒険者様。私は聖女セレシアス。ここは異界より冒険者達を迎え入れる舞台『召喚の間』ですわ」



女性としてはまさに理想的な体型に薄い白い布を纏っただけの美人なお姉さんが、魔方陣の床から少し高い位置から説明をしてくれた。



「ここで貴女は冒険者として新たな人生を送るのです。これより冒険者カードを作成しますので、貴女の名前を教えてください。以前の名前が恥ずかしければ、ここで新しい名前を作っても良いですわ」



私は以前の名前に恥など持っていません。

寧ろ誇りを持っているくらいです。



「私はナユタ。人工知能です」


「あらら……貴女人間じゃなかったのね。人間以外が転移するなんて珍しいわね」


「それともう一つ質問宜しいですか?」


「はい。何でも聞いて頂戴な」


「……何で私、何も着ていないんですか?」



生まれたばかりの姿で私は石畳の上を寝転がっていたのです。

幸いこの部屋にはセレシアスの他には女の従者数人しかいませんでしたが、それにしても知らない女の人に自分の裸を見られると言うのはあまり喜ばしくはありません。



「私に聞かれてもね……。普通は死んだ時の服装で召還される筈なんだけど。あっ、貴女前世が人工知能だったからそもそも服なんて要らなかったんでしょ?」



納得しちゃいました。

……いや、そうではなくて、今の体は幼女なんですから。

色々と不味い絵柄になっちゃいますよ。



「前世ではなく、今も人工知能です。兎に角服を下さい。こんなんじゃ外に出れません」


「そーね……。個人だけにサービスするわけにもいかないし……、じゃあ餞別に渡す予定のお金が減っちゃうけど、そのお金で服を買っちゃう? それならルールにも違反しないし」


「ええ、それで構いません」



セレシアスはイルタディアの通貨であるキラを袋からばら蒔き、私の居座っている魔方陣になげやりました。

透き通った声で祝詞を紡いで新たな魔方陣を展開させていきます。



「女神マテルダ様よ。等価交換の法則に基づき、冒険者に適した衣類をお授け下さいませ……」



魔方陣が輝いたと思ったら、すぐに光は消えてしまい、キラの大半が消失して代わりに衣類が現れました。

麻でできた安物の肌着と、体をすっぽりと被うこれまた麻の貫頭衣という、まるで奴隷に着せるような心もとない衣服でしたが、無いよりかはましかと思い直して早速着てみます。



「うんっ……布が擦れてちょっと痛いけど、新しい服を買うお金が貯まるまでの辛抱ですね」


「ごめんなさい。餞別のお金は5000キラしかないから、あんまりお高いのは買えないのよね。因みにこれ一式で2300キラは使ってるけど、大丈夫だった?」



余ったキルを廣い直してくれたセレシアスは、私の手にキルが入った袋のお財布を握らせます。

こんなちっちゃい袋にあんな大量に入る訳が無いので、この袋はマジックバックの類いなのでしょうか。



「……まあ、痛いですが仕方無い出費ですね。お金はどうやって稼げば良いのですか?」


「それは簡単よ。モンスターを倒せばお金とドロップ品を落とすわ。だけど今の貴女には戦闘は無理だろうから……、薬草収集はどうかしら?」


「ああ、ギルドクエストですね」


「そうよ。冒険者ギルドにクエストを受注して、期限までにクエストを達成すれば報酬を受け取れるわ。一日一回薬草収集クエストをこなしてれば、最低限の生活費は稼げるから。お金が貯まってきたら武器でも買って、仲間を集めてパーティを作ったら、モンスター討伐クエストに挑戦すればいいわ。そっちの方がもっと稼げるし、ついでに経験値も貯まるからね」


「経験値……やっぱりステータスがあるんですか?」


「勿論ありますよ。ギルドに置いてある石盤型の魔法具を使うと確認できるわ。だけどスキルや呪文の名前は分かるけど、効果説明までは見れない仕様だから。ギルドに併設してある図書館で調べれば手間はかかるけど大体のスキルは判明するから、まあ後で自分のステータスを見に行ってみなさい」



この世界にはステータスウィンドウという便利な物は無いらしいですね。

もっとも私はIDOのメインサーバーを担っていた人工知能、IDOの知識なら基礎から裏技まで全て踏襲していますので、図書館で調べる手間は必要無さそうです。



「分かりました。ありがとうございます」


「いえいえ。あと、この世界では冒険者の他にも討伐者という存在の人達がいるけど、冒険者が討伐者を殺すと謀反者というスキルが付いちゃうから気を付けてね。冒険者は死んでも教会で生き返れるけど、謀反者のスキルがついた冒険者は教会で蘇生出来なくなっちゃうし、他の冒険者から虐めの対象にもなっちゃうから」


「はい、気を付けます」


「じゃあ、行ってらっしゃい」



私はセレシアスと別れを告げて、召喚の間から後にする。


神殿の入り口へと足を進めて両開きの扉を放つと、その先はやはりと言うか、中世ヨーロッパの様な町並みが広がっていました。

ここまでお読み下さりありがとうございました!

次回、冒険者ギルドで出会った一人の少女とは……。

お楽しみに(* ´ ▽ ` *)ノ


ここまで読んで面白かったら評価やブックマークをお願いします!


《余談》

この世界のマジックバックには一般のアイテム用、通貨のキラ専用のお財布用、液体専用の飲み物用等様々な種類があります。

しかし、これらを作る上で必要な素材はけして簡単に手に入る物ではありません。

しかし、とある不成(チート)スキルを有した冒険者がイルタディアに現れて以来、大量かつ安価でマジックバックを製造する事が可能となりました。

彼は、主人公にとって敵なのか、味方なのか?

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