表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】亡郷のナユタ ー:DECILLON:s.Nostalgledー  作者: 棹中三馬
Vol. 1.00 妖精郷の伝承《フェアリー・メモリーズ》
33/47

1ー24 総団長との再開

1-23i は告知した通り百合回ですので、お先に誰でも読める方を投下します。

今日中に百合回ものせますので、見たい人だけご覧ください。

結局俺が退院したのは翌日で、あと二日の間にパーティの準備をしなければ為らない。


手始めにパーティ用の服を新調しなければ為らないのだが、まずそのためには大量の(キラ)がいるので、戦闘のリハビリを兼ねてダンジョンに潜入して金稼ぎをしなければならない。


幸い、俺達の戦闘力ならば困難級(ランク4)のダンジョンならば問題なく攻略できる。

早速俺達はダンジョンへ潜入しようと王都から旅立とうとする時、王都唯一の門の外で待ち伏せしていた者がいた。


見覚えのあるおっさんとメイド服をきた二人の幼女とでっかいドラゴンだ。



「あっ、フォルネイスさん。生きていたんですか」



ナユタが開口直後に不躾な事を言っていた。

《王国騎士団》の総団長であるフォルネイス=ドラコニアスは、威厳を感じさせないおどけた表情で顎の無精髭を掻いていた。



「いやいや。君達が殺しておいて良く言うよ。私は冒険者だから蘇生されるって分かってて殺ってるんだろ?」



続いて、彼を挟む様に立っていたどっか見覚えのある顔のちびっこメイド達が口を挟んできた。



「その通りです! あの時はあたし達本気で死ぬかと思ったんだから!」


「万事休すで生き延びました。喧嘩を売る相手を間違えましたね前国王は。まあ彼がいなくなって、寧ろわたしは清々したけど」



先に金髪ウェーブヘアーのちびっこメイドが眉を吊り上げて、銀髪セミロングのちびっこメイドが過去の独裁者の毒舌を吐き散らす。



「本当にムカつくよね! あいつ、国王と言う権力を乱用して城のメイド達にセクハラしまくってたんだから!」


「終いには彼氏持ちのメイドをねとって自身の子供を孕ませて、その上貧乏人の従者の子供を後継者にする訳には行かないとかほざきだして、母子共に湖の底に沈めたって噂も出回ってました……真実かは不明ですが」


「うわー、何処までも救いようのないクズじゃ無いですかー!」


「国王以前に、人間として終わってますね」



ナユタとコルト迄もが会話の環に入って女子達の道端会議が開かれる。

俺は彼女達の話を聞いて謎の既視感の正体を漸く理解した。



「もしかして……、この二人って、エディとヴェルですか!? 何でちっちゃくなってるんです!?」


「あんたのふざけた刀のせいでしょうがぁぁぁ!」


「いだだだだだだ!?」



ヴェルは八重歯を煌めかせながら猛虎の様に怒り狂い、病み上がりの俺の右腕を喰い千切らんとせんばかりに噛み付いてくる。


流石に子供の体なので実際には少し激しめの甘噛み程度で済んでいるが。

それでも八重歯が俺の肌に食い込んで少量の血が漏れ出すが、これくらいの噛み傷ならばナユタの『全快復(フルヒール)』ですぐに治せるだろう。


流石に『神滅の槍』の神様だ、普段はほがやかだが怒ると性格も豹変する様だ。



「こらこら、それくらいにしておけ。一応ハジメ君はこの国を救った英雄なんだから」


「一応なんですね。……まあでも、俺達は英雄だからな! 仕方ないよな!」


「むー、ふん! もういいわよ! べーだ!」



身体が縮むと頭までも子供の脳に退化してしまうのだろうか、あるいは元から子供っぽい性格で公の前では本性を隠していただけなのか、まあどちらでも良いのだがどちらにしろあまり彼女を怒らせない方が良いな。



「またそうやってすぐに調子に乗る……、はい。治りました」



早速ナユタが俺から頼みもしない内に『全快復(フルヒール)』をかけて患部を癒してくれた。

俺の胸板よりも身長が低いため嫌でも茶色の艶のある彼女の髪が拝める。

最近二人が泊まってる宿屋の影響だろうか、微かに残っているシャンプーの匂いもより高級そうな香りだった。


蠱惑な香りに酔わされて一瞬意識を朦朧としかけるが、俺はすぐに自我を取り戻した。



「本当にいつも傷を治してくれてありがとうな」



俺は不意にナユタの頭を撫でてやりたい衝動に駆られ、日頃の感謝の言葉と共に撫でてやる。

仕返しが怖かったがそれくらいなら彼女も気を許しているらしく、照れ臭さと嬉しさと羞恥心をごちゃまぜにしたような笑みを溢す。



「……別に、ここでハジメに死なれてはこっちが困るだけですから」



そして至極の表情から放たれるこのそっけない口調である。

最近ナユタのこの口調を聴くのが楽しみになって来た俺が心の何処かにいる。



「それでー、どうしてお二人はちっちゃくなっちゃったんですかー?」



なんか変な性癖に目覚めかけそうになってる俺の代わりに、コルトが質問を投げ掛ける。

その質問に答えたのは、小さくなっても相変わらず人形の様に無表情を貫いているエディだった。



「私達の神体を構成するのはご存知の通り神力です。その神力の半分以上がゴトクにとられた影響で、以前の成人態として顕現出来なくなったのです。辛うじて10才程度の容姿ならばギリギリ顕現出来るので、こうなっています」


「だからね! もう二度とあたし達にあんたの剣振り回すんじゃ無いわよ! 神殺しは立派な犯罪なんだからね!」


「と言うわけだ。敗者から勝者に頼みに来るのも癪だが、これ以上は勘弁してくれよ? 最悪あんたの首が跳ぶから、それだけは覚悟しとけ」



つまり、これ以上俺が神様を喰らわない様に釘を指しに来た訳だ。

確かにこの力はあまりに強力すぎる。

俺だって命は惜しいから、神様相手にはこの武器は今後極力使わない方が賢明だ。



「はい……すんません。今後は気を付けます……」


「命乞いと思わせて、完全に脅迫されてますね……」


「ふん。ハジメには良い薬」


「分かってくれればそれで良いさ。だけどね、英雄と言う存在は裏を返せば脅威だ。これから君はいつか誰かに裏切られても文句の言えない状況下に置かれる。それだけは肝に命じて措きなさい」



流石組織を纏め上げる総団長は言うことに説得力がある。

大人しく彼のアドバイスを聞き入れるとしよう。



「……ん、待てよ? じゃあ何で昨日コルトがゴトクに抱き付いてたのに平気なんだ?」


「あ、そう言われてみればそうですね……、神力が吸いとられた様な感覚はありませんでした」



俺の肩の上にちょこんと乗っていたゴトクが偉そうに説明を始めた。



「我の神喰の力はあくまで神器本体の場合のみに適用される。顕現時にはそんな物騒な効果はないの……だぶしぃ!」



その刹那、エディの強烈なるジャブがゴトクの腹にクリティカルヒットした。

下手したら俺の顔面に食らう事だったと冷や汗をかく。



「本当だぁ! それじゃあ今のうちに復讐してやるんだから覚悟しなさいこの三毛猫ぉー!」


「わたしも一発なぐらせて下さい」


「ふむ。それなら私も一発良いかな?」


「いや、流石にフォルネイスさんは勘弁してあげてくださいよー。こう言うのは子供の喧嘩だから許されるんですよー」



コルトに説得されて致し方あるまいと言いたげに考えを改める。



「ふむ、それもそうだな。じゃあ私の分まで敵討ち頼むよ、エディルナーラとヴェルノエール」


「おおー、ご主人の仇ぃ!」


「げぶばぁ!?」


「ご主人様の仇ー、えーい」


「げぶしぃ!?」



あくまで二人を止める気は更々も無いようだが。

ちょっと可哀想になってきたゴトクが俺に向かって強く懇願してきた。



「おいハジメ! 今すぐ我を本来の姿にするのだ! そしてこいつらを吹っ飛ばすのだ!」


「俺を断頭台に上げさせる気かよ! どーせテメーは死なねーんだからそのまま大人しくちびっこメイドにやられとけ!」


「そんなぁぁぁ!?」


「いやいや、ハジメさんも鬼ですねー」


「と言うか、元はと言えばハジメのせ……」


「いやいや、前国王のせいだろ!? そもそも妖精郷の人達が誘拐されて無かったら、フォルネイスさんと戦うことなんて死ぬまでずっと無かったんだし!」



俺の自己弁護を聞いてフォルネイスははっとしたように腕をぽんと叩く。

この人、見た目は勇壮なおっさんなのにたまにお茶目な所があるな。

まあだからこそこの二人を扱えるのかも知れないが。



「あ、そうだった。君達を妖精郷まで運んでこいってグロリオ氏に頼まれたからここへ来たんだった。言われるまでつい忘れてたよ」


「グロリオさん?」


「ケシアとタイムのお父様だよ。4000年妖精郷を守り続けている、現状妖精の里の長と言っても過言ではない人だ。流石にもう年で率先的に戦闘は出来ないみたいだから、里の若い者達に戦闘や農作業を任せて、現在はスイラを使った酒造りと宿屋の経営に精を出されておられると訊いた」



4000年……、ますますタイムとケシアの年齢が気になる。

聞かない方が幸せだよな。

うん絶対聞かないぞ、俺の中の幻想をぶち壊されたくは無いからな。



「はいはいお前達。仕事が先だ。二人とも復讐はそれまでにしておけ」


「えっー!? まだ全然足りないぃ!」


「ご主人様が許すと言うなら、これ以上は無用ですよヴェル」


「えー、エディまでこいつの味方? ぷぅー」



渋々ヴェルが逃げていき、傷こそついてはいないが精神的に疲労してそうなゴトクが、ひょいと身体を起こしまた俺の肩に飛び乗る。



「はぁ、はぁ、助かったか……」


「さあ、私の愛龍のシーザーだ。こいつに乗れば妖精郷までひとっとびだ」



背後のどでかいドラゴンは緋色の厳つい見た目である。



「わー、でっかいですねー」


「人を襲わないのですかこのドラゴン?」


「私の生け好かない奴には容赦なく殺しに来るぞ? だけど今は私が一緒に乗ってやるから大丈夫だろ、多分」


「それ一番信用できないやつ……」



落胆する俺の背中をポンと軽く押される。

フォルネイスが時間が無いから急かさせようと、良い意味で解釈すれば俺を勇気つけるように押したのだろう。



「まあまあ、良いから乗った乗った。私はさっさとお前達を送って行って、やらなきゃいけない仕事が山ほどあるんだ。忙しい中部下達に無理言って一旦抜けてきたんだから、あまり手間取らせないでくれ」


「そうよ! あたし達だってこの見た目でもまだメイドの仕事をしてるんだから!」


「洗濯物を速く取り込みたいので、速く乗ってくださいませんか?」



フォルネイスとエディとヴェルが手慣れたようにシーザーの広い背中に跨がる。

早速ナユタとコルトも駆け出して、シーザーの脇腹を撫でてから跨がる。



「分かりました。それじゃあ乗らせて貰いますねシーザー」


「グルルー♪」


「シーザーちゃん、宜しくですー!」


「グルルルー♪」



おっ、見た目は厳ついけど意外と人懐っこい性格なのかもしれない。



「えっと、宜しくなシーザー」


「ぐるるる……がぉぉおお!」



俺だけシーザーに歓迎されて無いみたいだけど、本当に乗って大丈夫なのか?



「大丈夫だ。問題なかろう。ここで死ぬ時はここがハジメの死ぬ運命(定め)と言うだけだ」



さっきの事を根に持っているのだろうか、ゴトクが他人事の様に物騒な事を言う。

まあ、冒険者は落っこちて死んでも教会で蘇生できるからな。

神様は神力さえあれば怪我すらしないだろうし。


まあ、一応ぶっとい命綱に繋がれてから乗るみたいだし、振り落とされない様にしっかり背中にしがみついていれば大丈夫だろう。



「さあ、飛び立つぞ。落っこちても助けに行かないからな」


「ゴトク。振り落とされないように俺のコートの中に入っとけ」


「うむ。かたじけないハジメ」



フォルネイスが手綱を引いて指示を出すと巨大な翼をゆっくりはためかせ、やがて何十トンも体重がありそうなシーザーは地面からゆっくりと離れていく。

やがて高度30m位の高さまで垂直上昇をしてから、目的地に向かってシーザーは飛び立つ。



「さあナユちゃん! 妖精郷へ向かっていざ!」


「……出発進行♪」



人生初のドラゴンに乗った空中散歩に俺は終始一貫として気が気では無かったが、ナユタとコルト達はとても楽しそうに空中の絶景を眺めていた。

ここまでお読み下さりありがとうございます!

次回、いよいよ1章完結! ハジメ達にふりかかる新たな試練とは!

2章もストックありますのでこうご期待(*´∀`)♪


ここまで読んだ上で面白かった、続きが気になるという人は評価とブックマークをお願いします♪


《単語説明》

同調(シンクロ)

契約者と契約神器の心の繋がりを数値化した物。

高いほど武具態の戦闘時の威力も上がり、お互いの友好度も上昇していきます。

隠しステータスですので、ステータスを開いても閲覧できません。


だが、これが存在したのはイルタディアをベースにして作られたVROOM『IDO』の舞台のイルタディアだけであり、オリジナルの異世界イルタディアには存在しておりません。

ですが、イルタディアはIDOを忠実に再現した異世界だと勘違いしたまま一生を過ごしている冒険者達が殆どなので、この真実を理解している人はごく少数なのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ