表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】亡郷のナユタ ー:DECILLON:s.Nostalgledー  作者: 棹中三馬
プロローグ 魔術と科学の遭遇《セットアップ》
2/47

2 人工知能の少女

「はい。巻き込んでしまって申し訳ありません。私が討伐しようとしてたんですが……」


「あ、もしかして得物を横取りしちゃった?」


「いえ、此方としては問題はないです。むしろご助力ありがとうございます」



可愛らしくペコリと頭を下げる。

見た目だけでは11、12にも満たない小柄な体躯。

粟色のショートヘアーがよく似合い、茶色の澄んだ瞳が儚げな少女だった。


ノースリーブの白衣に袖を通し、水色の服を着ていて、下はタイトなミニスカート姿。腰にはショルダーバック型のマジックバックを装備している。


その割には行動が大人びているというか、会話が事務的と言うか、何処と無く不安にされられる。


おまけに大地に乱雑に突き立てられてる綺麗な装飾が施された大剣が尚更シュールだった。



「そうか。まあ俺は生きてりゃそれで良いさ。……俺はハジメ。見た通り黒魔術師の討伐者(ハンター)だ」


「私はナユタ。以前は人工知能であり、現在は回復職の冒険者(ヒーロー)です」



あい? 何いってんのかさっぱりわからん。

どうやらとんでもなく面倒くさい奴と関わってしまったらしい。

というか回復職で何で大剣なんだよ。そもそもこの小柄な体型のどこに大剣を振り回せるだけの馬鹿力があるのだろう。



「レベル上げには手強いモンスターを討伐するのが最適だと判断し、イラリトの式札を用いてヘルヘイムドラゴンをここへ召還して自己鍛練をしていました」


「犯人はあんたかい!」



体が悲鳴を上げてるにも関わらず大声で叫んでしまった。

てっきり俺は最初、魔王が世界を侵略するために召還した刺客だとか中二臭い事を考えてたけど、そんな事は無かったと一安心する。


しかし道理でドラゴンがこんなところにいたわけだ。イラリトの式札とは使用者が過去に討伐した経験のあるモンスターを召還し、戦闘不能区域以外の場所ならどこでも戦闘ができる超便利アイテムなのであるが、それ故になかなかドロップしない激レアアイテムでもあった。


それにヘルヘイムドラゴンといえば|災厄級(レベル4)ダンジョンに住まう強力なモンスターだった筈だ。

それを一度討伐した上に、レベリング目的でそいつを人目のある場所で再召還するなど、並大抵の冒険者ではありえない行動だった。


この少女が本当に一人で出来るのだろうか?



「……ナユタ、お前仲間はいないのか?」



失礼だとは思っていてもつい口を滑らせるのが俺の悪い癖だが、彼女は嫌な顔をすることはない。むしろ何故そんな発言をしたのか不思議だと言わんばかりに言葉を返す。


「必要ありません。思想が噛み合わない者同士で組んでも綻びが生じます。目的達成には不要な存在だと判断しております。今回はあなたが横入りして止めをさし損ねただけですし、私一人でも問題なく討伐出来ました」


「……そっか。まあいいさ。あんたがどんだけ強いのか、目的が何なのか俺には全く興味が無いからな。だけどこれだけは言わせてくれ」



怪訝そうにナユタは眉を潜める。



「あんな化物をこんな場所で召還するのはもうやめろ。みんながあんたみたいにくそ強い訳じゃないんだ。俺だってついさっき死にかけたんだ。一般人だったら間違いなく死んでたぞ? あんたは冒険者だから死んでも復活出来るかも知れないがな、討伐者はそうじゃないんだ。誰かから教えられなかったのか?」


「……いえ、初耳でした。……すみません」



今更周囲の迷惑に気づいたらしく、泣きこそしないが少しシュンとした表情になった。

どうやら意図的に周りを傷付けようなんて魂胆は更々なく、本当に自分の成長の為に使っていたらしい。


こんな子が討伐者殺し(ハンターキラー)だったら世も末であるが、本当に反省しているらしいのでさっさと水に流す。

端から観たら今の俺美少女を泣かしてるクズ男だからな。



「それにさ。あんたはさっき仲間は邪魔だといったがな、そんなことはない。一人で出来ない事でも仲間と強力することで初めて出来る事もあるんだ」


「一匹狼を決め込んでいそうなあなたに友情を説かれるのは意外ですね」


ぐぅ、さらっと痛いところをついてくれる。余計なお世話だ。



「はあ、解ればいいさ。それよりもこれから俺はギルドへ行こうと思うんだがあんたも一緒にこないか?」


「……それなら、私からも一つ提案があります。私と旅路を共にしませんか。これからと言わずにこの先も」


「はぁ? パーティの仲間が欲しいのならギルドで募集しろよ。俺はガキの子守りをしてるほど暇じゃねーよ」


「この私に仲間ができると本当に思っているのですか?」


「……自分で言って威張るなよ。見てるこっちが悲しくなるだろ?」


「それに先程のあなたの力に興味を抱きました。あなたの力があればきっと私の目的に役立つと確信しています」


「道具扱いかよ。まあ別にいいけどさ。俺の邪魔だけはすんなよ」


「それはこっちのセリフです。私の戦力に戦慄しないで下さいね」



ツンデレなのだろうか。単に他人との交流が下手なだけだろうか。

まあ初対面の相手にツンデレになる筈もないから後者なのだろう。

俺も似たような性格だしお互い様か。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

※追記 挿絵追加に伴い、ヒロインの服装描写を追加。2021/05/09

本文のルビを修正 2021/11/21

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ