1 黒魔術師の少年(挿絵有り)
本作品をお読み下さりありがとうございます。
今作は『もしも異世界に未来の地球から来た高性能AIが転移したら』というテーマで書いています。
久しぶりに異世界小説を書くので、設定が荒いところがあると思いますがよろしくお願いします。
自作イラスト(絵師名、輝鱗)
新タイトルロゴ
※追記 色んな人に自分の拙い作品を見て貰えて嬉しいです。
良いタイトルロゴが出来たのでサブタイトルをちょっと弄りました。
既に完結しております!
まあ製作が難航したのと、他にやりたい事が出来たので無理矢理ですが。
最初はテンプレなろうですが、次第に独特な世界感になるように書いてみました!
まだ読まれてない方はどうぞお読み下さいませ!
現在累積pv3400達成、1576ユニーク達成中
読んで下さってありがとうございますヾ(*>∇<*)ノ
2021/11/21
「ハジメ。お前は今日をもってこの家から追放することにした。3日猶予をやる。それまでにさっさと荷物をまとめて出ていきたまえ」
それだけいって親父はマジックバックを机の上に叩きつけた。
いきなり書斎に呼び出されたと思ったらこれである。
少なくとも親父はドッキリとか大嫌いな人間だった筈なのだが……。
「はっ、何いってんだよ親父! 冗談だよn──」
「わしは方便は大嫌いだ」
でっ、ですよねー。
下手な魔王よりよっぽど怖い。
「お前はもう16歳になった。立派な成人じゃないか。折角の機会だ。自立して討伐者にでもなるなり、他の仕事を探すなりしたらどうだ?」
この世界ではモンスターが出現する。
放置するとモンスターが増殖しすぎて人間がこの世界で生きていけなくなる。
なのでモンスターを討伐する討伐者という職業が存在する。
モンスターを討伐するとどういう理屈なのか、この世界の通貨であるキラ鉱石や宝箱を落としてくれるので、討伐者になる人間は意外と多い。
なのだが、まさかこんな窮地に迫られるとは夢にも思ってもいなかった。
だって俺まだ16だぜ? 学校だってあるのにさ……。
「ちょっと待てよ! それならイルとアイムだって成人じゃないか! あの二人はここにいて良くて、俺だけが駄目な理由がなんだよ!」
親父はまるでゴミを見るような目で俺を睨む。
実の息子によくそんな目を向けれるもんだと、改めて親父の冷酷さを再確認した。
「そんなものお前が一番分かっているだろう。才能だよ。才能。お前にはそれがない」
「ぐっ……」
言われなくても分かっている事実が心に刺さる。
普通なら倫理観で言い返す事もできた筈だが、もういっそなるようになってしまった方が楽なのかとすら錯覚してきた。
「この年になって魔法が一種類しか使えない。おまけに魔力の調整という基礎すら儘ならない奴など、わが一族の最大の汚点だ。ついでに自主退学の手続きもしておいた。学長殿にもこれ以上迷惑をかけれないからな」
「はっ!? そこまでするのか!」
「入学式以降引きこもりおってる奴が偉そうにいうなぁ!」
「……そ、それは。それは虐めてくる学校の奴らが悪いんだよ!」
「そういう怠惰な性格だから虐められるのだ! 今までずっと努力を怠っていた報いだ!」
「……でっ、でも」
ヤバい、親父の言うことが正論過ぎて言い返せないのがまたツラい。
「つべこべいうな! さっさと出ていって現実の厳しさを叩き込まれてこい! 今後わが家の名を名乗ることも許さんからな、我が家からの金銭的支援も一切無いものだと思え!」
俺は天才魔術師を数多く排出する、魔術の名家グリアモル家の次男坊として育てられた。
だが、兄妹達は目まぐるしい魔術の才能を発揮しているにも関わらず、俺だけは魔術の才能が一向に開花しなかった。
只でさえ教育に厳しい親父である、見限られても仕方のない事だった。
「……分かったよ! 今まで世話になったなぁくそ親父ぃ!」
こうして俺はマジックバックに入るだけの荷物を詰めこんで、今まで育ってきた豪邸を後にした。
覚えていろよ、くそ親父。
俺は絶対強くなってあんたよりも立派な黒魔術師になってやるからなぁ!
*
──といきこんではみたものの。
結局半年たっても俺の魔術の才能が開花することは無かった。
現在俺はソロの討伐者として活動し、日に日にの生活費を稼いでいる。
宿を借りる金すら惜しいので、テントに野宿で夜を過ごすのが常態化した。
都落ち故に最初こそ酷く貧乏に苦しんだが、慣れちまったら今の生活でも案外どうでも良くなってしまうのが人間の怖い事だった。
しかし、討伐者といえどもモンスターを狩るときにも満足に魔法も使えない。
雑魚モンスター相手なら家を出るときにかっぱらってきた片手剣でもどうにかなるが、強力なモンスターにはまず通用しない鈍だ。
強いモンスターを狩れないから雑魚だけを倒す、お金が溜まらない、戦闘の技術も伸びない、最新の武器も調達できない、ただただレベルだけが無駄に上がる、見事に負の無限ループに陥った訳である。
「……はあ。いつになったら成り上がれんだよ俺。せめて強い奴、例えば冒険者のパーティに入れればな……」
試しに想像してみたが、良いようにこき使われて、身ぐるみを剥がされて、ボロ雑巾のように捨てられる、絶望的なビジョンしか見えなかった。
まだ荷物を整える猶予だけ与えてくれただけに、今思えばあのクソ親父の方がよっぽどましかもしれない。
冒険者とは異世界から召喚、もしくは転生された人間だ。
冒険者には討伐者とは異なり戦闘に死亡しても教会で復活する事ができる『神の加護』と呼ばれる特殊能力を神々から与えられるらしい。
要するにこの世界の人間は討伐者と呼ばれ、異世界から来られた人間は冒険者と呼ばれる。
当然生き返れる為に冒険者の方が戦力的には有利である。
しかし、幸いな事に高難度のダンジョンに自ら入ることがなければ、街周囲のフィールドでは普通弱いモンスターしか出現しない。
強力なモンスターも自分の縄張りから意味もなく抜け出す筈もない。
……本来はその筈なのだが。
「……ん? なんかいきなり暗くなってきた……あ」
俺の目の前には巨大なドラゴンが聳え立っていた。
この辺りには基本スライムやゴブリン、強い奴でも精々オークしか出現しない筈なのに、激甚級ダンジョンの最奥地に堂々と佇んでてもおかしくないレベルのモンスターがいること自体おかしい。どう見ても場違いである。
だが、幸いな事に今はドラゴンは眠っていて俺に気付かれていない。
今ならこっそり逃げれるかと思ったのも束の間。
「はっ!」
ときりの良い少女の声が響いて、
「ぐわぁぁん!」
と遅れてドラゴンの激昂が世界を揺るがした。
どうやら誰かによってドラゴンの尻尾が一刀両断されたようで、ついでに目覚めたドラゴンに俺も見つかってしまった。
マズイ、これ死ぬかもしれない。
というか絶対に死ぬ奴だ。
誰だよ余計な事をしやがって。
そもそも愚痴を溢している場合では無かった。
怒り狂ったドラゴンの爪が俺に向かって凪ぎ払われたのだ。
畜生、黙ってつったってて殺されるくらいならこっちから呪文を一発お見舞いしてやる!
「詠唱! 魔術濁流!」
体内の魔力を全て消費し強大な魔力の波動を放つ黒魔術最大級魔法。
この呪文は全魔力を消費する上に魔力値が上限に達していないと使えない。
おまけに使用後の停滞時間が長く相手に避けられたら殺されるのを待つしかない。
極めつけには俺はこれ以外の魔法を一切習得していないのだ。
攻撃魔力がいくら高くても。
生命力がべらぼうにあっても。
魔力が底知れないほどにあっても。
レベルなんて既にカンストしようとも。
一発で魔力を使い切るようでは、実戦には役に立たないのだ。
モンスターが魔法を避ければ俺は死ぬ。
冗談を通り越して最早呪いのレベルなのだ。
これが俺が失敗作と呼ばれるようになった一番の理由であった。
「ぐぎゃぁぁぁ!」
しかし、怒りに我を忘れて冷静さを欠いていたのかドラゴンは避けることもなく烈波に直撃。
断末魔と宝箱を残して姿を消していった。
「はあ……はあ。……やったのか。まだ生きてるのか俺は……」
仰向けで息切れしながら倒れる情けない俺の返事を求めてない発言に、誰かの声が帰ってきた。
言わずもがなさっきの彼女のものだった。
ここまでお読み下さりありがとうございました。
この作品面白い、続きが気になると思った方は評価やブックマークを頂けると作者は喜びます。
まあ物語は始まったばかりですので、時間があるときに先を読んでくだされば嬉しいです。
※修正 誤字訂正 ケルベロス→ウロボロスに修正、一部加筆 2021/04/18
冒頭文章を追放ものっぽく修正。 2021/04/22
本文ちょっと改稿。一部……を──に変更。 2021/07/05
前書きを更新、本文のルビを修正。 2021/11/21