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1-8話 僕の特訓



 僕はベンケイさんの一言に動揺していた!

 確かに思い返せばベンケイさんはショタコンの匂いがする!

 そして『1発ヤろう!』って……

 どっどどどどどどどうしよう!

 知識はある!

 しかし、前世では経験がない!

 初めてが獣人族で美人でグラマーなベンケイさんだとは……


「ほら! 外行くよ!」


「外でっ!? マジですか!? 行きなり難易度高くないですか!?」


「あ? 何いってんだ? ここじゃ狭いし、ヤってたらめちゃめちゃになるだろ? ほら、行くぞ」


 めっちゃめっちゃ!

 なんと!

 しかし、狭いとはどんなアクロバティックで激しいプレイなんだ……

 確かに魔法やスキルもあるもんな……

 ヤバいぞ……

 前世の知識で対応できん……

 


 異世界恐るべし……


 僕たちは穴の外に出た。


「ホントにいいんですか? 傷は大丈夫ですか?」


「ああ! 問題ないさ! 掛かってきな!」


「ええっ!? 僕からいくんですか!?」


「おう! 好きなように来なさい」


 なんてこったい……

 僕はどうすればいいんだああああああ!

 好きなようにって言ってた。好きなようにって言ってた。


 じゃあ、今まで不可抗力だったし……


 僕は意を決しゆっくりとベンケイさんの目の前まで近付き……


「ベンケイさん! 少し屈んでください」


「ん? ……んにゃああぁぁぁぁっ!」


 目の前の大きな2つの山を揉んだ。


 ゴンっ!


「うがっ!」


 頭に大きな衝撃が走り地面とキスした。


「なっなななにゃにゃにゃにゃ(にゃに)しやがる!?」


「だっだっで……ヤろうって言ったじゃないですか……」


 僕は殴られた頭と地面に叩きつけられた顔面を抑え【ヒーリング】しながら立ち上がった。


「えっ……」


「えっ……」


 しばらく無言の時間ができた。お互いにどういうことかわからず目が点になっている。またしてもベンケイさんの顔が赤くなってきて……


「このエロガキがっ!」


「いっだぁっ!」


 また殴られる。


「あたしが言ったのは戦いの稽古をつけてやるっていう意味だ!」


「ええっ!?」


 ヤバい。超恥ずかしい。


「マキナも男だ。そういうことに興味を持つのはいいが早すぎる! サルか! お前は!」


「はい……ごめんなさい」


「まあ、いいわ。戦いということがわかったからには早速掛かってこい」


「でも、ベンケイさん怪我してますし……」


「お子さま相手の遊びで傷が開くほどヤワじゃねーよ」


「でも、ベンケイさん女性ですし……その……殴れませんよ!」


「あめぇっ!」


「っ!?」


 ベンケイさんが急に大声を張り上げた。


「いいか。お前は勇者だ。今後どんなことに巻き込まれるかわかったもんじゃない! そんなときに女だから、子どもだから、老人だから何もできないなんて簡単に殺されちまうぞ!」


「うぅ……」


 ベンケイさんが言うことはまさに正論だった。今後のことを考え光属性で選べる回復魔法を選んだのはいいが守りに徹し過ぎてもダメだ。

 それこそ過去に見た漫画やゲームでも女の人、子ども、老人の暗殺者は沢山いた。 


「こんな機会は滅多にない。安心しな。あたしはlevel3だ。それに盗賊団のボスだ。傷口も狙っていいぜ?」


 ベンケイさんはここまで良くしてくれる。


 ぱんっ! ぱんっ!


 僕は顔を両手で叩いた。ベンケイさんの胸を借りよう!

 ……違う意味でもいつかは……


「おう! 気合い入ったか! いい顔してる! こいやっ!」


 僕はベンケイさんに向かって走り出す。


「【ライト】!」


「うおっ!?」


 僕は【ライト】を目潰しに使った。ベンケイさんは目を抑えている。周りが見えてない今がチャンス! 僕は勢いのまま飛び掛かり……


「おっと」


 ぱしっ……殴りかかった腕をベンケイさんに捕まれ、そのまま壁に投げつけられた。


「うぎっ……」


「あっ! わりぃ。受け身取れないのか?」


 倒れてる僕の方にベンケイさんが向かってくる。


「あー……ようやく少しずつ見えるようになってきたぜ」


「えっ!? ベンケイさん見えてなかったんですか!?」


「おう! しかし、マキナ。お前本当に初戦闘か? まさか、暗いところを照らす【ライト】に魔力を込めて目潰し代わりに使うとは思わなかったぜ」


「見えてなかったのにどうして……」


「あー、まだまだガキだねぇ……この岩場で足元の砂利。どこから近付いて来て、踏み込んだのがどのあたりか。そして、息づかいとか音でわかったよ。まぁ、あたしクラスになるとな」


「あっ!」


 びっくりした。確かに今足踏みしただけでも、じゃっ……じゃっ……と音がする。また緊張していたからか息づかいも荒かった。


「でも、普通のやつなら今の一撃はもらってたよ。初戦なのに凄いな」


 やや乱暴に頭を撫でてくれた。

 普通に嬉しい。


「でも、一撃もらったあと捕まってぼこぼこだろうな」


「こわっ!」


「だってただのパンチだもん」


「ただのパンチじゃないものってあるんですか?」


「あるさ。ちょっとみてろ……ふんっ」


 どんっ! 

 という音と共に僕の前にあった岩がベンケイさんのパンチによりぼろぼろと崩れた。


「べっベンケイさん今のは……」


「マキナにゲンコツした時と同じ力で殴った」


「いやいやいや! さっきの岩僕の背丈くらいありましたよ! 同じ力で殴ってたら僕もああなってますよ!」


 粉々の岩を指差しながら言った。


「力は一緒だ。ただし魔力を込めた」


「魔力を?」


「そうだ。魔力は魔法を使う時だけのものじゃない。ん~、魔力を身体全体に流す……っていうか服のように包み込んでるイメージを持て! そうすると自分力も上がるぞ!」


「うわぁ……説明が雑」


「んだと!」


 ごんっ!


「ごめんなさい! 口に出てました」


「とにかくだ。マキナは【ヒーリング】を使える。しかも、あたしのケガを治すほどのな! 魔力は十分にある魔法を使う時のように意識してみろ」


「はい!」


 魔力をイメージして……体の周りを覆うように……

 なんとなくわかって来たかも……


「おっ? いい感じじゃん。今度は脚に意識を向けてジャンプしてみろ」


「はいっ! ……うわっ!」


 ベンケイさんの目線くらいジャンプできた!

 ベンケイさんは2メートル近い身長だから凄い飛んでる! 

 これ跳び箱何段分だ?


「ほいっと!」


 ベンケイさんにジャンプした所を抱き締めるようにキャッチされる。


「ん~凄い! やっぱりマキナは凄いな! すぐにここまでできるなんて!」


 ひとしきり頬擦りされた後、おろしてもらい……


「じゃあ、そのままジャンプしてあたしの顔を殴ってみな」


「ええっ!? だって魔力を込めると威力が増すんですよ!?」


「いいからいいから! 絶対……ずぅえーーーたいにっ! 大丈夫だから」


「……では」


 僕はまた走り助走をつけ飛びかかる。さっきはお腹くらいの位置だったけど、今度は顔に向かって飛び拳をベンケイさんの顔に叩き込んだ。目をぎゅうっとつむり……


 がんっ!


 ……え?


「いったああぁぁぁぁっ!」


 なんだこれ! 鉄!? なんか金属殴ったみたい!

 手を抑え転げる。よく手を見ると腫れ上がり、拳からは血が出ていた。


「どうだ? 大丈夫だったろ?」


「なんですか!? なんなんですか? ベンケイさん硬いなんてものじゃなかったですよ!」


「あっはっは。わりぃわりぃ。これはあたしのスキル【金剛(こんごう)】だ」


「【金剛】?」


「そうだ。あたしは【(あらかね)の女神メルク】さまの祝福を受けたんだ。【金剛】はあたしのスキルで身体を金属のように硬質化するスキルさ。ほら、あたしは見ての通りlevel3だから一番最初に選んだ【金剛】もかなり強いスキルになってるんだ」


「なるほどです……【金剛】……カッコいい! というかそれはどうやっているんですか」


 『見ての通り』といったベンケイさんは自分の手の甲を僕に見せると銀色の4つの線で書かれた紋章の様なものが出てきた。


「ああ。これはね。祝福の時に教えて貰うんだけど、祝福後に自分が14柱の誰から祝福を受けたかわかる見分け方かな。祝福後はその女神さまの色が魔力として現れる。まあ、光るっていうイメージかな? level0から上がる度に1本ずつ紋章の線が増えていくんだ。あたしはlevel3だから4本線で書かれた紋章。そして女神メルクさまを表す銀色の光さね。マキナは【光の女神アストライア】さまからだから金色の紋章がでるはずだね。やってみ?」


「はい!」


 僕は魔力を込めた。level2だから3本線の紋章が出てくるはずだ。

 しかし、紋章は出てこなかった。


「あれ?」


「おっかしいな~もしかして紋章はしっかりと祝福で御披露目した後じゃないとわからない感じかな?」


「そうかもしれません……ほかの女神さまの力も使えないですし……」


「まぁ、そんなこともあるさ。それよか訓練しよう! マキナ絶対強くなるぜ!」


「はいっ! よろしくお願いいたします!」


 それから3ヵ月ほどの月日が流れた。


 僕は毎日ベンケイさんと戦闘訓練を行った。

 日課の【ヒーリング】により計1週間ほど掛かったがベンケイさんの傷は完治した。まだlevel2だからなのか完全傷は消えずうっすらと後が残ってしまった。ベンケイさんは『これ以上は大丈夫だ! この傷のお陰でマキナと知り合ったんだ。記念に取っておきてぇ』と顔を紅くしながら言っていた時は正直萌えた……


 そんなこんなで特訓したり、一緒に捕まえた魚や持ってきた食材でご飯を食べたりベンケイさんとの日々は楽しかった。

 それにベンケイさんとの特訓のお陰で選んだのに使えなかったスキルも使えるようになった。

 

 序盤は泣いた日もあったけど、沢山笑いあった。

 この人とずっと一緒にいたい!

 たったの3ヶ月だけど僕は心のそこからそう思った。


 だけど、ベンケイさんは他国の獣人族である……

 いつかは別れる日がくるのかな……?




 マキナがベンケイに会いに行く数時間前……



「おい……いたぞ」


「早速いくかにゃ?」


 マキナとベンケイの隠れ家の崖の上に人影が2つあった……


 ベンケイとの別れが近付いていることをマキナは知らなかったのだ……




つづく

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