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1-4話 僕が助ける


 アガーテ公爵家が帰ってから半年がたった。

 ゼルさんとはあれからも手紙のやり取りを行っている。というのも学園の休みが終わりゼルさんに限らず、ロインさまやうちのマルス兄さま、マリアお姉さまも同様に学園に戻っていった。

 ゼルさんは手紙で『さま付け禁止』をしてきたので一先ずは『さん付け』に変更した。

 

 今日も届いた手紙を確認する。


『マキナくんへ

 

 元気しているかな?

 そろそろ秋も終わり冬に差し掛かろうとしている。マキナくんは形式ガチガチのお手紙が苦手とのことでいつも通り崩してお送りします。

 次に会えるのはまた長期の休みが貰えるのは春先かな? 

 ちゃんとあってお話がしたいです。もうすぐ8歳になるマキナくんはその冬終わりの春には遂に【女神さまの祝福】を受け、その2年後の10歳の年には学園に入学。まだ先ですがこれからのことを考えるととても楽しみです。

 マリアはマキナくんに会いたいと私の前では駄々をこね。いざ私もと同意すると「お前のような奴にはマキナはやれん!」と怒ってきます。最近はそんなマリアを「お姉ちゃん」と呼んでからかうのがマイブームになってきています。

 別件ですがまだ、お兄さまについては調べております。

 進展が報告できずに申し訳ございません。

 ただ、私とマキナくんのようにティオさまと最近は頻繁に手紙のやり取りをしているようです

 そこに何か手がかりがあるのかも……


 またご連絡致しますね。

 ゼル=アガーテ』



 そう。来年の春には僕が8歳の年となり、遂に【女神さまの祝福の儀】が行われるそこで恐らく【炎・武】の力も扱えるようになるのだろう。

 現時点で【光】はlevel2、勇者の特権でlevelアップごとに覚える魔法は選べるため有利だ。誰に有利なのかは不明だけど。


 手紙をポケットに入れ外に出る。

 屋敷の人間は誰一人として僕に声をかけない。そんな中お父さまとお義母さまにすれ違う。


「お父さま、お義母さま。少し外へ出掛けてまいります……」


「……」

「……」


 無視です。

 はぁ……まだ許してくれないのか。

 少し凹みながら屋敷を出て街へと繰り出した。


 実はこの屋敷無いで僕とティオの立場は逆転してしまった。

ティオはロインと婚約をしている許嫁になってからはお父さま、お義母さまの評価がかわり、ティオの買いたいものは買い武器や防具更には家庭教師まで着けた。

それは公爵家への嫁入りの内定者だからである。


 まぁ、買いたいものと言ってもティオは武器や自分の鍛練など完全に脳筋よりだ。そして僕は指導してくれるものもいないため自主的に鍛えていた。元々格闘技を習っていたり、TV試合や教本、最近では漫画なんかも勉強になるためその偏りのある知識が覚えてる範囲内で技の練習なんかもしていた。


 なぜ僕を蔑ろにしているかだけど、ズバリ言ってしまうとティオの婚約者、ロインが原因である。

 なんの原因かは街を出て見回すと一目瞭然だった。リバーシだ。それは莫大なヒット商品となった。たったの3ヶ月でだ。


 ロインは契約書類を一切送って来ず、会合後即座にアイテムの特許を王国で取得しあとは商品を量産。もともと持っていた商会のネットワークを駆使して一気にリバーシを広げた。


 当然僕も黙っていることが出来ず、手紙をロインに送った。

 ……のだが送った手紙はロインにリバーシの所有権を贈与しろとの内容にすり替えられイワン公爵は大激怒。

 無論、ゼル・ロニ・クレアがアイデアは僕のものでロインはサポートするだけの約束だと訴えるも聞き入れず、処罰という最悪の結果は免れたが国内での評価は地に落ちた。


 ちなみにブラコンのマリアお姉さまはどうしたのかというと、学園を抜け出し辺境伯領へと戻り、


『なぜ、マキナがこんなに不当な扱いを受けるのです! こちらの名誉棄損で公爵家を正式に裁判で訴えるべきだ!』


 と鬼の形相で講義した。それが聞き入れられないとわかるや否や。


『こんなにわからないとは! 私はマキナと共にシルフィル家の縁を切り二人で暮らす!』


 と騒ぎ立てた。マリアお姉さまを巻き込む訳には行かないと説得しなんとか学園に戻ってもらいゼルさんと王国都市内部で調査してくれることになった。


 そして僕はマリアお姉さまを暴走させたという理由で更に立場を悪くした。お義母さまは僕に関わらないように接し、元々厳しかったお父さま完全に僕を見放した。

 今まで通りに屋敷に住まわせてもらってはいるのだが食事は最低限のものを部屋の前の床に配膳されたりなど、家の中でも突き放されていた。


 我ながらショックというよりはむしろ良くここまで上手く行かなかったなぁ……と感心した。

 正直、以前まで貰っていたお小遣いを丸々貯めていたので金銭的には困らない。というよりお小遣いというよりは一般人の給料ばりだった。

 なのでまぁ、しばらくは困らないだろう。

 

 僕は足を進めた。途中商店で林檎を買い噛りながら待ちの外へ。そして近くの森へとどんどん入っていく。少し行くと湖が姿を表す。そこで水で喉を潤す。

 よく前世では外の水はキレイじゃないから飲んじゃダメと言われるが、この世界はまだ廃棄ガスや汚水や産業廃棄物がすくないため大丈夫だろう……最初のうちはお腹をくだすことはあったけど……


 湖から少し離れた所が崖の(ふもと)となっていて、むき出しの岩場なのだが……


「……うん! 今日も見えない!」


 必ずだが毎回ここにつくと自我自賛してしまう。

 何の変哲のない岩場なのだが、その壁に手を伸ばすと岩の壁を通り越して中に入ることができた。中は暗く少し入り口が急な斜面になっており25mほど奥に進める。入り口の周囲には僕の現在4つ使える魔法の1つである【サテライト】が展開されている。

 【サテライト】は光属性の魔法であり、光を集め照射することができる。それによりこの岩場では光が屈折して、周囲の岩を反射して入り口を隠すことができる。

 それで僕の秘密基地が完成したというものだ。


 秘密基地……

 うん! わくわくします! 男の子の醍醐味です!

 しかも、【サテライト】は今の僕の魔力であれば2~3日は持つ燃費のいい魔法だ。僕の攻撃手段の1つである。

 中に入るとやはり真っ暗なので続けて【ライト】の魔法を放つ。

 これは簡単。

 通常魔法と呼ばれるlevel0の光属性であれば誰でも使える、手元に30cmくらいの光の球体ができ周囲が明るく光る魔法。levelアップで得られる魔法やスキルとは違うものだ。

 今後手に入れる炎属性ならわかりやすい。level0になった瞬間自分が使える魔法、スキルを脳内で選ぶことができる。そして、それとは別に通常魔法という魔力を込めれば使える共通魔法が貰える。火なら【フレア】という込めた魔力に応じて火がでるらしい。


 通常魔法と魔法・スキル、勇者特権で選べるのが自由はまさにチートだ。選ぶ魔法さえ間違えなければ尚よい。どれも捨てがたくてlevel2の現在、3つ魔法とスキルを選んだのだがすごい悩んだ……


 ぱちゃっ

 

 ん?


 ぱちゃっ?



「……うえっ!? なんだこれっ!?」


 僕は驚いた! 1人思い更けっていて気が付かなかったがライトで照らし出した足下には赤い水溜まりが出来ていた。


「これって……血っ!?」


そして奥には引きずった後のような血の後が続いている。


 なんだよ!? ここ入口は見えないはずだぞ? なんで!?


 足下の血に滑らないよう慎重に奥へと歩いて行く。


「え?」


 間抜けな声をあげた。

 正面には胴体を右肩から左脇にかけて斜めに鋭利な刃物で切られた女性が血塗れで倒れていた。

 恐る恐る近寄ると浅くではあるがまだ呼吸がある。

 白に黒い虎柄模様の入った猫耳、褐色の肌に豊満な胸で割れた腹筋。そして、銀色の髪ブラができるであろう長い髪は先の部分が血で染まっていた。

 褐色の裸だが傷のせいなのか顔が青ざめていた。

 顔にも大きな傷があるのだがそれは古傷だろう……って今はそんな場合ではない!


「【ヒーリング】!」


 僕は魔法をかけた。しかし、深く切られているためなのか治りが遅い、僕は更に自分の魔力を込めた。


「ぐっ……!」


 歯を食い縛る。更に魔力を込める。頭が割れるように痛いが成果はある。少しずつ女性の傷は閉じていく。


「あああああっ!」


 最後の魔力を込める。女性の傷口は閉じたのを朦朧とする意識の中で確認した。


「あっ……」


 ぷつんと力が抜けその女性の治したばかりのお腹の上に倒れ込む。

限界まで魔力を込めると今回のように気を失う。それを繰り返すと魔力は生命力とイコールなため単純に自分の何かを削る……

 でも、そうまでしても助ける理由がある。


 それは……


 傷をおった獣人が美人だったことに他ならない。

 そして、どこかか現状の寂しさもあるのかもしれない。



 これの救った獣人がマキナの運命の1人になるとはこの時マキナは思うことなく気を失った……






つづく

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