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1-3話 僕の甘さ


「あらあら、マリアさんここは学園の外ですが学園内と同じ接し方が良いのですが……」


 はわわわわ……

 近づいて来るお姉さま背中にどす黒いオーラが見えるような……

 元来ブラコンもので、こういうマリア姉さまみたいな騎士タイプはこの事態を目撃して面白くは思わない。

 ほらほらほらほら、笑顔が全然笑顔じゃないよ……


「では遠慮なく! ゼルはマキナと破談になったはずなのだが?」


 ぐいっ! と僕を自分の所に寄せるマリア姉さま。


「そうですわね。でもね、マリア……私は諦めておりませんわよ!」


 ぐいっ! と今度はゼルさまの方へ寄せられる。


「いやいや!」


「いやいや!」


 ……とお互いに引き寄せ合う。

 男の子冥利に尽きる! と言いたいところなのだが、ぶっちゃけ引っ張られ続けて頭が揺れて酔って来たのか気持ちが悪い……いてててててててて!

 今度は僕の両腕で綱引きがっ!


「いい加減話してくれないかな~? マキナが痛がっているだろ~」


「いいえ~お姉さんのあなたが離すべきではありませんこと~?」


 ぐぎぎぎぎぎぎ……

 ダメっ! 千切れちゃうっ! ライフポイントが0になっちゃう~! あっ、あれなら! 


 まだ、販路を確立していないのに表に出すのは嫌だけど、我が身に変えられない!


「ストーーーーープっ! 二人ともやめてください!」


『なによ!』


 2人が一瞬止まった今の打ちに提案だ!


「2人とも僕が考えたゲームで勝負をつけませんか?」


「マキナくんが考えた?」


「ほぅ? マキナいいだろう?」


 僕は2人の了承を得て机の中にしまってある板を出した。


「これは?」


「これは……【リバーシ】……です」


 先人の皆さまごめんなさい……

 やはり、オ○ロや白黒系は【リバーシ】となります!

 これ以上分かりやすい名前思い付かないんだもん!


「マキナくん、このリバーシとはどういうゲームなの?」


「それはですね……」


 ある程度2人にルールを説明し実際にやって貰ったのだが、案の定ハマっていた。

 まぁ、最初のうちは自分の色を多くひっくり返すことに専念するんだけど如何に相手の手を減らすか、このタイミングのこの場所なら終了までひっくり返されないなど高度な読み合いが必要だ。

 それこそ世界大会が催されるほどのゲームだ。

 ちなみに僕の戦法は一番端のラインを死守して角を全て相手に先に取らせて角以外の周りを取るという戦法をよく使う。


 2人は見事に白熱し『もう一回! もう一回!』と勝負を続けて、ゼルさまを探しに来たロニやクレアお嬢さまも交ざりごちゃごちゃしていた。


 ハマり過ぎでしょ……


「いや~流石は私のマキナだな! こんなに面白いことを思い付くなんて!」


「ぐぬぬ……ロニ! クレア! 早く勝負を終わらせてわたくしとマリアに変わりなさい!」


「ぬふふ、マキナ。お風呂上がりでいい匂いがするし髪がふわふわだな~」


 今のところ1勝マリア姉さまが勝ち越している。

 勝手いるからこそ、後ろから僕を抱き抱えるように座りひたすら僕の匂いを嗅ぎ、頭を撫で回している。


 あれ?


 僕の姉さまは変態なのでは?


「あー! もうっ! ゼルねぇがうるせえからクレアに負けちゃっただろ!」


「……やった! 勝てました! マキナさま見てました? 私勝ちましたよ!」


 悔しそうにするロニを尻目に僕の方へクレアお嬢さまがニコニコしながら近づいてきた。 


「流石、クレアさま。お上手でしたよ。初めてとは思えません」


「えへへ……」


 頭を撫でると少し顔を赤らめ微笑んでくれた。


 なにこれ?

 天使かよ?


 また、マリアお姉さまとゼルさまの勝負が始まり、ロニが僕の座るベッドにダイブしてくる。


「なあ! マキナすげえよ! 俺たちを大人を呼んで助けてくれただけじゃなく、リバーシなんて思い付くなんてね!」


「たまたまだよ。僕からしたらロニやゼルさまの方が凄いと思うよ? あんなガラの悪い大人3人の前に立ち向かうんだもん。僕そんな勇気ないよ」


「嬉しいこと言ってくれるな! 親友! じゃあこれからはロメリアねぇ、ゼルねぇ、クレアと一緒にマキナも守ってやるよ! 腕っぷしには自信があるし、もっと力を付けて冒険者ギルドに入って有名になるんだ!」


「ははっ。ロニ、ありがとう。僕も頑張るよ! 所でロメリアさまって今日来ないの?」


「ああ……まっ、まぁその内マキナにも紹介するよ!」


 何か含みがあるな~

 だけど、プライバシーやマナーもあるし深くは聞くまい。


「おっ? なにやら面白そうなことをしているね?」


 緑色のキレイな髪をかきあげて、嫡男であるロインさまが入ってきた。

 いや、ノックしないの?

 なんか納得いかない……


「なんだ兄さんか! マキナこういうゲーム考えついたんだぜ! ホントにすげえよ!」


「へぇ~……興味深いな。私にも教えてくれるかい?」


「えーとな、あそこでやってるみたいに縦・横・斜めで挟むじゃん? するとね……」


 ロニが自慢気にロインさまに話し、ロインさまも興味深く顎に手を押さえながら話を聞いた。

 するとロインさまは子どものように無邪気に笑ってこちらにきた。


「マキナくん! 君は凄いよ! これは今までこの国にはない遊びだ!」


 近い! 近い!

 手を握ってぶんぶんとなんか最初のイメージとは違うな……

 凄い笑顔で無邪気な子どもみたいだ。


「いっ、いえ! お褒め頂くほどのことでは」


「やはり、君は謙遜が過ぎるな! ところでこのゲームは今後どうするんだい? 商品化すれば大ヒット間違いなしだ! ロニもそう思うよね?」


「あぁ! 兄貴のいう通りだ! なぁ、マキナ! これ絶対に世に出した方がいいぜ」


「……わたしもそう思います」


 ロインさまもロニも更にはクレアまでもが口を揃えて誉めてくれる。

 確かにそこは目標にしているところだけど問題が……


「なんなら私はマキナくんへの支援も辞さない!」


「!?」


 待っていました!

 そうです!

 商品開発に必要な資金や、マネされないための法律関係や政治的後ろ楯や流通関係!

 公爵家なら信頼できる!

 でも、直ぐに食い付くのは……


「え~と、僕みたいな未熟者に一つの商品を世に出すことができるのでしょうか? それに上手く行きますでしょうか?」


「勿論だとも! 私は学生の身でありながら商会のツテがある! 材料などは僕が負担し面倒な手続きも代行しよう!」


「マキナ、ロインさまは学生だけど商会を通じて武器や防具、日用品など提案企画を凄腕だ。12歳の2学年にして学園の【十指評決(じゅっしひょうけつ)】という代表の一角だ」


「マリアさん、僕を誉めても何もでませんよ?」


 なるほど……

 生徒会みたいな学園王道ものでよくある、最強メンバーみたいなものか……

 だったら乗らない訳にはいかないでしょう!


 僕が学園に通う頃にはこの人は7年生。ここでお近づきになれれば卒業後の選択肢も広がる。

 

「では、お手数お掛けしますがお願いできますでしょうか?」


「ああ! マキナくん! 今後も良い関係で行こう! あっ、面倒かもしれないが後で契約書を送らせるから確認よろしく頼むよ。こういうものがないと安心できないだろう?」


「はい! 何から何まで誠にありがとうございます!」


 契約書も準備してくれるとは!

 本当にありがたいし、ロインさまイケメンの上に貴族で信頼厚いし商会にもツテがあるとか何者なんだ!

 うらやましい!

 ロインさまこそ主人公なのでは?



 こうしてロインさまにオ○ロこと、リバーシの商品化を手伝って頂くことになった!

 これで生前呼んできたマンガやアニメの異世界転生もののように資金大量獲得だ!


 そんなこんな考えていると。


「そういえば、マキナくんは勇者の可能性があると先ほどの会合で聞いたけど何か力の証明みたいなことはあるかい? 少し気になるな?」



 なっ、なんでいきなりそんなことを。


「え~っと、生まれた時そのような現象があったとは聞いておりますが特に何か実感できることはこれといって……」


「そうか、わかった。では私はこれで。リバーシの件は進めておくよ」


「はっはい」


「変な兄貴」


 確かに最後の方の挙動は少しおかしなものがあった。

 でも、リバーシを市場流通させてくれるという話ができたことはデカイ。ちゃんと実績のある貴族さまだから尚期待できる。


 ……しかし、人生はそう上手くはいかないということを数日後に知ることになるとは……






◇ロイン視点



「なんで辺境伯ごときの領地に僕もいかなきゃならんのだ……」


 俺ロインは辺境伯の用意した部屋のベッドにダイブして独り言を言った。只でさえめんどくさい行事にも関わらず、妹たち・弟は馬車を抜け出し町へと向かったようだ。

 それがまたムカつく……


「ああ~、めんどくせぇ。あいつらだけ町にくり出すとかずりぃわ……大体なんで俺が自分よりも身分が下のものと見合いなどせにゃあかんのだ」


 公爵家の跡取りだ。普通に王宮の王女たちともワンチャンスある。なのに何故だ。父上は何を考えているのやら……


「バカな弟と妹どもでいいだろ……ったく! やってられんわ」


 起き上がり窓を開ける。

 街の少し小高い位置にあるこの屋敷は窓を開けると街を一見することができる。


「ふんっ……まぁ、この景色は評価に値する。無価値なものは切り捨てるが価値のあるものに対する評価は平等だ。この景色+10点だ。ここに出向いただけで-50点だがな……ん?」


 景色に気をとられていたが窓の下がうるさいな……


 下を見ると赤毛の女のガキが剣を振るっていた。


「ちっ……うるさい糞ガキが。これだから下のものはわからん。辺境伯は地位こそ上位だが所詮はイモで脳筋だ。確かあれは娘だったか? -5点だな」


 俺は折角の景色の美しさを邪魔されたことに対して少し苛ついた。しかし、ただ何気なく目についた剣筋が普通のガキのお遊びではなかったのだ。


「おいおい……なんだあの剣筋は。あんなにガキなのに俺以上。てか学園でも上位クラスだろ」


 思ったら行動が早い俺は直ぐに部屋を飛び出した。


……


……



 近くで見ると尚更あのガキの剣筋がわかる。なんなんだあのガキは。


「……ふぅ。そろそろあれもやるか。炎よ……」


 なっ!?

 あのガキの手から炎が!?

 何故だ? 

 あのガキは確か5歳のはずだ……待てよ。確か父上は辺境伯とは懇意にすべきだと言っていた。恐らく勇者が生まれたのだと……確かにそうでなければ説明がつかない! 【女神の祝福】は8歳からだ。あのガキは7歳だがまだ祝福の日ではない次の年のはずだ。そして炎を出せるということは少なくとも炎の女神から属性を得ていて更にはlevel0以上だということだ!


 ふふっ……

 

 100点だっ!

 あのガキ……いやティオと言ったな。あの女は俺にふさわしい!

 とあれば先ずは第一接触だな。


 俺は壁の影から身を出した。


「なっ!? だっ誰だ!」


 いきなり剣を向けるなよ。まぁ、よいバカではない。ただ野蛮さで+-0点。容姿は+30点かな。


「邪魔をしてしまった様ですまない。私はアガーテ公爵家の嫡男マルス=アガーテだ。君はガルド辺境伯の娘さまだね? 盗み見をしたようですまない。君の剣筋はとても素晴らしいよ!」


「……」


 ほう……少し警戒しているな。猫のような奴め。では、こういう間合いの詰めかたはどうかな?


「素晴らしいが……今のままではな」


 少しわざとらしく笑う。

 事実剣筋は見事だか決定的に足りないものがある。


「っ! なによ! 文句でもあるの!?」


 かかった!


「いや、文句というよりは勿体ないと思って。う~ん。良ければそこの棒きれで少し実戦しないかい?」


「あんた……お偉いさんよね? いいの? 怪我しても」


「ああ……負けないよ。それに私が万が一にケガをしても不問にしよう」


 木の棒をティオの方へ投げてやる。


「っし!」


 このガキ!? 投げた棒をキャッチしていきなり奇襲かよ!? 舐めすぎてた!?


「この程度なのね……えっ?」


 ティオが切り裂いた俺は偽物。俺は【(まぼろし)の女神】から祝福を受けている。level1の魔法【アイソレーションダミー】は近くの相手に自分の位置を誤認させる魔法だ。

 

「痛っ……」


 そのまま突っ込んできたティオの足を引っ掛け棒を突き付ける。


「はい。1本。私の勝ちだね?」


「だって! あなた切られたはず」


「そう言うところだよ。魔法やスキルの戦い……まぁ言い方悪いけどラフプレーなどの実戦経験がまだ足りないよ。まずは、斬撃の前に炎の魔法を飛ばす。もしくは浅く切り込み2の手、3の手で決めるようにするとか工夫するとかね」


「わっ! 私は7歳なのよ!? そんなのわかる訳ないじゃない!」


「だから凄いよ。7歳なのに12歳の僕に魔法まで使わせるんだからね。こう見えて強いと自信があったんだけど君には負けるよ」


 ニコっと笑い尻餅をついてるガキに手を差し出す。

 少し顔を赤らめながら手を握るガキは……


「君じゃない……ティオよ」


 読み通りだ。

 そして、数分このあと話をして今日は去った。いくらでも話すことは出来るが物足りなさを出してやるのがベストだろ。

 更にはその後、ガルド辺境伯に婚約を取り付けた。

 

 表向きはこれでOKかな?

 勇者は確か1世代4人で、魔族・獣人族・精霊……エルフ族に1人ずつ確認させれていて最後の1人は恐らくティオだ。だが確信はない今夜にでも念のため、双子の弟の方にも会ってみよう。


 勇者は勿論、俺に役立つかどうか……





つづく



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