(14)Qn炎牙蟻の侵攻
エリサの助けを引き出しハチの巣に潜入したミカ達は、廃棄されたアリの巣とドームにぶら下がるハチの巣、アリを迎え討つハチの姿があった。トラブルでドーム内の偵察にしかならなかった調査から急きょ帰還することにしたが、帰路にはアリが押し寄せていた。
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次の下り坑道まで至ると坑の天井を含め壁面一杯を使ってアリが押し寄せてきていました。
「困ったな。天辺あたりのアリをどうやって弾き落とすかな?」
「手段は、火魔法、水魔法、氷魔法……風魔法というところですか? 土魔法はかなり分が悪いようですが……。アリを怒らせないように退かせられれば良いのですが何がいいでしょうね」
「氷も風もアリは壁にすがりついて落ちないだろうな。水での反応も同じだろうか? 火や雷では怒らせるだけか……もう怒っているので今さらだが」
「坑の真ん中を強行突破できませんか? アリに触れないようにスルーすればなんとかなりそうです。アリが折り重なった床面は団子状態でかさ高くても、戦車との間になんとかすき間ができるように見えます」
「ううむ……そうするか。こちらに飛び移ってこないように静かに慎重に進めれば。姉上、アリの真中に突入します。目をつむっていてください」
「ううう……。もうイヤ、こんな場所」
操縦卓に額をつけてエリサ義姉さまは突っ伏してしまいました。私は上部ハッチのイヴさまの隣りに座って、坑道の勾配と戦車の傾きを目視で合わせます。あとは、イヴさまの魔法操車に委ねるだけです。
アリがうごめく坑道にゆっくりと戦車が進んで行きます。天井に取り付き這っていく頭上のアリに震えて眺め、飛びついてくれば突き刺してやろうと私は杖を構えていました。天井とより距離が取られると戦車下のアリに触れるような感覚に慌ててイヴさまに高度を取るように言って車体の上げ下げを繰り返して進みました。
「大丈夫だ」
「す、すみません、イヴさま」
肩を抱いてくれるイヴさまを、私も両手で抱きしめて目をつむり車体の感覚に集中しました。きっと操車に集中するイヴさまは周りのアリの気配がおろそかになっているはず。
なんとか察知されずアリがあふれる坑道を通り抜けられ、続く広間と坑道の通り抜けを繰り返し、ことのほか問題なくやり過ごして最下層の広間に着きました。あとは上りの坑道を上がれば外なのに、そこには昼間目にした光景がありました。
「イヴさま。……アリの塊がまた」
「そうだな。あそこに炎牙蟻の女王がいるのだろう。まさか女王自ら攻めくるとはな。坑道を通過中に出遭わなくて良かった」
「女王を倒せばアリ――炎牙蟻は片付きませんか?」
「どうだろうな……。次期女王は巣に残って来ていないだろう。そちらの心配がない、安全だから女王が攻めて来たと考えるほうが妥当だろう」
「……そうですか」
そう言われて大牙蟻の女王とギーちゃんの経緯に思いあたる。ギーちゃんを私に預けたことで、女王の行動を読んだイヴさまがあの時、破れかぶれの攻めに出るのを阻止したのではないかと。
「しかし、殲滅の好機をむざむざ往かせてしまうのは残念です」
「……確かにそうだな。よし、やるか。アリの巣の攻略も坑を空けて進める手間ばかりのところ、目の前に目標の一つが現れたのだ。女王をしとめる!」
「はい!」
「なんだ? 女王を倒すことになったのか。できるのか?」
「そうだな……。まず前と後ろの坑をふさいで増援を防ぎ、この広間に閉じ込め孤立させる。烏合の衆は相手にせず、アリ玉の防壁を総力でけずり露わになった女王を――」
「ゴリゴリすりつぶすんだな! かなり手間が省けて楽じゃないか」
「いけます、イヴさま」
大牙蟻より上位の炎牙蟻が相手なのだから烏合というまで侮れないと思いますが。私が簡易に倒せていたのもムシを押し返す冷気とイヴさまたちが抑えてくれていたからですから。
「ああー、計画であって上手くいったらだぞ? 我は女王と戦ったことはないのだ。リューゼはあるか?」
「あたしも無いな。昔、根絶作戦に参加したが、坑を空けながら兵隊アリを掃討する苦労ばかりで、女王討伐には立ち合えずじまいだ。後で酒飲み話にその模様を聞いたが、穴ぐらだけに何をするのも息苦しい戦いだったらしいな」
まあ、深窓の令嬢ならぬ地底の女王とまみえるのは、そうそう無いでしょう。地の底で逃げるに逃げられないし。
「それで女王の強さはどうだった、と?」
「平アリの何倍も硬いと言っていた。魔法耐性があるし物理防御も駆使し特効のある武具しか通じないと言っていたな。狭い中では距離が取れないから広域火魔法や強力な魔法も使えないしな」
「生なかには行かぬか……。おまけに飛ばれでもしたらハチ並みに厄介だな」
やめてください、イヴさま。それはフラグじゃないですかー。
「できれば女王討伐をミカにやらせて箔を付けたいのだがな……。アリの女王を討伐したとなれば実力ありと認められるだろう? 名実とも黒鉄……探索者として一人前にしたいのだ」
「イヴさま! ……痛ッ――」
嬉しい言葉に再びイヴさまに抱きついて私は肩当てにしこたま額を打ち付けていました。待ち望む黒鉄級昇格を考えていてくれることに比べれば額の痛さなど何でもありません。すぐ昇格するなどさすがに虫が良すぎますが大きな足掛かりとなるに違いありません。
「――ありがとうございます!」
イヴさまにすりついていると半目のリューゼが太ももをつねってきます。痛いよ。
「……まあ、戻って後ろを凍らせるか」
リューゼと私のじゃれ合いを呆れるイヴさまは戦車を転進させ後ろの坑、次に出口に続く坑を氷結させてふさぎました。アリ玉に従うアリは危機を悟ってか、女王の周りに集まっていきます。
「いい具合に地面が空いた。ミカ、下に車を降ろせないか? 皆は落下に備えよ」
「魔力の逆循環ですね? 試してみます」
「魔力をこめず、思いきっていけ。我が支える」
「はい……」
目をつむって、回路となった自身の魔力の流れを反転させました。
「ひゃっ!」
「うわっ!」
「いたああっ、頭打った。イヴー、まだ目をあけたらダメなのー?」
「姉上、まだ見ないほうがいいですよ」
魔力を維持しつつ循環を反転させるや戦車が上下して揺れ皆が声をあげた。
「反転できたようです。これからはどうするのですか?」
「今度は魔力を抜いてゆけ。ゆっくりと、な」
「は、はい……。イヴさま、なにか魔力が逆流してきて? ……気持ち悪いです」
「上手くいっている。抜いた魔素が体に溜まってきているだけだ。気にするな」
「…………」
魔力循環を逆にして魔力を抜いていくと逆流してくるような感覚で胸が熱くなって気持ち悪くなりました。礎地を受けた時と同じようで、やり過ぎると破裂が待っていそうで怖いです。
「よし、地に着いたぞ。これからどうしたものか」
「ええっ? 女王の防壁をけずるのでしょう?」
「そうだ。『水と氷』『火』『雷』、効果は弱いだろうが『風』もある。贅沢な悩みだ。まあ、魔石回収を考えるとやり過ぎなければ『火』と『雷』が効果的なんだが……」
「それでは火魔法でやりましょう。『火』ならナタリーにも頼めます」
「しかしなぁ、リューゼの話でもあった『火』だけではこの広間も熱くなるからな。『火』と『氷』を交互にやるか?」
「……はい。確かにそうです。ナタリー、魔法攻撃をお願い」
「『紅蓮の焔』でもぶちかましてくれ」
「えっ!! そ、そのような上位魔法は撃てません」
「何っ? では切り札は何を唱えると言うのだ?」
「今は『焔槍』を覚えているところです」
「よいではないか。それを頼む」
無茶ブリが過ぎます。イヴさまはピクニックでもしているように楽しそうですがナタリーの目がうつろになってますよ。
「ナタリー、今使える魔法でお願いします」
「で、では『炎槍』で――」
「そのふたつに、そう違いはないぞ。せっかくなのだ。『焔槍』を覚えればどうだ?」
「イヴ、ともかく撃ってもらいましょう」
「……そうか?」
「で、では『炎槍』で。……炎槍!」
涙目になって戦車の上に上がったナタリーが呪文を唱えた。それは氷弾に似た穂先の後ろに尾を伸ばす槍を模した炎で、素早く回転してアリの塊に吸い込まれていった。氷弾よりはるかに速かったですが、まだまだ避けようと思えばよけられそうでした。せめて実際の矢の速さくらいあれば命中精度があがりそうです。
「なんだ。単発か? 三連発くらいしても――」
「イヴ!」
「むっ? ミカ、そう恐い顔をするな。『炎槍』はこうするのだ!」
イヴさまの前に黄色い炎を巻いた炎槍が三つ並びアリ玉に向かって飛び出していき、壁になったアリを弾き飛ばす。
「そして、これが――『焔槍』だ!」
白い焔の槍がやはり三つ現れ、先ほどと比べられぬ速さでアリ玉に吸い込まれると爆発をおこし、アリ達は破裂して緑の体液を撒き散らした。
「うむ……やり過ぎた。あれは魔石を破壊してしまったかも知れぬな――」
イヴさま……。デモンストレーションがしたかっただけとかじゃないでしょうね。兎も角、それは素晴らしく矢速にせまる速さで実用に足りると思いましたが、見れば見たで前世の銃弾くらい速ければ……と思ってしまいました。
「――と、動かぬ的を撃つなど造作もない」
「…………」
それもフラグと言うものです、イヴさま。アリ玉の周りに控えていたアリがこちらに向かって来るし、アリ玉は後ろへ逃避していますよ。
「む? 遊び過ぎたな。アリが向かってきた」
「遊び過ぎたって……。三つ出して……『氷弾』」
黙唱して氷弾を三つ出現させ目標を定めて発射。確かに動かない的だし目が見えないアリには中りますが、真っ心でないと硬い甲殻に弾かれてダメージを与えられません。焔槍と比べると、いかにも鈍速でこけ威しにしかなりません。盾になっている兵隊アリさんも硬いです。
「ミカ、もっと魔力を籠めよ。または数を増やすのだ。七連撃……『氷弾!』」
「イヴ……」
やっと覚えた者に無茶ブリが過ぎます。黙唱で三つも撃ったのを褒めてほしいです。
「つまらん。あたしは寄りつくアリを払ってくる。ノーラもどうだ?」
「は、はい。やります!」
「待て待て。薙ぐには、こっちの槍がよいぞ? ミカは『風雪』を唱えて援護。『静音』」
「お、おうっ。剣は返す」
「ノーラはリューゼに寄りつくアリを片付けてくれ」
「分かりました」
イヴさまは戦車の周りに「静音」をかけ、私はアリを寄せ付けないように「風雪」を効かせました。戦車の前方に陣取ったリューゼがアリどもを薙ぎ払いノーラが左右に回り込んでくるアリを封殺する。
地を伝う音は「静音」下でもわずかに聴こえリューゼたちに向けてアリが毒を噴きかけてきても「風雪」が吹き戻して、尻を上げて噴射する姿勢は動きが止まって格好の的になっている。
しかし、「風雪」って分類では氷魔法だけど風魔法の構文になっている。どうしてだろう……。
「……『炎槍』」
黙黙と唱えるナタリーの炎槍の呪文を黙って輪唱しながら覚えると、私も炎槍の攻撃に切り替えました。するとナタリーが驚き、氷弾三発に切り替えて撃ち始めてくれました。何か気を回してくれてナイスです。
「やっと姿が拝めたな。しかし、今覚えたのか、ミカ」
あまり効いていない攻撃を十数回と続けてようやく女王が姿を覗かせました。いきなり炎槍を私が唱えたのでイヴさまも驚いたのでしょう。それよりも目前の敵です。
女王はイラついたようにキバを開閉させて、こちらをにらんでいる、ような気がしました。いえ、見えているはずは無いと思うのに憎々しげな視線を浴びせてきている感覚がしました。「静音」で音も聴こえていないはずなのに女王の頭がこちらを指向しています。
「はい。ナタリーの詠唱で覚えました。イヴ、女王の様子が変です。嫌な予感がします」
「そうか? まあ雌雄を決する時はそういう物だ。女王に向けて特大のをぶちかませ」
不安な気持ちを抑え、覚えたての炎槍一発に全てを籠める。……最大に成長させて女王の眉間に照準、発射。
「……『炎槍!』」
遅い……遅すぎる射速です。間違いなく命中したけれどダメージを与えた気がしません。まとわりついて肉壁になっているアリを吹き飛ばし女王を炎に包みましたが、射殺す視線をまだ感じるので健在でしょう。
炎槍の黄色い残炎に包まれてぼんやりと透けて見える女王は、壁にしたアリの死骸を体を揺らして振り払っている。すかさず「氷弾・改」を唱えて一発を出現させてみました。氷弾、炎槍の呪文に類似の一節があったので氷弾に移植して唱えたのですが、幸い実効する呪文で助かりました。
その一発に魔力を籠めて発射のタイミングを待ちました。
「お、大きいです」
「……そうだな」
伏せていた体を起こして立ち上がった女王は兵隊アリよりひと回りは大きいですが、足は少し長めで腹部(お尻)が異様に大きい。壁アリがメートル超え程度なのに女王は体長三メートルはありそうです。
いまいましそうに頭を振ってこちらをにらみつけてくる様は相変わらずに、体をぼんやりと赤く光らせました。リューゼが体を光らせたのに似て、嫌な予感を確信しました。
「氷弾・改!」
改変した氷弾は速度を速めて女王に吸い込まれましたが、氷片を撒き散らしながら命中すると障壁に阻まれ砕け散りました。いささか威力が上がったようですが女王をのけ反らせるに留まった。もっと威力を、せめて速度がほしい。
「ミカ。なんだ、今の氷弾は?」
「話は後で。……『氷弾・改』」
焦燥に駆られ今度は、氷弾三連発をわずかに時間差をつけて撃ってみました。三連擊でも女王を押し退けて氷片を撒き散らすに留まりました。もっと……焔槍くらいの速さがあれば、あるいは。
「リューゼ、ノーラ、嫌な予感がする。もっとチャリちゃんの近くに後退して?」
「お? おうっ!」
「はい?」
「ミカ、気をつかい過ぎではないか?」
「いえ、女王が何かスキルを使っています。どんな反撃があるか分かりませんよ?」
「確かにそうだ。だが――」
「イヴ、焔槍を教えてください」
「――更に焔槍を覚えるのか? まあいいが」
「先ほどの氷弾は炎槍のよく似た一節を移植した物です。発動に問題ないようですが――」
「何っ! 同じ系統ならいざ知らず、火魔法から氷魔法に移植したのか? 無茶をする。魔力を暴走させたらどうする!」
「お叱りは後で。私は火魔法も魔導書にも初めて携わったのです。火弾と水弾や氷弾に近しい一節に気づいて先ほどの炎槍から氷弾に当て嵌めてみました」
「うむ……確かに、炎槍と焔槍にも近似した箇所がある。そこが威力に関わっているかも知れない……。しかし、我が試すのでそなたはやめよ」
「……分かりました。氷弾に当て嵌めたのは呪文中段に差しかかる『~△△△……◆◇◇~』のところです」
炎槍や氷弾・改を放ちながら、悠長に相談している内に怒りに駆られた女王が突進してきました。
「うおっ!」
「ミカっ!」
「跳びます!」
女王の突擊を阻止しようとリューゼは槍を突き立て、ノーラも斬りかかる。とっさにイヴさまは被いかぶさってくれましたが、私はそれを脱け出すように庇いながら魔力を籠めて戦車の前を上げました。
「嫌あああっ!」
「あうっ!」
リューゼもノーラも女王を押し留められず、浮き上がる戦車の前部にすがってきた女王の頭と前肢が車体をこすって火花を散らした。イヴさまも「飛跳」が発動して回避が追いつき後方へ車体が跳ねる。ナタリーは姿勢を崩しはしましたが「浮遊」の恩恵で振り落とすまでに至らず無事でした。
被いかぶさるイヴさまの体を起こすと苦悶にゆがんでいました。
「イヴさま?!」
「なんでもない。ミカは大丈夫か?」
「大丈夫です。私よりイヴが苦しそうです」
「気にするな。女王はどうだ?」
上げた機首を下げて見下ろすと、リューゼたちが右と左に分かれて女王に斬擊を繰り返していました。
「リューゼとノーラが攻撃で抑えています」
「盾役がいないと女王の相手は厳しいな。一人が捕まると瓦解する危うさだ」
「そうですね。魔法攻撃を続けます。ナタリーもお願い」
「それより降りて我が盾をしよう」
「それなら私が――」
「そなたでは盾を支えるだけで動けないだろう」
「イヴもあの突進をしのげますか?」
「ぐっ……分かった。しかし防御が堅くて有効打がないな。女王の守りを崩さねばジリ貧なのは確実だ」
「そうですね。兵隊アリも這いよってきました。少し高度を下げて『風雪』で追い返します」
イヴさまの了承を受けて戦車を下げ、女王とリューゼたちの攻防を眺めました。ナタリーには這いよるアリの迎撃を任せ、私は「風雪」を女王に絞って浴びせます。幸い女王と戦っている場所は「静音」のかかった範囲で音が漏れず、探りながら向かって来る兵隊アリ達には焦らずに対処できます。
「□□■◇……『氷弾・改』」
リューゼたちの斬撃を煩わしげにあしらっている女王に更に改変したイヴさまの「氷弾」が撃ちこまれました。氷片を撒き散らす三連擊が突きたった女王の体表を覆う魔法光をはがした気がします。が、申し訳程度しかない翅を震わせると瞬く間に体は鈍い光をまとってしまいました。
「今のは効いてるぞ。攻撃が通った」
「でも、氷片が舞い散って見づらいです」
「多少効いてはいるが一時的に防御をはがすだけか……。ミカ、今のは覚えたか?」
「はい、恐らく。できればもう一度復唱すれば」
「では頼む。我はもう少し他を試してみる」
私はもう一度のイヴさまの詠唱を聞き唱えで覚えると、ナタリーが周りの雑魚を退かせるのを待って「氷弾・改」を唱え始めました。イヴさまは私が覚えた後はゴニョゴニョと呪文を練っているようでした。
「直上から撃つ! 氷弾・改!」
件の視界をふさいでしまう対策で女王の上に三連弾を出現させ、「風雪」も解除してありったけの魔力を「氷弾・改」に籠めました。女王がそれに気付いて焦りを見せ始めましたが構わず発射。
胸部を中心に殺到した三連擊が女王を打ち据えまとった魔力光をはがして地に伏せた。ここぞとリューゼたちの斬擊が叩きこまれると、甲殻にひびを入れ肢を折り斬り飛ばした。
「ん? やったか?」
「イヴ……。まだ、です」
イヴさま、フラグ立て過ぎです。頭がクラクラするのは魔素不足のせいだけじゃないはず。
穴だらけの翅を震わせ剥がれた防護障壁を補おうとする女王はリューゼたちに蹂躙されて見えるが覇気は衰えていない。地に伏し猛攻を甘んじて耐え、力を溜めている気概を感じます。