第8話 引っ越しとドーナツ
今ボクたちは急いで引っ越しの準備をしている。
「ティナいい加減男物の服を捨てなさい」
「やだよ」
「いいからはやく捨てなさい」
今ティナが男物の服を捨てられている。ボクもついさっきお気に入りのパーカー以外は全て捨てられた。こうなったのは昨夜のこと……
夕飯を終えボクが皿洗いしている時に届いた一通の伊東さんからのメールが始まりだった。
「ママなんかメールきたよ」
「分かってる……え!?」
「何? どうしたの?」
「ティナティル引っ越しが早まって明日になったから急いで用意してって……」
「「明日!?」」
あまりにも突然すぎて急いで準備するも数が多すぎるから必要最小限のものを用意して後から伊東さんが残ったものを全て送るとなったので、不要なものは捨てなければならなかった。その日は明日持って行くものを用意していらない物を明日捨てるということになった。
という訳で男物の服など不要となり破棄されていった。そして昨日まとめた段ボールを車に詰め込んで引っ越しをした。
数時間後……
「着いたわよ。ここが新しいお家よ」
ボクたちの新居は何処にでもあるような普通の一軒家だった。
「荷物整理したら買い物に行くからはやくしてね?」
「は~い」
「うぃーす」
「ちょっとティナ、お話があるから」
「お、おう」
ティナ……お疲れ様……
さて荷物整理しよ……部屋の構造は前の家と似ているので前の家でボクが使っていた部屋と同じような場所にある部屋を使うことにした。前の家と違うところはお風呂が大きくなったのと、ボクの部屋が和室になっていることぐらいだ。
でもベッドやタンス、テーブルなどはあらかじめ置いてあった。……和室なのに布団じゃないんですね。
準備も終えたしリビングに行こう。
「ママ終わったよ」
「こっちもOKよ」
「私も大丈夫よママ」
「!?」
誰だこいつ!? ボクの知っているティナはもっと智也の面影が強くて1人称は俺だったはず……この短時間に一体何が!?
「さあ買い物に行くわよ」
買い物は家の近くにあるイオソホールにやってきた。今日の夕飯の食材を購入し、1人で眠れなくなったボクにイルカのぬいぐるみを買いイオソを出たところにドーナツ屋さんがあった。ちなみにティナの話す言葉は違和感が強すぎてボクには耐えられなかったのでママに涙目で訴えたら直して貰えた。
「ママ、ドーナツ食べたい」
「そうね。ちょうどおやつの時間だし食べていきましょ」
「やった!」
いやードーナツは究極の嗜好ですね!もうおやつはドーナツだけで十分ですね。ここ最近ドーナツが食べられなかったからこの3日は辛かった~
「今日はチョコ味で」
「……わかったわ」
「俺もチョコ味で」
何だろ今の間は……何か忘れている気がするけど気のせいでしょ。
「「「いただきます」」」
パクッ……
ん? 味がしない……アアアアアッ!!! 味覚ゥゥ!!!
「クソガァァァ!!!」
「ティルっ!? どうしたの!」
「味が……ない」
「……どんまい」
さすがにこれはヒド過ぎるよ……こんなのあんまりだよ。もういいや、どうせボクはドーナツを食べようがピーマンを食べようが変わらないんだから……今度からご飯はカロリーなメイトにでもしようかな……