イケメンと天変地異
「よお、瞬だろ?」
「あ、ああ。そうだよ」
完全に不意打ちだった。音楽室を出た俺に笑顔で話しかけたのは隣の席の男子だ。男の俺から見ても顔面偏差値は高い。
「あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「構わないよ、なに?」
周りを用心深く見渡して真剣な表情でこう聞いた。
「さっき一緒にいた先輩・・・だれ?」
「え?」
俺は思わずすっとんきょうな声をあげてしまった。
「さっきお前といた先輩だよ。ショートカットの!」
さっき一緒にいたショートカットの先輩って凛さん・・・しかいないな。
「凛さんって人だけど・・・それがどうかした?」
「凛さんかあ・・・」
なんかこいつ・・・すごく嬉しそうな顔してるな。
「どしたの?」
「瞬!」
「うええええ!?」
いきなり両手を包まれた!?
・・・すっごく嫌な予感がする。
「頼む!俺が凛さんと付き合えるように協力してくれ!!」
「ええええええええ!?!?!?」
こいつ何言っちゃってんのおおお!?
その後、俺はその男子が何者かようやく分かった。名前は十和村 海。入学初日にして女子にモテているいわゆるイケメンキャラだ。しかし、男子から妬まれてるかと思いきやそうではない。やはり他の男子も自分よりも顔面偏差値が高いと思うらしい。それに海は非の打ち所がなく、あの性格でモテないわけがないとも思われているようだ。
しかし、当の本人はそうは思わないらしく自分のどこがいいのかが未だに分からないらしい。
放課後、海と俺は野球部の掛け声が小さく聞こえる誰もいない教室で凛さんについて話すことになった。海が聞きたいと言ってきたからだ。
「それで・・・なにを聞きたいの?」
「うん!あのな、瞬って凛さんとどんな仲なの?あの後帰ってから気になっちゃって」
これ正直に言っていいのかな。凛さんの家で育ったから姉弟みたいな感じだけど言ったら面倒になりそうだから・・・。
「幼馴染みかな。小さい頃から近所でさ、よく一緒に遊んでたんだ。たまに勉強とか教えてもらうことがあるよ。それくらいかなあ。」
うん、これが無難だ。
「そうなのか!ん?凛さんに兄弟はいないのか?」
「いないよ、一人っ子。」
「瞬も?」
「そうだよ。」
「へえ〜!なんか俺ってちょっと運がいいのかもしれない!」
さわやかスマイルで海は喜ぶ。ミントの香りが飛んでると感じるほどに。
「なんで?」
「だって一目惚れした凛さんと仲がいい瞬と隣だろ?これってなんかすごいよな!」
一目惚れなのかよ!?凛さんの中身知ったら失望するだろ!内心突っ込みつつも落ち着いて返す。
「うーん、俺はよく分かんないや」
「そっか、まあ思ってんのは俺だけってのもあるかもしれないからな!ところで凛さんって彼氏いたことあるの?」
あの人の口から彼氏なんて単語でたら天変地異起きるぞ・・・。それに好きな人ができたなんて聞いたことないしな・・・。分かんないってことにしておこう。
「さあ・・・知らないな。言わないだけでいるかもしれないし。俺は分からない」
「そっかー」
海は少し上を向いてふむふむと頷いた。頭の中にメモでもしてるように。
一つ言っちゃうとあの人はある程度親しくなったら触り始めるからね。くすぐったり肩に手を置いたり。それで勘違いしたであろう男子に告白されたってのは何度も聞いたことある・・・。本人には悪気もなにもないけどさ。
・・・なんか色々と心配になってきた。
親と将来でもめるって本当だったんですね
友達に指摘されて気づきましたが小説に(´・ω・`)みたいな絵文字って使うんですかね